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第7章
7.戦闘神はお遊び中 前編
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◆◆◆
光の飛沫を散らす蘇芳色の残像を描き、湾曲した剣戟がうねった。矢のごとく一直線に打ち出された群青色の御稜威が弾かれ、衝撃で大気が振動する。澄んだ音と共に無数のスパークが宙を踊った。
『まだ見付かってないんだって? 勝手に入って来たって奴ら』
マリーゴールドのごとき短髪をなびかせ、戦神レイオンが朗らかに笑う。右手に湾刀を持ち、澄んだオリーブ色の目を眼前に向けていた。
『複数の神が目撃しているのだ。見間違いということはあるまい。一体どこに隠れているのやら』
くすんだ金糸雀色の目を眇めて起伏のない声を紡ぐのは、戦神と対峙している闘神リオネス。携えた方天戟を構え直せば、その動きに合わせて揺れるターコイズブルーの髪は鎖骨ほどまでの長さがある。
「ご迷惑をおかけしており、心よりお詫び申し上げます」
二神の手合わせを邪魔しないよう、少し距離を取って佇むアマーリエは深く頭を下げた。今は神々への詫び回りの真っ最中だ。全ての神々には全体集合で謝意を伝え、特に個別で対応するべき者に手分けして謝罪している。
個別謝罪を行う主な対象は、エアニーヌと慧音から傍迷惑なアプローチを受けた元聖威師たちの他、領域の門を解放してくれていた神々だ。封鎖を緩めているとはいえ一応は施錠してあった所と比べ、完全に開け放っていた神域は侵入された可能性が高く、念入りな確認をしてもらう手間をかけてしまった。
元聖威師たちは大公家と一位貴族の関係者が多いため、ランドルフとルルアージュ、当利と祐奈が回っている。神域を開けてくれていた神々には、アマーリエとリーリアが分担して詫びを入れていた。
『聖威師たちがいつでも気兼ねなく来られるように』との親切心で門を開けてくれていた戦神と闘神も、個別謝罪リストに含まれている。かなり気が重い対面だったものの、二神から怒りは感じられない。少なくとも、アマーリエの前では不快な面を見せていない。
『雛たちが謝ることじゃないさ。責任を取るなら本人と主任だろう。人間の神官は主任の管轄下にあるんだから』
『通常であれば、己の領域に侵入者があれば察知できる』
明るい声音で謝意を受け入れる戦神の手は、しかし、柔らかな口調とは裏腹に鋭く動いている。大気を斬り裂く湾刀の連撃が、複雑怪奇な曲線を刻みながら虚空を踊る。闘神が方天戟を旋回させ、絡め取るようにして刃を封じようとするのを、同じ方向に体ごと武器を捻って受け流した。そのままひょいと首を傾ければ、回転の勢いのまま突き出された穂先が頰の横を掠め、オレンジの髪が数本宙を舞う。
『おーっと危ない』
『ふん、避けたか』
肩を竦めて舌を出す戦神が、湾刀を持っていない手で拳打を打ち込んだ。獲物の長柄を薙いで弾いた闘神は、距離を取りながら鼻を鳴らす。そして、語調を和らげて述べた。
『しかるに、此度はどうも様子がおかしい。天界の入口を通過できたことや、元聖威師たち以外には気取られず動けていたこと、神域の探査をかわして潜伏できていること。いずれも人間の力でできる芸当ではない』
「はい。最初は神器を用いているのではないかと推測したのですが……」
同時に跳躍し、再び刃を交わす二神を眺めながら、アマーリエは言の葉を紡ぐ。
「中央本府ならびに当該神官たちの所属先の分府にある神器を確認したところ、全て異常なくそろっていたと、主任から連絡がありました」
その点はこちらにとっても予想外だった。てっきり、いずれかの神器を持ち出したとばかり思っていたのだが、違ったようだ。
光の飛沫を散らす蘇芳色の残像を描き、湾曲した剣戟がうねった。矢のごとく一直線に打ち出された群青色の御稜威が弾かれ、衝撃で大気が振動する。澄んだ音と共に無数のスパークが宙を踊った。
『まだ見付かってないんだって? 勝手に入って来たって奴ら』
マリーゴールドのごとき短髪をなびかせ、戦神レイオンが朗らかに笑う。右手に湾刀を持ち、澄んだオリーブ色の目を眼前に向けていた。
『複数の神が目撃しているのだ。見間違いということはあるまい。一体どこに隠れているのやら』
くすんだ金糸雀色の目を眇めて起伏のない声を紡ぐのは、戦神と対峙している闘神リオネス。携えた方天戟を構え直せば、その動きに合わせて揺れるターコイズブルーの髪は鎖骨ほどまでの長さがある。
「ご迷惑をおかけしており、心よりお詫び申し上げます」
二神の手合わせを邪魔しないよう、少し距離を取って佇むアマーリエは深く頭を下げた。今は神々への詫び回りの真っ最中だ。全ての神々には全体集合で謝意を伝え、特に個別で対応するべき者に手分けして謝罪している。
個別謝罪を行う主な対象は、エアニーヌと慧音から傍迷惑なアプローチを受けた元聖威師たちの他、領域の門を解放してくれていた神々だ。封鎖を緩めているとはいえ一応は施錠してあった所と比べ、完全に開け放っていた神域は侵入された可能性が高く、念入りな確認をしてもらう手間をかけてしまった。
元聖威師たちは大公家と一位貴族の関係者が多いため、ランドルフとルルアージュ、当利と祐奈が回っている。神域を開けてくれていた神々には、アマーリエとリーリアが分担して詫びを入れていた。
『聖威師たちがいつでも気兼ねなく来られるように』との親切心で門を開けてくれていた戦神と闘神も、個別謝罪リストに含まれている。かなり気が重い対面だったものの、二神から怒りは感じられない。少なくとも、アマーリエの前では不快な面を見せていない。
『雛たちが謝ることじゃないさ。責任を取るなら本人と主任だろう。人間の神官は主任の管轄下にあるんだから』
『通常であれば、己の領域に侵入者があれば察知できる』
明るい声音で謝意を受け入れる戦神の手は、しかし、柔らかな口調とは裏腹に鋭く動いている。大気を斬り裂く湾刀の連撃が、複雑怪奇な曲線を刻みながら虚空を踊る。闘神が方天戟を旋回させ、絡め取るようにして刃を封じようとするのを、同じ方向に体ごと武器を捻って受け流した。そのままひょいと首を傾ければ、回転の勢いのまま突き出された穂先が頰の横を掠め、オレンジの髪が数本宙を舞う。
『おーっと危ない』
『ふん、避けたか』
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『しかるに、此度はどうも様子がおかしい。天界の入口を通過できたことや、元聖威師たち以外には気取られず動けていたこと、神域の探査をかわして潜伏できていること。いずれも人間の力でできる芸当ではない』
「はい。最初は神器を用いているのではないかと推測したのですが……」
同時に跳躍し、再び刃を交わす二神を眺めながら、アマーリエは言の葉を紡ぐ。
「中央本府ならびに当該神官たちの所属先の分府にある神器を確認したところ、全て異常なくそろっていたと、主任から連絡がありました」
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