神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第7章

60.最後のお話しタイム

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「それは……!」

 苦悶の表情を浮かべて言葉を詰まらせるアマーリエ。その様子を観察していたラミルファが、フレイムに一瞥を向けた。半瞬後、フレイムは瞬きして末の邪神の方を向く。山吹と灰緑が混ざり合い、前者が僅かに見開かれた。そして目でだくを返すと、口を開く。

『なぁ、毒華神』
『焔神様、何でしょうか?』
『神官の処分はお前と花神様の思う通りにして良いけどよ。せめて最後に、少しだけユフィーと話をさせてやってくれねえか。生き餌からの解放は諦めるとしても、大神官として遺言くらいは聞いてやりたいだろうし』

 横から差し込まれた提案は控えめな言い方だったが、『ユフィーの方が先に話を付けてたのに、後からそれをひっくり返したんだから少しくらい詫びを示せ』と暗に告げている。それを正しく読み取ったイデナウアーは花神を見た。

『焔神様の言い分にも一理がございます。花神様、構いませんでしょうか?』
『ええ、どうぞ。ただ、時間制限は付けておいてね。話を長引かせて時間稼ぎをするのは無しよ』
『承知いたしましたわ』

 花神もアマーリエに悪いという思いはあったのか、すんなりと了承してくれた。話が進む中、肝心のアマーリエはフレイムの意図が読めず困惑を滲ませる。

《フレイム、今更話をしたって何も変わらないわ。もう処罰は決まってしまったのよ。まさか本当に、最期の言葉を聞いてやれということ?》

 困惑気味に念話すると、歯切れの悪い答えが返った。

《いや、そうじゃねえ。今しがたラミルファから超速で念話があったんだ。成功率はかなり低いが、試すだけはしてみても良い方法があるってな。望み薄だからあんまり期待すんな。だがもし上手くいけば……》

 だが全てを言い終わる前に、イデナウアーが動き出す。

『じゃあアマーリエ、これからこの子たちを悪霊に引き渡すけど、その前に少しだけ話をさせてあげる。リミットは、この花が枯れて花弁が全部散り落ちるまでね』

 軽やかな言葉と共に、虚空に花が咲いた。鮮やかで艶やかで毒々しい、青紫の斑点を散りばめた赤い大花だ。美しく開いたその一輪が、一呼吸後、みるみる内に瑞々しさを失って乾いていく。

(か、枯れるのが速い……!)

 凄まじい速度で茶色く干からびていく花から、さっそくひとひらの花弁が散った。

『もちろん花の時間を止めるとか花びらを復元させたりとかはナシだよ。じゃあこの子たちの声だけ出せるようにするね。ただし舌を噛んで自害したりとかはできないから』

 イデナウアーが締めくくった途端、エアニーヌと慧音が唇を動かした。

「た、助けて大神官! 嫌よ地下行きなんて!」
「悪霊なんかに引き渡さないで!」
「エアニーヌ、慧音……」

 ひとまずフレイムとの念話は保留にして2人を見たアマーリエだが、言葉が継げない。助けたくても叶わないのだ。その間にも、また花びらが舞う。

「この神が悪神だなんて知らなかったの、花神様だと思ったんです!」
「もう勝手なことしないから、何でもしますから許して下さい!」

 これからは言うことを聞く、良い子にする、と口々に叫ぶ子どもたちに、声を飛ばしたのは何故かラミルファだった。

『往生際が悪い子は嫌いではない。優しい僕が悪霊に口利きしてあげても良いよ。君たちの代わりに他の神官を連れて行かせれば手打ちにできる』

 普通なら身代わりは認められないが、神直々の指示であれば悪霊は従わざるを得ない。

『君たちが地下世界に入った後ですぐにトレードすれば、一瞬でも地下行きにはなったから花神様の要望も満たしているしね』

 その瞬間、エアニーヌと慧音は一気に希望に満ちた顔になった。新たな花弁が散る中、ここぞとばかりに舌を動かす。

「そうして下さい、私を助けて下さい!」
「地下に行かなくて済むなら何でも良いです!」

 微塵の迷いもない即答に、アマーリエも全力で返した。

「良くないわよ、他の誰かを犠牲にするなんてできるわけがないでしょう!」
(勝手なことはせず良い子になるのではなかったの!?)

 舌の根も乾かない内に前言撤回した2名に、内心で頭を抱える。だが当たり前だ。この一瞬で性根が変わるはずがない。

『だろうね。少し冗談を言ってみただけだよ』

 ラミルファがシレッと肩を竦める。リミットを告げる大花に残った花弁はあと僅か。期待を叩き折られて凍り付く神官たちに、妖しい笑みが向けられた。

『口利きしてあげても良いよ、と言っただけで、すると断言したわけではない。花神様も同じ理論で、君たちの処分権を上手く掠め取って行かれただろう。それを見ていたはずなのに、同じやり方に引っかかって期待するとは、学習しないのだな』
『まあ、掠め取ったなんて酷いわ』

 コロコロと花神が破顔する。同じく笑みを返した末の邪神は、すいとアリステルに目を向けた。

『だが、諦めの悪い子は嫌いではないと言うのは本当だよ。ねえヴェーゼ?』
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