僕が死んだあと、あなたは悲しんでくれる?

いちみやりょう

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■千景side

「ちーちゃんっ、おやつの時間だよっ」
「わーい早くいこっ」
「うん、そうだね。お庭にいこっか。あ、走ったら危ないよ」

すでに駆け出していた2人の息子は僕の声を聞いて立ち止まり、ウズウズと待ちきれない様子で僕のことを待ってくれる。
5年前に長男のマルクレントが生まれ、4年前に次男のルークレントが生まれ、2人ともとても良い子に育ってくれている。フェルレントは息子たち2人に対して僕に対するような甘々な態度だけではなく、2人が悪いことをすればちゃんと叱ってくれるいいお父さんになってくれていた。

「パパも早くいこ~」
「ああ」

マルクの呼びかけに微笑んで答えたフェルレントは、今日はお昼頃に仕事が終わったと言って帰ってきていた。フェルレントの仕事は忙しいので、こうして家族4人でゆっくりできる時間はとても大切だ。

「わあ、今日はプリンだぁ。僕プリン大好き」
「僕も! やったぁ」

2人ともおおはしゃぎで、見ていて微笑ましい。
お腹に子供ができた時、ちゃんと自分にも可愛がれるのか不安に思ったけど、実際に生まれてみれば目に入れても痛くないほど可愛くて仕方がなかった。

「2人も大きくなってきたし、そろそろ旅行に行こうか」
「ほんとっ!?」
「やったぁ!!」

フェルレントが喜ぶ息子2人の頭を優しく撫で、僕を見て微笑んだ。

「千景はどう思う?」
「もちろん、僕も行きたい」
「ふふ、じゃあ、場所はどこにしようか」
「僕、ちーちゃんが育った場所に行ってみたい!!」
「僕もそこがいいっ!」
「でも、マルクもルークも大人になったら死神の仕事をするんでしょう? 現世には嫌でも通うことになるんじゃないかな。本当にそこでいいの?」
「「うん!」」

僕の質問にも2人は嬉しそうにうなずいた。
この年頃の子供にとっては千景のいた現世という場所は憧れの世界らしい。
大体この世界において現世というのは大人が仕事をする場所だからだ。

「そうか。マルクとルークにとっても良い社会科見学になるかもしれないね」

フェルレントは嬉しそうにうなずいて僕に確認をとるような視線を向けたので僕もそれにうなずいて返した。
ここでは親の仕事を自分の仕事にするのが普通らしい。
だから息子たちが現世へ興味を示すのがフェルレントに取っては嬉しいことなのだ。

子供達2人はおやつを食べ終えて庭で遊び始めた。
それをフェルレントと二人でほのぼのと眺めていると、庭の奥の林から不審者が飛び出てきた。

「千景!!」

僕の名前を叫びながら走り寄ってくる不審者との間に、サッとフェルレントが割り込んだのを見て不審者は怯んで立ち止まった。

「千景、ずっと会いたかった」
「ど、どなたですか……?」
「千景!? 俺が分からないのか?」

僕の名前を知っている目の前のご老人は、僕と面識があるらしいけれど僕には見覚えがなかった。けれどご老人はそうは思わなかったらしくショックを受けた顔でその場に呆然と立ち尽くした。

「あの、覚えていなくてすみません。どちらでお会いしました?」
「お、俺は、青砥だ。磯村青砥。覚えてるよな……?」
「え、青砥? や……そんな訳ないよ、だって青砥は僕と同じ歳だよ」

だって、あれから10年も経っていないのに、目の前の青砥と名乗る人物は明らかに老人だった。

「逆に、なんで千景はそんなに若いままなんだよ」

吐き捨てる男を、2人の息子が怯えたように遠巻きにこちらを見ていた。
このよく分からない人物から息子たちを守らなければならない。

「あなたが青砥なのだとしても、僕には関係ないです。帰ってもらえますか」

毅然とした態度を心がけきっぱりと言い切ると、男は目を見開いた。

「なっ、どうして! 俺が死んだら迎えにきてくれると思っていたのに!!」
「そんなわけないでしょう。あなたがもしも青砥と僕の関係を知っているのだとしたら、そんな言葉は出てこないはずです。僕にとって随分前に終わった話を蒸し返さないでください」
「な……な……」

フェルレントが1歩近づくと、男は1歩後ずさった。
さっと確認するようにあたりを見回した男は、何を思ったのか一目散に息子たちの方に走り出そうとした。
けれどフェルレントの動きの方が早く男を取り押さた。

「千景、子供達を連れて中に入っていて。怖い思いをさせてごめんね」
「そんな、フェルレントは悪くないよ。守ってくれてありがとう」

フェルレントの下で暴れる男に、フェルレントが負けるはずもないので、僕は子供達を連れて屋敷の中に戻り、アダンにフェルレントの応援に行ってもらえるように頼んだ。

「ちーちゃん、今の人、誰?」
「怖かったねっ」
「マルク、ルーク、もう大丈夫だよ。誰だか分からないけど、パパがやっつけてくれたからね」
「パパ、強かったね!」
「かっこよかったね!」

マルクもルークも最初は怖がっていたけれど、フェルレントの強さを見て興奮しているようで安心した。

「僕もパパみたいに強くなって、ちーちゃんを守ってあげるからね!」
「うん、ありがとう。マルク」
「僕も強くなるよ! ちーちゃん守る!!」
「ルークもありがとうね。さ、お夕飯まで絵本を読もうか」
「「うん!」」

そうして2人が選んで持ってきた絵本を読んでいる間に、フェルレントも帰ってきてホッとした。
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