神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第7章

41.面白くて愉しいから

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『なぁなぁ、何でコイツらに好き勝手させてたんだ? 神器なんか使わせてよ。お前が貸したのか?』
『神器はこの子たちが欲しがったので、適当な凡作をあげたのです。もちろん、その使用と管理を含む全般事項は自己責任とした上で。なので、神器を使って何をしようとも、責はこの子たちにありますわ。所有権を譲渡した以上、私には関係ありません』

 出来の悪い愚作ですが、ある程度の自律動作を行う機能は組み込んでありますのよ、とのたまう声は、どこまでも可憐で美しい。やはりアマーリエを相手にした時の攻撃は、神器が考え出したものだったようだ。

『……だが、それにしてもだ。ここで――お前の神域でやらかしてたんだろ。お前も側で見てたってコトじゃねえか。だったら注意くらいしてくれよ。ユフィーたち聖威師はキリキリ胃を痛めて、散々だったんだぜ』
『私は傍観しておりましたの。だって何をしようとも、主神が全力で愛し子をフォローするでしょう? ならば当代の聖威師たちの安全は保障されております。この子たちがどんな行動に出ようと無意味ですもの』
『けど神々だって迷惑かけられてたぞ。狼神様なんか神域が溶けたんだし』
『それは後で謝っておけば良いだけの話ですわ。狼神様はお優しいからお許し下さいますのよ。他の神々も』

 ほほほと淑やかに微笑するイデナウアーは、神がどこまでも同胞に甘いことを十分に認識していた。

『いや、だから最初からコイツらを止めてくれてりゃ、後で謝るなんてこともしなくて良かったじゃねえか。……コイツらだって犯す罪が何個か減っただろうに』

 なおも食い下がるフレイム。転瞬しながら聞いていた少女神が、袂から取り出した扇を開き、コロコロと可愛らしく笑う。扇には艶やかな鈴蘭が付いていた。

『嫌ですわ焔神様、それじゃつまらないではありませんの』

 ハラリと揺れるきめ細かい髪、無邪気に細まった春の双眸。軽やかに吹き抜けるそよ風のごとき声は、児戯に興じる幼子を思わせる。

『この子たちがどこまで愚かな振る舞いをし、どこまで墜ちていくのか。それを眺めるのが面白くて愉しいんですのに。制止などしては意味がないではありませんか』
『なるほど、さすがはこわーい花を司る神だな』
『うふふ、お褒めいただき恐縮です』

 嬉しそうに扇を翻すイデナウアーに、フレイムははぁと肩を落とした。別に褒めたわけじゃねえけど、と、その唇が動くが、声には出さない。やり取りが終わらなくなるからだ。投げやりげに視線を移し、嘆息気味に言う。

『だってよ、ユフィー。イデナウアーが神官共を放置してた理由は、面白かったからと愉しみたかったから、らしいぜ』
「……こわーい神らしいわね」

 色々な感情を込めて呟くアマーリエ。春空の瞳がこちらを見た。

『キミもボクの同胞にして我が裔だね。さっきから気になってたよ』

 まずは天の神への挨拶を先にしていたため、聖威師は後回しになってしまったと、申し訳なさそうな声が語る。アマーリエは衣を裾を払って膝を付き、深く礼をした。

「大神様にご挨拶いたします。私は帝国神官府大神官にしてレシスの遠き末裔、アマーリエ・ユフィー・サードと申します。我が祖神のご尊顔を拝し、至福の極みにございます」
『良いよ~楽にして。清縁神様と濁縁神様からキミの話は聞いてる。もちろん、清縁神様の御子神のこともね』

 清縁神はフルードの、濁縁神はアリステルの神格だ。アマーリエの横に進み出たランドルフとルルアージュが一礼し、正式名を告げて挨拶した。レシスの神罰から解放されたとしても、彼らもまたイデナウアーの後胤こういんであることは変わらない。

『ボクの末裔たちに会えて嬉しいよ。他の雛たちも名前を教えてちょうだい』

 要望を受け、リーリアと当利、祐奈が順に名を告げて叩頭する。少女姿の神は、にこやかに顔を上げるよう述べた。

「主神様、さっきから裔だの祖神だの何を仰せなんですか。それより、早くこの人たちを昇天させて下さい!」
「後は僕たちが全部上手くやると言っているのに、てんで聞いて下さらないんです!」

 またもや背後から顔を覗かせ、キャンキャン吼え立てる子ども2人に、桜桃サクランボを想起させる唇が弧を描いた。

『ボクは人間の言葉で話してるつもりだけど、君たちには理解できないのかな? 静かにしててと言ったのに。もしかして、帝国語じゃなくて皇国語の方が良い? これ以上配慮してあげるつもりはないけど』
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