533 / 601
第7章
44.古き神は我が強い
しおりを挟む
隣に佇むアリステルを申し訳なさそうに見遣り、三角の頭をちょんと下げる毒の神。アリステルは首を横に振った。
『既に詫びをいただいておりますので、これ以上は結構です』
『アイとセラに説明され、己の早とちりに気付いてのう。慌ててこの子がいる所に向かったのじゃ。清縁神にも詫びを言わせておくれ。申し訳なかった』
『フウ様、何かなさったのですか?』
『覚醒したワシじゃが、すぐに活動する気分にはなれんでのう。少しの間、自領でゴロゴロしておったのじゃ』
この巨体でゴロゴロしたら、色々と大変そうである。もしや狼神の神域のように、部屋や内装が広大なのだろうか。
『その内、愛し子は何をしておるかと気になり、そっとハーティの領域の様子を窺ってみた。ワシが寝入る前、この子も眠いと言うておったからのう、寝ておるやもしれんと思うたのじゃ』
他神の領域を勝手に覗き見ることは非礼に当たるが、主神と愛し子やそれに類する関係であれば、あらかじめ神域の一部を視て良いと承諾を出している場合もある。イデナウアーもそうだったという。
『その時はちょうど私たちが来訪し、イデナウアー様と対面していた。私とお前は、エアニーヌたちを解放してもらえないかと試行錯誤しながら話していただろう。それをご覧になられた毒神様は、私とお前がイデナウアー様の生き餌を狙っていると思い違いなされたそうだ』
続きを引き取ったのはアリステルだ。フルードに説明する形で言葉を述べる。自分たちがエアニーヌと慧音を愛し子にしたいがために、イデナウアーに彼らとの誓約を撤回してもらいたがっていると思ったらしい。
『我が愛し子が見初めた者共を横取りしようとしておると早合点してしもうてのう、少しばかり、こりゃ~と注意したつもりじゃった』
フレイムや狼神の領域は覗き見れないため、アマーリエたちと話していた内容までは把握していなかったという。天界の共有領域を見張っておき、アリステルとフルードの安全が絶対に確保されている状況の時に、十二分に手加減して神威を喰らわせた。感覚としては、軽~く頭をペチコンとした程度だったらしい。
『まあ、フウ様ったら駄目じゃないですか。相変わらず独り合点なんですから。ボクからも謝るよ、ごめんね我が裔たち』
眉を下げたイデナウアーが、主神と並んでフルードとアリステルに頭を下げた。そして、フレイムとラミルファにも謝罪する。
『誤認が解けたのであればそれで構いません。多分に加減をいただいておりましたし、私もアリステルもすぐに回復しましたので』
フルードが苦笑いしながら答礼する。彼の性格では、それしか言いようがないだろう。フレイムとラミルファも仕方ないと言いたげに頷く。
『あなたが全く本気ではなかったことは分かっていますから、今回はこれで終わりにしますが、以後はお気を付けを』
『俺らもビックリしたんですからね、マジで頼みますよ』
穏便に返す裏で、毒神とイデナウアー、もちろんエアニーヌと慧音も抜いた念話網を展開し、こっそり愚痴る。
《魔神様といい二の兄上といい毒神様といい……どうして太古の神は、当事者への確認も周囲への相談もせず、ゴーイングマイウェイで突っ走るのだろう》
《遊運命神様と戦神様、闘神様もだぜ。ま、あの三神は神官から嘘の奏上を受けたのが発端だから、また別かもだが……こっちの反論を全然聞かねえってトコは同じだな》
《古き神は神威を抑えずに在った期間が長いから、色々な意味で我が強いらしいよ。自分が真理で真実みたいな意識が、私たち若神より大きいんだって》
ラミルファとフレイムのボヤきに、フロースが冷静に返した。聞いていた全員の溜め息が見事に重なる。
一方、殊勝な顔を向けていた毒神は、この話は済んだとばかりにケロリとした顔になり、イデナウアーに甘やかな眼差しを向ける。
『それにしても、ハーティはワシが入れてやった人間共を見初めたのじゃな。どうじゃ、この玩具は? 愉しめそうであるかえ?』
何でもないようにポンと投げ落とされた言葉。寸の間沈黙が流れ、フレイムがクワッと目を剥いた。
『ちょ、今何て言いました? まさか、コイツらを天界に引き入れたのはあなたなんですか?』
『既に詫びをいただいておりますので、これ以上は結構です』
『アイとセラに説明され、己の早とちりに気付いてのう。慌ててこの子がいる所に向かったのじゃ。清縁神にも詫びを言わせておくれ。申し訳なかった』
『フウ様、何かなさったのですか?』
『覚醒したワシじゃが、すぐに活動する気分にはなれんでのう。少しの間、自領でゴロゴロしておったのじゃ』
この巨体でゴロゴロしたら、色々と大変そうである。もしや狼神の神域のように、部屋や内装が広大なのだろうか。
『その内、愛し子は何をしておるかと気になり、そっとハーティの領域の様子を窺ってみた。ワシが寝入る前、この子も眠いと言うておったからのう、寝ておるやもしれんと思うたのじゃ』
他神の領域を勝手に覗き見ることは非礼に当たるが、主神と愛し子やそれに類する関係であれば、あらかじめ神域の一部を視て良いと承諾を出している場合もある。イデナウアーもそうだったという。
『その時はちょうど私たちが来訪し、イデナウアー様と対面していた。私とお前は、エアニーヌたちを解放してもらえないかと試行錯誤しながら話していただろう。それをご覧になられた毒神様は、私とお前がイデナウアー様の生き餌を狙っていると思い違いなされたそうだ』
続きを引き取ったのはアリステルだ。フルードに説明する形で言葉を述べる。自分たちがエアニーヌと慧音を愛し子にしたいがために、イデナウアーに彼らとの誓約を撤回してもらいたがっていると思ったらしい。
『我が愛し子が見初めた者共を横取りしようとしておると早合点してしもうてのう、少しばかり、こりゃ~と注意したつもりじゃった』
フレイムや狼神の領域は覗き見れないため、アマーリエたちと話していた内容までは把握していなかったという。天界の共有領域を見張っておき、アリステルとフルードの安全が絶対に確保されている状況の時に、十二分に手加減して神威を喰らわせた。感覚としては、軽~く頭をペチコンとした程度だったらしい。
『まあ、フウ様ったら駄目じゃないですか。相変わらず独り合点なんですから。ボクからも謝るよ、ごめんね我が裔たち』
眉を下げたイデナウアーが、主神と並んでフルードとアリステルに頭を下げた。そして、フレイムとラミルファにも謝罪する。
『誤認が解けたのであればそれで構いません。多分に加減をいただいておりましたし、私もアリステルもすぐに回復しましたので』
フルードが苦笑いしながら答礼する。彼の性格では、それしか言いようがないだろう。フレイムとラミルファも仕方ないと言いたげに頷く。
『あなたが全く本気ではなかったことは分かっていますから、今回はこれで終わりにしますが、以後はお気を付けを』
『俺らもビックリしたんですからね、マジで頼みますよ』
穏便に返す裏で、毒神とイデナウアー、もちろんエアニーヌと慧音も抜いた念話網を展開し、こっそり愚痴る。
《魔神様といい二の兄上といい毒神様といい……どうして太古の神は、当事者への確認も周囲への相談もせず、ゴーイングマイウェイで突っ走るのだろう》
《遊運命神様と戦神様、闘神様もだぜ。ま、あの三神は神官から嘘の奏上を受けたのが発端だから、また別かもだが……こっちの反論を全然聞かねえってトコは同じだな》
《古き神は神威を抑えずに在った期間が長いから、色々な意味で我が強いらしいよ。自分が真理で真実みたいな意識が、私たち若神より大きいんだって》
ラミルファとフレイムのボヤきに、フロースが冷静に返した。聞いていた全員の溜め息が見事に重なる。
一方、殊勝な顔を向けていた毒神は、この話は済んだとばかりにケロリとした顔になり、イデナウアーに甘やかな眼差しを向ける。
『それにしても、ハーティはワシが入れてやった人間共を見初めたのじゃな。どうじゃ、この玩具は? 愉しめそうであるかえ?』
何でもないようにポンと投げ落とされた言葉。寸の間沈黙が流れ、フレイムがクワッと目を剥いた。
『ちょ、今何て言いました? まさか、コイツらを天界に引き入れたのはあなたなんですか?』
10
あなたにおすすめの小説
結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?
ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十周年。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
婚約破棄から50年後
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。
そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。
できない子に転生しましたが、家族と食卓があれば十分です ―人間不信だった私が、ゆっくり育つ異世界生活―
愛朱ひいろ
ファンタジー
人の顔色ばかり伺い、心を壊した26歳の会社員女性。
彼女は死後、異世界で「できない子」として転生する。
魔法は使えない。
体は不器用で、成長も人より遅い。
前世の記憶のせいで、人と関わることが少し怖い。
けれどこの世界には、
見守り支えてくれる両親と、
あたたかい食卓があった。
泣いて、つまずいて、できないことに落ち込みながら、
彼女は少しずつ「できないままでも、生きていていい」と知っていく。
これは、
最強でもチートでもない主人公が、
家族と食事に支えられながら、ゆっくり育ち直す
生活密着型・異世界転生×成長×グルメファンタジー。
……の、予定です。
毎日更新できるように執筆がんばります!
侯爵令嬢ソフィアの結婚
今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚したが、これは金が欲しいソフィアの父の思惑と高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない
そもそもヴィンセントには美しい恋人がいる
美男美女と名高いヴィンセントとその恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ
その事をソフィアも耳にしており、この結婚が形ばかりのものであることを知っていた
結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら家に住むように言われて…
表紙はかなさんです✨
ありがとうございます😊
2024.07.05
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
ローザリンデの第二の人生
梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。
彼には今はもういない想い人がいた。
私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。
けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。
あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。
吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
1/10 HOTランキング3位、ありがとうございます。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる