神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

文字の大きさ
579 / 601
第8章

19.最高神のペットでした

しおりを挟む
(活用できるものは何でもしなくてはね)

 内心でペロリと舌を出しながら続ける。

「フレイムが見ていてくれたから、万一上手くできなくても大丈夫だと思って、のびのびと練習できたのよ」

 笑顔のまま、訓練、練習という言葉を重ねて強調する。
 ――神域をぶち壊して暴れたなどとなれば、このトライコーンがどのような処罰を受けるか分かったものではない。現在は聖威師たちが帰天している慶事中ということで、恩赦が出される傾向が強いが、絶対ではない。

(フレイムは精霊や霊獣に優しいから、それほど厳しい罰は与えないにしても……演習でしたという体にできれば一番よね。もちろん事情を聞いてみて、三角獣側に非が無ければ、の話だけれど)

 もし意図的な奇襲であったならば、きちんと処分しなければならない。だが、完全に我に返ったらしいトライコーンは、忙しなく視線を動かして周囲を窺っている。耳を絞り、尻尾を下げてフレイムや神々を見ている様子から、敵意や悪意はなかったように感じた。

『そりゃ良かった。とはいえ、訓練にしちゃちょっとばかり派手だったな。俺もビックリだ。これをちょうど良い修練材料でしたで手打ちにできるかどうかは、まだ分からねえぜ』

 以心伝心でアマーリエの意図を読んだのだろう。苦笑いしたフレイムが、一転して温度を消した目で三角獣を見遣った。

『お前は地神様に飼われてる霊獣だろ。何故こんな真似をした。。自分が何をしたか覚えているか?』
『い、いいえ……』

 弱々しい返答と共に、トライコーンが長い首を横に振る。ラモスとディモス同様、話せるタイプの霊獣らしい。だがそれよりアマーリエの頭を占めていたのは、台詞の冒頭部分だった。

(地神様の霊獣なの!?)

 それは下手に攻勢に出なくて良かったかもしれない。正当防衛であっても、最高神の飼い獣を独断で処せば不要な騒動の元となりかねない。
 先日天馬が暴走した際は、激昂したラミルファが斬首を命じかけたが、あの時の彼は真の神格を出して邪禍神となっており、天馬の飼い主である原風神と対等な立場だった。しかし、アマーリエたちは明確に地神より格下だ。

『お前は俺の神域の門をぶっちぎって押し入り、神殿を壁ごと吹っ飛ばして中にいるコイツらに襲いかかろうとしたんだ。コイツらは聖威師で、こっちのユフィーは俺の愛し子だ』

 フレイムは現在も、神域の門を解放している。アマーリエの元には、引き継ぎや確認などで頻繁に他の聖威師が出入りするからだ。いちいち入域の許可を出すのは面倒だと言って、夜以外は入口を開けていたため、トライコーンの侵入を許してしまった。

 端的な説明を聞いた霊獣は愕然と目を剥き、ブルブルと体を震わせ始めた。三本の角が動きに合わせて小刻みに揺れている。

『そ、そんな……誠に申し訳ございません。この数瞬の記憶がなく……取り返しの付かないことをしてしまいました』
『取り返しはまだ付くだろ。お前はユフィーが鎮めてくれて、死傷者も出なかったんだからな。後は俺が、神域を壊されたことを何とも思わないで、あー良い訓練だったぜって笑っときゃ良い話なんだぜ』

 肩を竦めるフレイムに、アマーリエは両手を合わせて頼んだ。

「許してあげて……とはまだ言わないわ。何がどうなって起こったことなのか、全容も分かっていないのだから。けれどお願い、このまま話を聞いてあげて。この子はとても怯えているし、事情があったのかもしれないわ」
『ああ、聞いてやるさ。ってなわけだ、話してみろ。記憶がないそうだが、どこまでなら覚えてる? 正確でなくても良い、分かる範囲で良いから話してみな』

 神威で過去視をすれば、瞬殺で全てが分かる。にも関わらず、あえて問い質すのは意味がある。自発的に説明を行い、全容の解明に協力した事実があれば、仮にトライコーンに何らかの落ち度があったとしても、酌量が容易になるからだ。フレイムはギリギリまで、この霊獣を救う道を閉ざさないようにしている。

『お答えいたします。私は地神様の飼い獣です。普段は放し飼いにされており、天界にある森林に住んでおります。神々の神苑に近い場所を寝ぐらにし、同じ三角獣や他の霊獣と共に暮らしておりました』

 住んでいた所は、あの天馬が暴走した際に走り込んだ森の一角だという。神罰牢に通じる穴がある場所さえ避けていれば、霊獣にとっては非常に過ごしやすい場所なのだそうだ。

『しかし先ほど、寝ぐらに複数の精霊が押しかけ、霊威を使いながら数名がかりで抑えられ、角を切られそうになりました。必死に抵抗したところで記憶が途切れています』
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

元侯爵令嬢の異世界薬膳料理~転生先はみんな食事に興味が無い世界だったので、美味しいご飯で人の身も心も癒します~

向原 行人
ファンタジー
 異世界へ転生して数日。十七歳の侯爵令嬢、アリスとして目覚めた私は、早くも限界を迎えていた。  というのも、この世界……みんな食事に興味が無くて、毎食パンとハムだけとか、ハムがチーズに変わるとか、せいぜいその程度だ。  料理というより、食材を並べているだけって感じがする。  元日本人の私としては温かいご飯がたべたいので、自分で食事を作るというと、「貴族が料理など下賤なことをするのは恥だ!」と、意味不明な怒られ方をした。  わかった……だったら、私は貴族を辞める!  家には兄が二人もいるし、姉だっているから問題無いでしょ。  宛てもなく屋敷を飛び出した私は、小さな村で更に酷い食事事情を目の当たりにする。  育ち盛りの子供たちや、身体を使う冒険者たちが、それだけしか食べないなんて……よし、美味しいご飯でみんなも私も幸せになろう!  医食同源! 大食いモフモフ聖獣に、胃袋を掴んでしまった騎士隊長と一緒に、異世界で美味しくて身体に良い食材探しだ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

婚約破棄から50年後

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。 そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。

永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳―― それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。 公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。 だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、 王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。 政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。 紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが―― 魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、 まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。 「……私が女王? 冗談じゃないわ」 回避策として動いたはずが、 誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。 しかも彼は、 幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた―― 年を取らぬ姿のままで。 永遠に老いない少女と、 彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。 王妃になどなる気はない。 けれど、逃げ続けることももうできない。 これは、 歴史の影に生きてきた少女が、 はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。 ざまぁも陰謀も押し付けない。 それでも―― この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。

婚約破棄したその場から、ざまぁは始まっていました

ふわふわ
恋愛
王国随一の名門、アルファルド公爵家の令嬢シャウラは、 ある日、第一王子アセルスから一方的に婚約を破棄される。 理由はただ一つ―― 「平民出身の聖女と婚約するため」。 だが、その“婚約破棄したその場”で、ざまぁはすでに始まっていた。 シャウラは泣かず、怒らず、抗議もしない。 ただ静かに席を立っただけ。 それだけで―― 王国最大派閥アルファルド派は王子への支持を撤回し、 王国最大の商会は資金提供を打ち切り、 王太子候補だったアセルスは、政治と経済の両方を失っていく。 一方シャウラは、何もしていない。 復讐もしない。断罪もしない。 平穏な日常を送りながら、無自覚のまま派閥の結束を保ち続ける。 そして王国は、 “王太子を立てない”という前代未聞の選択をし、 聡明な第一王女マリーが女王として即位する――。 誰かを裁くことなく、 誰かを蹴落とすことなく、 ただ「席を立った」者だけが、最後まで穏やかでいられた。 これは、 婚約破棄から始まる―― 静かで、上品で、取り返しのつかないざまぁの物語。 「私は何もしていませんわ」 それが、最強の勝利だった。

旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?

白雲八鈴
恋愛
 我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。  離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?  あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。  私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?

ローザリンデの第二の人生

梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。 彼には今はもういない想い人がいた。 私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。 けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。 あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。 吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)

処理中です...