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■青砥side
千景が死んで、数十年。
俺には、千景以上に好きになれる人なんて現れなくて、結局おっさんになっても独り身だった。
けれど最近は、年だけをとって、俺の心はずっとあの頃のまま成長していないのかもしれないと、千景の墓に参るたびに笑えるくらいにはなった。
「なぁ、千景。死後の世界ってやっぱりあるのか? あったとして、俺が死んだ時は迎えにきてくれるか?」
いつものように墓を掃除しながら語りかける。
そうすると近くで千景が答えてくれているんじゃないかと思えてくるから不思議だ。
そんなふうに穏やかに生活することは、俺の日常になっていた。
けれど最近千景の父親が死んで、その納骨の際に千景の遺骨がなくなっていることで騒ぎになった。なくなったのは千景の遺骨だけであとは何もなくなっていなかったらしく、また盗まれた時期も分からないため、見つかる可能性は低いということだった。真っ先に俺が疑われたけれど、俺が持ち去っていたのなら毎月2回の墓参りをかかさなかったのはおかしいとなった。一応家の中や車は探されたけれど、当然のように何も出ては来なかった。
いったいいつから……。
俺は、いったい何に参りに行ってたんだ。
ショックが大きくて聞いた時は膝から崩れ落ちた。
俺が今まで語りかけていた言葉も、何も届いていなかったのか。
この数十年で千景の墓参りにすっかり飽きていた千景の母親も、旦那の葬式では一応また、悲しそうに涙を流していたそうだ。
俺は違う。
俺はずっと数十年ここに通い続けた。
千景だけを想い続けてきた。
以前笹原とカフェで会っている時に、まるで白昼夢のように見た、千景と一緒にいた銀髪の美丈夫が本当に存在していたとしても、今の俺だったら、俺の方が千景のことを想っていると堂々と言える。
だからもしも死後の世界があるのなら、きっと千景は俺が死ぬ時に迎えにきてくれる。
そう思っていたのに。
実際はお骨に話しかけたりして本人に聞いてもらえるとは思っていなかったけれど、そこにずっとあるものだと思って話していたから、そこになかったんだって知ってからは、どうすれば良いか分からなくて、俺は廃人のように過ごした。
そしてさらに歳をとり、ようやく俺にもお迎えの時がきた。
もうあれから何年待ったのかだって覚えていない。
職場では俺に色目を使ってくるオメガもいたけれど、それももう1人もいないし、俺には兄弟もいないから看取ってくれる人は誰もいなかった。
千景が死ぬまでは、誰かのためにと思って生きることが好きだったのに、あれから人と関わるのも嫌いになって、極力誰とも関わらなかったから、俺は皮肉にも千景の亡くなった病院で、千景の亡くなった時のように、1人で最後の時を迎えた。
「磯村青砥様。お迎えにあがりました」
病室で静かに息を引き取った俺のベットの横には、顔の整った背の高い黒髪の男が立っていた。
「あなたは……?」
「私は死神です。あなたが無事に死後の世界に進めるように道案内をいたします」
ビジネスライクな笑顔を見せた死神と名乗る男を信じざる終えなかった。
俺の周りには医者や看護師が駆けつけていたのにもかかわらず、全員俺たちの会話を聞いている様子がないからだ。
「俺って、地獄だろ? それはいいけど、その前に会いたい人がいるんだ」
「磯村青砥様。あなたの向かう場所が地獄かどうかは、これから行く役所で決定する事です。会いたい人物がいる場合もその時にお伝えください。私の仕事は案内のみとなります」
死神と名乗る男は淡々とそう告げた。
「……分かった」
俺はもうすぐ千景に会えるかもしれないという早る気持ちを抑えて、静かにうなずいた。
千景が死んで、数十年。
俺には、千景以上に好きになれる人なんて現れなくて、結局おっさんになっても独り身だった。
けれど最近は、年だけをとって、俺の心はずっとあの頃のまま成長していないのかもしれないと、千景の墓に参るたびに笑えるくらいにはなった。
「なぁ、千景。死後の世界ってやっぱりあるのか? あったとして、俺が死んだ時は迎えにきてくれるか?」
いつものように墓を掃除しながら語りかける。
そうすると近くで千景が答えてくれているんじゃないかと思えてくるから不思議だ。
そんなふうに穏やかに生活することは、俺の日常になっていた。
けれど最近千景の父親が死んで、その納骨の際に千景の遺骨がなくなっていることで騒ぎになった。なくなったのは千景の遺骨だけであとは何もなくなっていなかったらしく、また盗まれた時期も分からないため、見つかる可能性は低いということだった。真っ先に俺が疑われたけれど、俺が持ち去っていたのなら毎月2回の墓参りをかかさなかったのはおかしいとなった。一応家の中や車は探されたけれど、当然のように何も出ては来なかった。
いったいいつから……。
俺は、いったい何に参りに行ってたんだ。
ショックが大きくて聞いた時は膝から崩れ落ちた。
俺が今まで語りかけていた言葉も、何も届いていなかったのか。
この数十年で千景の墓参りにすっかり飽きていた千景の母親も、旦那の葬式では一応また、悲しそうに涙を流していたそうだ。
俺は違う。
俺はずっと数十年ここに通い続けた。
千景だけを想い続けてきた。
以前笹原とカフェで会っている時に、まるで白昼夢のように見た、千景と一緒にいた銀髪の美丈夫が本当に存在していたとしても、今の俺だったら、俺の方が千景のことを想っていると堂々と言える。
だからもしも死後の世界があるのなら、きっと千景は俺が死ぬ時に迎えにきてくれる。
そう思っていたのに。
実際はお骨に話しかけたりして本人に聞いてもらえるとは思っていなかったけれど、そこにずっとあるものだと思って話していたから、そこになかったんだって知ってからは、どうすれば良いか分からなくて、俺は廃人のように過ごした。
そしてさらに歳をとり、ようやく俺にもお迎えの時がきた。
もうあれから何年待ったのかだって覚えていない。
職場では俺に色目を使ってくるオメガもいたけれど、それももう1人もいないし、俺には兄弟もいないから看取ってくれる人は誰もいなかった。
千景が死ぬまでは、誰かのためにと思って生きることが好きだったのに、あれから人と関わるのも嫌いになって、極力誰とも関わらなかったから、俺は皮肉にも千景の亡くなった病院で、千景の亡くなった時のように、1人で最後の時を迎えた。
「磯村青砥様。お迎えにあがりました」
病室で静かに息を引き取った俺のベットの横には、顔の整った背の高い黒髪の男が立っていた。
「あなたは……?」
「私は死神です。あなたが無事に死後の世界に進めるように道案内をいたします」
ビジネスライクな笑顔を見せた死神と名乗る男を信じざる終えなかった。
俺の周りには医者や看護師が駆けつけていたのにもかかわらず、全員俺たちの会話を聞いている様子がないからだ。
「俺って、地獄だろ? それはいいけど、その前に会いたい人がいるんだ」
「磯村青砥様。あなたの向かう場所が地獄かどうかは、これから行く役所で決定する事です。会いたい人物がいる場合もその時にお伝えください。私の仕事は案内のみとなります」
死神と名乗る男は淡々とそう告げた。
「……分かった」
俺はもうすぐ千景に会えるかもしれないという早る気持ちを抑えて、静かにうなずいた。
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