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ある日突然、フェルレントの城の庭の一角にお墓が立った。
最近は庭でお茶をすることが多かったからすぐに気がついたけど、洋風なお城の庭に、日本の墓に寄せて作られた墓は異質に見えて、発見した時はびっくりした。
「フェルレント、あの庭にできたお墓って何? 見た目は日本のお墓みたい」
フェルレントに聞くと彼はにっこりと笑った。
「あれは、もちろん千景の墓だよ」
「え!?」
ともすれば殺害予告のようにも聞こえる言葉は、僕が実際は死んでいることによって、より意味がわからなくなる。
「私の愛しい千景の骨も、私のものにしたかったんだよ。ダメかい?」
「や……だめって訳じゃないけど、自分の骨が入った墓を見るのは少し複雑……かも」
フェルレントの僕への執着は、こうして変態性を秘めていて、時折異常とも言える行動をするけど、今回のは少し受け入れ辛い内容だ。
その上、この城で働く使用人の人たちはみんな、フェルレントの見方だから僕の考えへの共感も得られない。
こうしてフェルレントに対して僕がドン引きしている間も、横では壮年の執事のアダンがフェルレントの考えに共感して目に涙を溜めながら頷いていた。
「千景様、私共も千景様のお墓参り、とやらをしても構いませんか?」
ここにはお墓参りなどと言う文化がないようで、アダンが上目遣いに聞いてくる。
壮年の男性の上目遣いなんて見るに耐えないとは一切ならないほど、アダンの容姿はダンディで、僕はいつも流されてしまう。今回もそうだ。
「まぁ……その、アダンさんが……したいなら」
「なんと! ありがとうございます! 使用人一同喜びます」
こうして僕に対して好意的なのはアダンだけではなく、出会った使用人のほとんどがこんな態度なのだ。今まで好意的に思われることが少なかったので戸惑いもあったけれど、好かれているのは嬉しい。
「私は千景を大切に思う者達に、千景の墓を参ってもらいたいんだよ」
「うん。ありがとうフェルレント」
フェルレントの気持ちも分かるから、僕は結局お礼を言った。
僕の墓なんてきっと誰も参ってないだろうから、骨はこちらにあったほうが良いのだろう。
「フェルレントは、優しいね」
変態だけど、とは付け加えずにそう言うと、彼は満足そうに口の端をあげた。
「トート様のお優しさは、全て千景様へ向けられておいでですがね」
アダンが横から口を挟んだ。
「そうなの?」
「ええ。千景様の墓にはうるさいハエが居るようだから、千景様の遺骨をここまで運び込めとのご命令を受けたのは私なのですがね、それが」
「アダン」
言葉を続けようとするアダンを、フェルレントが一言で黙らせると、アダンは困ったように笑って、一歩下がり控える体勢に入った。
「でももしも僕の家で次に死ぬ人が居たとして納骨するときに気がつかれたとしたら、めちゃくちゃビックリするだろうね」
そう思ったら、なんだかそれは楽しい気がした。
「もっと早く気がつかれるかもしれないね」
「え~。それはないんじゃないかな」
「墓参りは、残されたものの心を救うための行為だと、聞いたことがある」
「へー。フェルレントそういうの詳しいんだね」
「愛しい千景を近くでずっと待っていたからね。そういう話は色々聞いたよ」
「そっか」
「私は、愛しい千景の墓参りさえ独占したい。千景の墓を参って、救われる者など1人として出したくないんだよ」
僕の墓なんて誰も参ってないだろうに、こんなこと言ってくれるフェルレントが、こんなに僕に執着を見せてくれるフェルレントが、僕だって愛おしくてたまらない。ちょっと変態じみてるところも多いけど、本当に僕はフェルレントに出会えて幸せだ。
その後、僕がお茶をするスペースからよく見える僕の墓には、よく使用人が墓参りしているのが見えて、僕はすごく恥ずかしい思いをすることになった。
最近は庭でお茶をすることが多かったからすぐに気がついたけど、洋風なお城の庭に、日本の墓に寄せて作られた墓は異質に見えて、発見した時はびっくりした。
「フェルレント、あの庭にできたお墓って何? 見た目は日本のお墓みたい」
フェルレントに聞くと彼はにっこりと笑った。
「あれは、もちろん千景の墓だよ」
「え!?」
ともすれば殺害予告のようにも聞こえる言葉は、僕が実際は死んでいることによって、より意味がわからなくなる。
「私の愛しい千景の骨も、私のものにしたかったんだよ。ダメかい?」
「や……だめって訳じゃないけど、自分の骨が入った墓を見るのは少し複雑……かも」
フェルレントの僕への執着は、こうして変態性を秘めていて、時折異常とも言える行動をするけど、今回のは少し受け入れ辛い内容だ。
その上、この城で働く使用人の人たちはみんな、フェルレントの見方だから僕の考えへの共感も得られない。
こうしてフェルレントに対して僕がドン引きしている間も、横では壮年の執事のアダンがフェルレントの考えに共感して目に涙を溜めながら頷いていた。
「千景様、私共も千景様のお墓参り、とやらをしても構いませんか?」
ここにはお墓参りなどと言う文化がないようで、アダンが上目遣いに聞いてくる。
壮年の男性の上目遣いなんて見るに耐えないとは一切ならないほど、アダンの容姿はダンディで、僕はいつも流されてしまう。今回もそうだ。
「まぁ……その、アダンさんが……したいなら」
「なんと! ありがとうございます! 使用人一同喜びます」
こうして僕に対して好意的なのはアダンだけではなく、出会った使用人のほとんどがこんな態度なのだ。今まで好意的に思われることが少なかったので戸惑いもあったけれど、好かれているのは嬉しい。
「私は千景を大切に思う者達に、千景の墓を参ってもらいたいんだよ」
「うん。ありがとうフェルレント」
フェルレントの気持ちも分かるから、僕は結局お礼を言った。
僕の墓なんてきっと誰も参ってないだろうから、骨はこちらにあったほうが良いのだろう。
「フェルレントは、優しいね」
変態だけど、とは付け加えずにそう言うと、彼は満足そうに口の端をあげた。
「トート様のお優しさは、全て千景様へ向けられておいでですがね」
アダンが横から口を挟んだ。
「そうなの?」
「ええ。千景様の墓にはうるさいハエが居るようだから、千景様の遺骨をここまで運び込めとのご命令を受けたのは私なのですがね、それが」
「アダン」
言葉を続けようとするアダンを、フェルレントが一言で黙らせると、アダンは困ったように笑って、一歩下がり控える体勢に入った。
「でももしも僕の家で次に死ぬ人が居たとして納骨するときに気がつかれたとしたら、めちゃくちゃビックリするだろうね」
そう思ったら、なんだかそれは楽しい気がした。
「もっと早く気がつかれるかもしれないね」
「え~。それはないんじゃないかな」
「墓参りは、残されたものの心を救うための行為だと、聞いたことがある」
「へー。フェルレントそういうの詳しいんだね」
「愛しい千景を近くでずっと待っていたからね。そういう話は色々聞いたよ」
「そっか」
「私は、愛しい千景の墓参りさえ独占したい。千景の墓を参って、救われる者など1人として出したくないんだよ」
僕の墓なんて誰も参ってないだろうに、こんなこと言ってくれるフェルレントが、こんなに僕に執着を見せてくれるフェルレントが、僕だって愛おしくてたまらない。ちょっと変態じみてるところも多いけど、本当に僕はフェルレントに出会えて幸せだ。
その後、僕がお茶をするスペースからよく見える僕の墓には、よく使用人が墓参りしているのが見えて、僕はすごく恥ずかしい思いをすることになった。
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