29 / 43
24ー2
しおりを挟む
大掛かりな治療を受けて目を覚ました和樹の目は、すっかり見えなくなっていた。
一緒にいた俺も、医者から説明を聞いたけど、体調の悪化も、目のことも原因不明だそうだ。
「最初に、風邪をひいた時は別にたいしたことなかったんだ」
落ち着きを取り戻した和樹が、病室のベットでポツリと呟いた。
「けど、風邪とかひいたら気が沈むっていうか、ネガティブになって、そしたら、僕の人生がこれからどんどん悪い方に向かう気がして……それで、実際そうなってった」
病は気からというけど、目の前の和樹もまた相当に心を病んでいるように見えた。
「周りで、何か分からない声が囁くんだ……。死ね、死ねって。僕は何も悪いことはしてないのに、こんなのっておかしいよね」
「……」
俺からしたら、和樹が何も悪いことをしていないと言える和樹の神経を、恐ろしく感じた。
けれど、和樹も自分がやっていることが悪いことなのは認識しているだろうとも思った。
そうでなければ、今の自分の状況が、千秋君の呪いだなんて考えないだろうから。
「ねぇ、笹原そこに居るんだよね?」
「……もう行くよ」
「待ってよ! 僕、話し相手もいなくて」
同情を誘うような話し方だけど、そんなの俺には関係ない。
「誰でも呼べば来るんじゃないの。ほら、和樹って、可愛くて美しいんだろ? そんな子のためなら話し相手になってくれる人いっぱいいるだろ?」
「……そんなの、みんな居なくなっちゃったよ」
「やっぱり、自業自得だな」
そう呟くと、ふと、もうすっかり目が見えなくなっているはずの和樹と目があった。
和樹も驚いて俺を見ていた。
「あれ、なんで僕」
そう呟いた和樹の顔は、みるみる恐怖に染まっていった。
「うわぁ!! なにこれ!! 笹原! 助けて!! ひっ、やだぁ!! 嫌だ!!」
「おい、どうしたんだよ」
目の前で突然怖がり暴れ始めた和樹に俺は動揺しながらも、ナースコールを押した。
「笹原っ、助けて! 黒い…あぁ!! 黒い手が僕をっ」
「おい、落ち着け。もうすぐ医者が来るから」
看護師が来て、医者が来ても和樹は泣いて暴れて、黒い手が黒い人が、とずっと叫んでいた。
和樹はその後、統合失調症だと診断された。
統合失調症の症状には妄想や幻覚などがある。
呪いだとか、死ね死ねと聞こえるとか、黒い手や黒い人などが見えると言っていたけれど、統合失調症なら納得だった。
和樹の実家が醜聞を恐れてほとんど窓のない精神病院へ入院させられたらしい。
だが、和樹は精神病院へ入院したその日突然亡くなった。
俺が何かしたんじゃないかと疑われて、少し面倒にも巻き込まれたけれど、結局和樹の死因は肺炎だった。和樹は最後まで手が、顔がと叫んでいたらしい。
和樹の葬儀に参列した際は、和樹の棺が開けられることはなかった。
参列者に見せられないほどのその死顔は凄まじいのだろうと、想像に容易かった。
葬式からの帰りに、ふと思った。
和樹は本当に統合失調症だったのだろうか。
あの怯え方は尋常じゃなかった。
まるで本当にそこに何かがあるかのような手の動きだった。
「まぁ、いいか」
和樹は、ひっそりと、誰からも悲しまれることなく死んでいった。
俺は特に和樹に何か嫌なことをされた訳じゃない。
だからかな。俺は和樹を好きでも嫌いでもなかったから、和樹の死は俺も特に悲しくはなかった。
一緒にいた俺も、医者から説明を聞いたけど、体調の悪化も、目のことも原因不明だそうだ。
「最初に、風邪をひいた時は別にたいしたことなかったんだ」
落ち着きを取り戻した和樹が、病室のベットでポツリと呟いた。
「けど、風邪とかひいたら気が沈むっていうか、ネガティブになって、そしたら、僕の人生がこれからどんどん悪い方に向かう気がして……それで、実際そうなってった」
病は気からというけど、目の前の和樹もまた相当に心を病んでいるように見えた。
「周りで、何か分からない声が囁くんだ……。死ね、死ねって。僕は何も悪いことはしてないのに、こんなのっておかしいよね」
「……」
俺からしたら、和樹が何も悪いことをしていないと言える和樹の神経を、恐ろしく感じた。
けれど、和樹も自分がやっていることが悪いことなのは認識しているだろうとも思った。
そうでなければ、今の自分の状況が、千秋君の呪いだなんて考えないだろうから。
「ねぇ、笹原そこに居るんだよね?」
「……もう行くよ」
「待ってよ! 僕、話し相手もいなくて」
同情を誘うような話し方だけど、そんなの俺には関係ない。
「誰でも呼べば来るんじゃないの。ほら、和樹って、可愛くて美しいんだろ? そんな子のためなら話し相手になってくれる人いっぱいいるだろ?」
「……そんなの、みんな居なくなっちゃったよ」
「やっぱり、自業自得だな」
そう呟くと、ふと、もうすっかり目が見えなくなっているはずの和樹と目があった。
和樹も驚いて俺を見ていた。
「あれ、なんで僕」
そう呟いた和樹の顔は、みるみる恐怖に染まっていった。
「うわぁ!! なにこれ!! 笹原! 助けて!! ひっ、やだぁ!! 嫌だ!!」
「おい、どうしたんだよ」
目の前で突然怖がり暴れ始めた和樹に俺は動揺しながらも、ナースコールを押した。
「笹原っ、助けて! 黒い…あぁ!! 黒い手が僕をっ」
「おい、落ち着け。もうすぐ医者が来るから」
看護師が来て、医者が来ても和樹は泣いて暴れて、黒い手が黒い人が、とずっと叫んでいた。
和樹はその後、統合失調症だと診断された。
統合失調症の症状には妄想や幻覚などがある。
呪いだとか、死ね死ねと聞こえるとか、黒い手や黒い人などが見えると言っていたけれど、統合失調症なら納得だった。
和樹の実家が醜聞を恐れてほとんど窓のない精神病院へ入院させられたらしい。
だが、和樹は精神病院へ入院したその日突然亡くなった。
俺が何かしたんじゃないかと疑われて、少し面倒にも巻き込まれたけれど、結局和樹の死因は肺炎だった。和樹は最後まで手が、顔がと叫んでいたらしい。
和樹の葬儀に参列した際は、和樹の棺が開けられることはなかった。
参列者に見せられないほどのその死顔は凄まじいのだろうと、想像に容易かった。
葬式からの帰りに、ふと思った。
和樹は本当に統合失調症だったのだろうか。
あの怯え方は尋常じゃなかった。
まるで本当にそこに何かがあるかのような手の動きだった。
「まぁ、いいか」
和樹は、ひっそりと、誰からも悲しまれることなく死んでいった。
俺は特に和樹に何か嫌なことをされた訳じゃない。
だからかな。俺は和樹を好きでも嫌いでもなかったから、和樹の死は俺も特に悲しくはなかった。
54
あなたにおすすめの小説
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った
こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。
オメガなのにムキムキに成長したんだが?
未知 道
BL
オメガという存在は、庇護欲が湧く容姿に成長する。
なのに俺は背が高くてムキムキに育ってしまい、周囲のアルファから『間違っても手を出したくない』と言われたこともある。
お見合いパーティーにも行ったが、あまりに容姿重視なアルファ達に「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」とキレて帰り、幼なじみの和紗に愚痴を聞いてもらう始末。
発情期が近いからと、帰りに寄った病院で判明した事実に、衝撃と怒りが込み上げて――。
※攻めがけっこうなクズです。でも本人はそれに気が付いていないし、むしろ正当なことだと思っています。
同意なく薬を服用させる描写がありますので、不快になる方はブラウザバックをお願いします。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる