神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第7章

45.悪神基準では平常運行

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『ん? そうじゃが? ハーティのことを視ようと思い付く前のことじゃ。自領でゴロゴロしながら天界の共有領域の様子を視ておったら、何でか知らんが人間が上がって来たのじゃよ。で、そうじゃコイツら放り込んでやれば皆ビックリするじゃろうなと思い、遊び心で門を開けた』
『ビックリって何ですか、何でそんなことするんですか!』
『何でって……面白そうだったから、何となく?』

 シレッと答えた毒神にフレイムが脱力し、ラミルファが笑い出した。アマーリエたちは総出でズコッとコケている。

(そ、その場の思い付きということ? 何かの意図や策謀があったわけではなくて?)

 そんな場当たり的なフィーリング行為、こちらがいくら考えても読めるはずがない。

『ふふふ、実に悪神らしい思考ですね。諦めろフレイム、悪神は大体こんな感じだよ。その時の一瞬の気分だけで言動を決めることはざらだ。そこには理屈も理由も、一貫性も整合性も何もない』
『あーもう、マジで面倒くせえなあ悪神は!』

 ワインレッドの髪をガリガリ掻いている姿を尻目に、大蛇の姿の神は飄々と告げる。

『もう少し人間たちを窺って会話を聞いていると、どうも元聖威師へアプローチすることを望んでいるようじゃった。その信念だけで天まで押しかけて来たのかと、純粋に大笑いしたものじゃ。これはとんだ大馬鹿であるとな』

 天界への無断侵入は重罪だ。厳罰を下されることが目に見えている暴挙を犯してまで、神の寵を得たいのかと。かつて散々に虐め倒した相手が聖威師になったことで焦るエアニーヌと慧音は、完全に正常な思考と判断力を失っていたのだろう。

 なお、エアニーヌたちが、天の神の中でも元聖威師に照準を合わせたことに関しては不自然ではない。地上の常識や価値観が通じない生粋の神よりも、かつて人間であった元聖威師の方が身近で親しみやすく、話も通じる。
 以前は誰かれ構わず神々に片端から念話を送り、愛し子にしろと持ちかけていたようだが――実際に天界に入り、その気に触れた瞬間に圧倒されたのだろう。ゆえに、無意識に生え抜きの神を避け、まだ心的な距離が近い元聖威師に狙いを絞った。

『その愚かな……んんっ、健気な心意気に免じ、少しばかり手伝ってやろうと思うたワシは、元聖威師がどこにいるか、天界のどこを通れば他の神々や使役に見付からぬか、人間たちの直感を刺激する形で教えて援護してやった。それでも鉢合わせそうになれば、ほんの少し空間を歪めて上手く通過させてみたりもしたぞえ』
『……それも面白そうだったからですか?』
『ほっほ、もちろんじゃよ焔神様。そうすれば、元聖威師を始めとする神々は驚くじゃろ。何故か人間が限界にいて神出鬼没に声をかけて来るのじゃから』

 しゃがれ声で嗤う大蛇は、エアニーヌたちに応じる同胞が出ることは万に一つもないと分かっていたはずだ。許可もなく押しかけ、愛し子にしろと要請する輩に応じる神などいない。いるとすれば、それこそ悪神くらいだ。

 思い返してみれば、戦神と闘神は、エアニーヌたちの動向を調べようと過去視をしたがよく視えないと言っていた。それは、彼らと同格の選ばれし神である毒神が関与し、エアニーヌたちの隠蔽に関わっていたからだったのだ。

『真ん丸な目でポカンとしておる同胞たちを視て、あー愉しいと笑うておった。じゃが、すぐに飽きてのう、もう良いかと思い、視るのをやめたのじゃ。人間2匹風情、ワシの援護がなくなれば、すぐに見付かって捕縛されるじゃろうしな』
『ちょうどそのタイミングで、イデナウアーがコイツらを見付けてこっそり自領内に引っ張り込んだわけですか。へー、主神と愛し子の実に見事な連携プレーですね』
『おお、そう言ってくれるか、ありがとう!』
『そんなに褒められると照れますわ、焔神様』
『いやただの皮肉ですよ! 当て付けも通じないんですかアンタら!』

 額に青筋を浮かべたフレイムの横では、ラミルファが腹を抱えて笑っている。他の者たちは口を挟まずに控えている。より正確に言えば、割り込む気力すら起こらず、遠い目をして突っ立っている。じっと場を観察しているフロースも無言だ。愛し子を得てから引き籠りをやめたとはいえ、泡の神は元来から饒舌な性格ではない。

『ああああもう……! あのですねぇ毒神様、それにイデナウアーも――』

 フレイムが何かを言いかけた時、アマーリエの脳裏に声が弾けた。

《主、連絡が遅くなった》
《頼まれていた件の確認と対処を行いました》
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