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第7章
8.戦闘神はお遊び中 後編
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『個人で所有してる神器を使ったんじゃないか? 先祖がもらったとかで私的に持ってたりさ。……いや違うか、そいつらポッと出なんだっけ?』
『ああ、神官の家系ではないと聞いた。代々神官を輩出している血統であればともかく、市井の家が神器を所持しているとは考えにくい』
スルリと闘神の懐に滑り込み、下方から真上に斬り上げるような一撃をお見舞いする戦神。闘神は片手を獲物から話すと上体を軽く逸らし、紙一重で避けた。そのまま片足を引いて腰を落とし、相方の顎下から強烈な掌底を打ち込んだ。
『リオも言ってたけど、何か変なんだよな。過去視とか透視をしてもソイツらの居場所が視えないし』
大きく上後方へ跳躍してダメージを殺した戦神が、うーんと高い天井を見た。生来の荒神が自領以外で運動をするために創られたというこの空間には、狼神と葬邪神の結界が張ってある。
「引き続き捜索を行います。なるべく早く結果をご報告できるよう努めて参ります」
『そんなに気負わなくて良いさ。フルードとアシュトン、当真に恵奈も俺たちに頼んで来たんだぞ。どうか現役の聖威師たちを責めないで下さいって。アリステルは悪神たちに話を通してるよ。バカ神官たちを見付けても生き餌にせず、聖威師たちに引き渡してやってくれって』
『もう一代、いや二代前の雛たちも、神々の元を回って取りなしている。ライナスと当波、オーネリアと佳良だな』
それは知らなかった。アマーリエは小さく息を呑んだ。フルードたちは確かに、自分たちも手伝うと申し出て陰に日向に手を貸してくれている。だが、裏ではそこまでしてくれていたのか。何の見返りも感謝も得ようとせずに。
『まーあんまり気にするなよ、俺たちだって手伝えるコトは手伝うからな!』
湾刀をクルンと回して逆手に持ち替えた戦神が、そのまま拳を開いて獲物を手放した。一直線に落下する白銀の煌きは、床に突き刺さる前に光の粒子となって消滅する。
『終わりか、レイ?』
『ああ、付き合ってくれてありがとな!』
穏やかさと静けさを取り戻したオリーブ色の瞳を見て一つ頷き、闘神も方天戟を虚空へと溶け消えさせた。
「よく御二方で手合わせなさっているのですか?」
戦闘神たちは生まれながらの荒神だ。だが、その気迫はアマーリエには感じられないようにしてくれている。猛々しい神威で圧倒してしまわないようにという配慮だ。
『うん、時々な。俺かリオの領域で結界張ってやるか、もしくは今みたいにここに来る。ここはちょっと運動したくなった荒神専用の場所なんだ』
この場合の荒神とは、生来の荒神という意味だろう。
『とにかくだ、俺たちにできることがあったら何でも言ってくれよ。申し訳ないと思う必要なんてないんだからな!』
『雛たちの頼みならば可能な限り力になろう』
スタスタ歩み寄って来た戦神が、アマーリエの頭をわしゃわしゃ撫で回す。フレイムとはまた違う温かさを宿す手だ。隣に並んだ闘神も、労わるような眼差しで微笑した。
『俺たちを頼って良いんだぞ。あっそうだ、ブレイ様とアレク様は何て言ってるんだ?』
「ひとまず私たち聖威師に対応をお任せ下さるそうです。ただ、今後状況が動き、神々や天界に不都合が出るとなった場合は自分たちが動くかもしれないとのことです。力になれることがあれば何でも言ってくれと仰せでした」
神の園を地上からの侵入者がうろついている。その報に神々は多少瞠目したが、血相を変えての大捜索はしなかった。むしろ、内心では面白がっているようにすら思える。肉食獣の巣に迷い込んでしまった草食動物の仔を探すがごとく。人間の一匹や二匹、その気になればいつでもどうにでもできるからだ。露骨に態度には出さないものの、このアクシデントを楽しんでいるように感じた。
『神々の中で雛たちを怒ったり責めたりしている者などおらぬ。雛たちが苦心していれば、誰もが惜しみなく手を差し伸べるだろう』
「はい……ありがとうございます」
安心して調査を進めろと激励され、胸の奥が熱くなったアマーリエは、心にわだかまっていた不安や重圧が少しだけ軽くなるのを感じながら首肯した。
『ああ、神官の家系ではないと聞いた。代々神官を輩出している血統であればともかく、市井の家が神器を所持しているとは考えにくい』
スルリと闘神の懐に滑り込み、下方から真上に斬り上げるような一撃をお見舞いする戦神。闘神は片手を獲物から話すと上体を軽く逸らし、紙一重で避けた。そのまま片足を引いて腰を落とし、相方の顎下から強烈な掌底を打ち込んだ。
『リオも言ってたけど、何か変なんだよな。過去視とか透視をしてもソイツらの居場所が視えないし』
大きく上後方へ跳躍してダメージを殺した戦神が、うーんと高い天井を見た。生来の荒神が自領以外で運動をするために創られたというこの空間には、狼神と葬邪神の結界が張ってある。
「引き続き捜索を行います。なるべく早く結果をご報告できるよう努めて参ります」
『そんなに気負わなくて良いさ。フルードとアシュトン、当真に恵奈も俺たちに頼んで来たんだぞ。どうか現役の聖威師たちを責めないで下さいって。アリステルは悪神たちに話を通してるよ。バカ神官たちを見付けても生き餌にせず、聖威師たちに引き渡してやってくれって』
『もう一代、いや二代前の雛たちも、神々の元を回って取りなしている。ライナスと当波、オーネリアと佳良だな』
それは知らなかった。アマーリエは小さく息を呑んだ。フルードたちは確かに、自分たちも手伝うと申し出て陰に日向に手を貸してくれている。だが、裏ではそこまでしてくれていたのか。何の見返りも感謝も得ようとせずに。
『まーあんまり気にするなよ、俺たちだって手伝えるコトは手伝うからな!』
湾刀をクルンと回して逆手に持ち替えた戦神が、そのまま拳を開いて獲物を手放した。一直線に落下する白銀の煌きは、床に突き刺さる前に光の粒子となって消滅する。
『終わりか、レイ?』
『ああ、付き合ってくれてありがとな!』
穏やかさと静けさを取り戻したオリーブ色の瞳を見て一つ頷き、闘神も方天戟を虚空へと溶け消えさせた。
「よく御二方で手合わせなさっているのですか?」
戦闘神たちは生まれながらの荒神だ。だが、その気迫はアマーリエには感じられないようにしてくれている。猛々しい神威で圧倒してしまわないようにという配慮だ。
『うん、時々な。俺かリオの領域で結界張ってやるか、もしくは今みたいにここに来る。ここはちょっと運動したくなった荒神専用の場所なんだ』
この場合の荒神とは、生来の荒神という意味だろう。
『とにかくだ、俺たちにできることがあったら何でも言ってくれよ。申し訳ないと思う必要なんてないんだからな!』
『雛たちの頼みならば可能な限り力になろう』
スタスタ歩み寄って来た戦神が、アマーリエの頭をわしゃわしゃ撫で回す。フレイムとはまた違う温かさを宿す手だ。隣に並んだ闘神も、労わるような眼差しで微笑した。
『俺たちを頼って良いんだぞ。あっそうだ、ブレイ様とアレク様は何て言ってるんだ?』
「ひとまず私たち聖威師に対応をお任せ下さるそうです。ただ、今後状況が動き、神々や天界に不都合が出るとなった場合は自分たちが動くかもしれないとのことです。力になれることがあれば何でも言ってくれと仰せでした」
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「はい……ありがとうございます」
安心して調査を進めろと激励され、胸の奥が熱くなったアマーリエは、心にわだかまっていた不安や重圧が少しだけ軽くなるのを感じながら首肯した。
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