32 / 43
27
しおりを挟む今日も快晴の空を見上げて、僕は考え事をしていた。
僕がお腹の中にいた時から、ずっと僕のそばに居続けたというフェルレントも、最近は溜まっていた仕事を再開させて、僕は1人で居る時間が出来た。
「千景様、お茶にしませんか?」
「アダンさん。うん、ありがとう」
お茶の時間は大体は庭に出るか、部屋で飲むかで、今日は庭で飲むことにした。
椅子に座って庭を見渡すと、僕の墓参りをしている使用人の姿が見える。これは最近は見慣れた光景だ。
「どうぞ、お熱いですのでお気をつけください」
「ありがとう」
アダンから紅茶を受け取り、そっと口をつけると、ダージリンの香りが鼻を抜けた。
「……千景様、何かお悩みですか?」
「え? 分かる?」
「ええ。ひょっとして、旦那様が最近お忙しいのと関係がおありですか?」
「え?」
「つまり……寂しい、とか」
「えっ!? そんな、違うよ! えっと、最近フェルレントの誕生日を聞いたんだけど、はぐらかされちゃって。フェルレントは僕を生まれた時からずっと見てて僕の誕生日だってなんだって知ってるのにって寂しくなっちゃったんだ」
「はぐらかされた……? 旦那様が? どのように言っておりましたか?」
アダンが目を見開いて尋ねた言葉に、僕は頷いた。
「えっと、“生まれた日付けは覚えていない”って。あと“千景の誕生日を祝えるだけで私は幸せだから私のことを祝おうとしなくても大丈夫”だって」
「それは、まさに本心からそうお思いなのでしょう。こちらの世界の種族は人間と比べるとはるかに長く生きますから、誕生日は覚えていないことが多いんです」
「そうなの?」
「ええ。ですが、こちらで記録を探し出して、旦那様のお生まれになった日を調べることも可能ですよ。少しばかり時間をいただくことになりますが」
「本当っ!? ありがとう! お願いしてもいい……?」
「かしこまりました。お任せください」
アダンは胸に手を当てて、ウィンクしてきた。
顔が整った壮年男性なので、それがやけに様になっていた。
僕にも何か手伝えることがないか尋ねたけど、それは大丈夫だと丁重に断られてしまい、フェルレントへのプレゼントを考えておく時間にした。
フェルレントは、早ければ夕方くらいに帰ってくるし、遅いと日付も変わった後になる。
死神の仕事は死者の道案内だって言っていたけど、フェルレントの仕事はその死神達の統率らしい。フェルレントに仕事の話を聞いた時、『つまり、千景に分かりやすく説明すると、私の仕事はエリアマネージャーだよ』と言っていた。
僕はアルバイトもしたことがないままだったので、そう言われてもいまいちピンと来なかったけど、なんだか忙しそうなことだけは分かった。
それでもちゃんと僕との時間を作ってくれて、その時間には存分に愛を伝えてくれるので、僕がフェルレントに何かできることはないのかと思っていた。
僕がまだ生きていた頃、18歳の誕生日の3日後に、フェルレントは僕におめでとうと言ってくれた。
しかも、実際は僕が認識することができなかっただけでフェルレントは当日にも言ってくれていたらしい。
誰かから生まれたことをお祝いされるのは、とても嬉しいことだと僕は思う。
それに大切な人の大切な日を、僕も一緒に祝いたい。
フェルレントの誕生日が分かる日までに、誕生日に何をあげたら良いのかアダンに相談すると、彼は真っ先にそれならアクセサリーがいいでしょうとお勧めしてくれた。しかも妻から夫へのプレゼントなら手作りのアクセサリーを贈るのがいいらしい。
アダンが材料を揃えてくれたので僕は指輪を作り始めた。
粘土みたいなものに、魔石を砕いたものを入れておけばお守りみたいな扱いになるらしい。
それをフェルレントが寝ている間にこっそり測っておいた指の大きさに合わせて成型していく。
何回も失敗して、最初からやり直した。
そうしている間に、使用人たちが記録を確認してくれてフェルレントの誕生日を知ることができた。
しかもその日は1ヶ月後に迫っていた。
47
あなたにおすすめの小説
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った
こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。
オメガなのにムキムキに成長したんだが?
未知 道
BL
オメガという存在は、庇護欲が湧く容姿に成長する。
なのに俺は背が高くてムキムキに育ってしまい、周囲のアルファから『間違っても手を出したくない』と言われたこともある。
お見合いパーティーにも行ったが、あまりに容姿重視なアルファ達に「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」とキレて帰り、幼なじみの和紗に愚痴を聞いてもらう始末。
発情期が近いからと、帰りに寄った病院で判明した事実に、衝撃と怒りが込み上げて――。
※攻めがけっこうなクズです。でも本人はそれに気が付いていないし、むしろ正当なことだと思っています。
同意なく薬を服用させる描写がありますので、不快になる方はブラウザバックをお願いします。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる