溺愛のフリから2年後は。

橘しづき

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同居スタート

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「いい部屋見つけたねー」

 段ボールまみれの部屋の中心で、愛理が周りを見回してそう言った。湊斗は一つの段ボールを開けながら答える。

「いいよね、ここ。綺麗だし職場から近いし、家賃はちょっとするけど、二人で割れば一人暮らしの時より安い」

「湊斗がすぐに物件見つけてきたときは一瞬迷ったけど、やっぱ引っ越してよかったかも」

 愛理がわくわくするような顔で言ったので、湊斗は一旦停止して愛理から顔を背け、深呼吸して自分を落ち着かせた。表情筋がいつもの顔を保ってくれていなかったのだ。

(愛理と本当に暮らすことになった……ああ、長かったなあ……)

 今回の計画を実行すると決めたときから、愛理と暮らすマンションはずっと探していたのだ。結婚するとなれば、同居は必然。愛理が心躍らせるような物件を見つける必要があった。

 予算を考え、お互いの会社から通勤しやすく、治安もいい場所……そんな物件はあまり多くないが、湊斗はこまめに不動産屋に足を運んだりネットをチェックしたりしていた。その甲斐あって、いい所を見つけられた。これもすべて、愛理と同居するため。

 もちろんまずは友人としてルームシェアを始めるのだから浮かれていてはいけない、と自分を戒める。こちらの気持ちがバレたら、この同居は終わりになってしまうだろう。

「さーて荷解きがんばろー。私漫画が多いんだよなあ……」

「でもさ、読みたいと思った時にお互いすぐに貸し借りできるって最高じゃない?」

「最高!」

 愛理が目をキラキラして勢いよく言ったので湊斗は微笑む。こんな小さなことでも、一緒に住むメリットがあるんだと一つずつ愛理に教えていかないと。向こうが同居を嫌がってしまえば全てが終わる。

(最終目的はもちろん、本当にそういう関係になることだけど……)

 焦ってはいけない。これだけ長い時間進まなかったのだから、急に展開を変えるのは無理だ。まずは居心地がいい生活を送れるようにしないと。湊斗は口角をあげて考える。

 そんな湊斗の心の内など知るはずもない愛理はひたすら荷解きをしていたが、スマホの音が鳴り響いたことに気づいてポケットから取り出した。てっきり親が引っ越しの心配でもしてきたのかと思ったが、相手は大学からの友人・千紗だった。

 晴れ屋飲み会のメンバーには、今回の結婚はラインで伝えている。結婚式などはする予定はなく、入籍だけして引っ越す、と簡潔に教えた。

 それを見て千紗が電話をしてきたのだろう。愛理は電話に出る。

「もしもし、千紗?」

『あ……愛理?』

 あの日以来、千紗と連絡を取ってはいなかった。愛理は片手で荷物を取り出しながら笑みを漏らした。

「珍しいね、どうしたの?」

『いや……結婚報告にびっくりして。おめでとうって言うタイミング逃してたから』

「あ、ありがとう」

 分かってはいたことだけど、噓の結婚に罪悪感を感じた。大学時代からの友人も親も欺いているなんて、やっぱり気持ちのいいものではない。

 でももう引き返せないのだし、噓を突き通すしかない。

「それでわざわざ電話くれたの?」

『うん……あの、もう引っ越した?』

「丁度今日が引っ越しの日でね」

『あ、そうだったんだ、ごめんねそんな日に! そっか、本当に引っ越したんだ』

 千紗の声が、普段と比べてどこか元気がないことに気が付いた。愛理は手を止めて首を傾げる。

「なんかあった? 元気なくない?」

『……いや、本当に結婚したんだ、って思って……』

「え?」

『ううん、なんでもない。忙しい時にごめんね』

 千紗は短くそう言うと電話を切ってしまった。愛理はスマホを眺めながらきょとんとしたが、あまり深くは考えずすぐにポケットにしまった。

 大学から仲のいい千紗は、愛理と二人で食事に行く仲だ。千紗は湊斗とも仲がよく、大学時代はよく三人で遊んだこともあるが、就職してからは三人で会うことは無くなりああして大人数で会うくらいになっていた。

「千紗から?」

「うん、結婚おめでとうって直接言ってくれた」

「仲いいもんね、千紗と愛理」

「たまにだけどご飯行ってるよ。昔は湊斗も入れて三人で行ってたよねえ。湊斗は千紗と二人で遊んだりする?」

「一度もないね」

「そっかー。じゃあ晴れ屋の会で会うくらいなのかあ」

 愛理が一人でそう呟いているのを、湊斗はちらりと横目で見た。

(愛理がいなかったら会うわけないだろ)

 他の女性と二人きりで行動して、愛理に誤解される危険があるのに。それに、正直愛理以外の女は二人で遊んでも全く楽しいと思えないので、行くメリットは何一つない。全額飯を奢ると言われてもごめんだ。だったら一人で愛理に借りた漫画を眺めながらカップラーメンを食べた方がはるかにましだと思っている。

「ねえ、一緒に暮らすならルールとか決めた方がよくない? 途中で揉めるより最初に決めた方がいいよ」

 愛理が空になった段ボールを畳みながら言った。湊斗は同意する。

「賛成。俺から一番最初に言っておきたいことがある」

「なに? ビールの空き缶はちゃんと捨てろって?」

「はは、違うよ。不満があったらどんな小さなことでも必ず言うこと。それだけは絶対に守ろう。一人で考えてても解決しないし、愛理とはこれからずっと仲良くしていきたいから」

 湊斗が優しい笑みを浮かべていったのを聞いて、愛理は少し胸がくすぐったくなった。改めてずっと仲良くしていきたいなんて、面と向かって言われるとどこか恥ずかしい。

「そうだね。湊斗もね」

「うん。あとは家事の分担とかかなー。朝食はともかく、夕飯は一緒に食べられたらいいなと思ってる。もちろん仕事の時間の都合もあるけど」

「いいよ。一人で食べるよりその方が楽しいし」

 二人は荷解きの手を休めることなく、ルールについて話し合って決めていった。愛理はあまり料理も得意ではないので、夕飯の支度は湊斗の仕事になった。そのかわり、掃除は愛理が中心となってやる。

 愛理は頭をかきながら言う。

「でも食事係って、買い物とかも含まれるじゃん? 湊斗が大変じゃない?」

「別に毎日作るとは言ってないよ。買ってくる日とか、外食の日も作るし。無理はしないから。それに、買い物は時間が合えば一緒に行ってほしいかな」
 
 そうすれば、ずっと夢に見ていた『愛理とスーパーで食材を買う』という絵が実現できる。

「そっか、そうだね。買い物は私も手伝うから! あ、そうだ! 洗濯も私がやるよ!」

 名案だとばかりに目を輝かせて愛理が言ったので、つい湊斗は手を止めて愛理を振り返った。向こうは全く悪気はなく、むしろ善意の塊だ。

 愛理に、洗濯物をしてもらう……?

(……愛理に下着を洗われるのは……ちょっといろいろ大変だなあ……)

 普通の男はどうなんだろう。好きな子に洗濯を任せても気にしないのだろうか? 自分はそうはいかない。恥ずかしいし気まずいし、平静を装っていられそうにない。まるで乙女のような考えだが、湊斗は至って本気だ。

(その光景を前に自分を保っていられそうにないから駄目だな。却下)

 湊斗は心で呟いた。

「いや、洗濯はそれぞれにしよう。俺も愛理のものは洗わないようにするから」

「え? ……あ」

 そこで愛理はようやく気が付くのだ。洗濯って下着とかもあるか。いくら幼馴染で仲がよくても下着を洗ってもらうのは抵抗がある。

(バストサイズとかばれるし、穴が開いたパンツも見られたらきまずいもんなあ)

「まあそうだね、それがいい。洗濯はそれぞれで!!」

「はは、さすがに男に洗われるのは嫌だよね」

「男じゃなくて女友達でも嫌だよ」

「……そっか」

「実際やってみていろいろ出てくるよね。その都度話していこうね」

 愛理がにっこり笑ってそう言ったのを見て、湊斗は顔が溶けてしまいそうになった。

 これからは、家に帰ればいつでも愛理がいる。そんな幸せに、自分の心臓が持つか不安だった。




 あらかた荷物を片付けた後、外を見るとすっかり日が暮れていた。愛理が自室から出ると、リビングのソファに座った湊斗が振り返る。

「愛理! 終わった?」

「まあ大体? ふー疲れたっ」

 愛理が隣に腰かけ、ソファが少し沈む。その重みに、湊斗は自分の体が一瞬硬直するのを感じた。今までずっと一緒にいた存在だが、お互いの部屋を行き来したことは一度もない。

 それはもちろん、外で二人きりになるのと室内で二人きりになるのでは、理性への影響の及ぼし方が違うからだ。その上、このソファは元々湊斗が使っていたもので、一人暮らし用として買ったためあまり大きくない。

(これは……もう少し大きめのソファの購入をしないとだな……)

 これから愛理と並んで酒を飲んだりするのに、この距離感はやばいだろ。何がって自分の心臓が。

 突然意識が飛んで襲ったりしたらどうするつもりだ。犯罪者だ。
 
「愛理、このソファ使って大分長いし、今度新しいの買わない?」

「まだまだ綺麗じゃない? 結構座り心地好きだよこれ」

 愛理は笑いながらソファの布を撫でる。たったそれだけの仕草を見ただけで、湊斗はうっと何かに撃たれたように苦しんだ。

「いや、でも……ほら、このリビングにどう見ても合ってないから」

「あーそれはそうかも」

「広いソファで足伸ばして漫画読みたくない?」

「それいいね!」

 愛理が購入に積極的になったので、湊斗はほっと胸を撫でおろした。これで愛理と家具を買いに行く約束も同時に取りつけたので、楽しみがまた増えた。

(お揃いの食器とか……カップとか。そういう雑貨も欲しいなあ……)

 湊斗は一人その場面を想像して幸せに浸るが、隣の愛理はスマホを眺めながら全く興味がなさそうだった。いつものことだ。

「ねー湊斗、今日の夕飯どうする? 疲れたし後で宅配しない? 私ハンバーガー食べたい!」

「そうしよう。ハンバーガーいいね」

「美味しそうな店あったから送るね。何がいいか見といて。よし、ご飯の前に先お風呂に入っちゃおうかなー湊斗、先入っていいよ」

 お風呂、という単語が出てきたとき、湊斗はつい持っていたスマホを滑り落し床に落下させた。慌てて拾い、画面が無事なことを確認しほっとする。

(落ち着け。一緒に暮らすのにこんなことでたじろいでてどうすんだ、俺)

 平常心、平常心。

「あー愛理先入っていいよ。俺まだゆっくりしたいし」

「ありがとう! じゃあお先にー」
 
 愛理は大きく伸びをすると、そのまま軽い足取りで風呂場へと向かって行ってしまった。一人残された湊斗は盛大なため息をつき、がくりと項垂れる。

(落ち着け。目的は一緒に住むことで居心地の良さを感じてもらうこと、それから出来れば少しずつ異性として見てもらうこと……先は長いんだ、俺は一旦落ち着いて冷静になれよ)

 いつもの幼馴染としての振る舞いを忘れてはならない。今、愛理に気持ちがバレるなんて論外だ。

 とりあえず気を紛らわせるために、愛理から送ってもらった店でメニューを確認する。愛理が好きそうなラインナップに微笑んでゆっくりしていると、しばらくして廊下から足音が聞こえた。愛理がもう出てきたらしい。

 彼女は満足げな顔をしてリビングへと入ってきた。

「あーお先! 動いて汗かいたからさっぱりしたー」

 答えようと愛理の方を見た湊斗は、ついその姿を二度見した。

 愛理は大きめのTシャツに、下は短パンを履いていた。白い足が惜しげもなくさらされており、髪は濡れ、化粧を落とした頬は風呂上がりで赤く染まっていた。先ほども自分に冷静になれ、と言い聞かせたばかりだというのに、すっかり忘れて呆然とその姿を見つめてしまう。

(破壊力えぐいじゃん……え、俺毎日これを隣にして過ごすの?)

 素顔を見たのはいつぶりだろうか。成長と共に女性は化粧を覚える生き物なので、具体的にいつから愛理の素顔を見ていないのかわからない。そこまで大きな変化はないが、きりっとした顔が少し柔らかくなる気がして、懐かしく思った。

 そして部屋着などは、見る機会がなかったので、湊斗にとってはあまりに威力が強い。それもこんなみじ、短い丈の……

「ねえ湊斗は何頼むか決めた?」

 再び隣に座った愛理はスマホを触りながら湊斗に尋ねた。ふわりとシャンプーの香りただよい、湊斗はぐっと息を止める。これ以上吸ったら多分、脳が昇天する。

「あーえっと、もうちょっと待ってて。俺も風呂入っちゃいたいから」

「そうだね、まだ早いしね。ゆっくりしておいでー」

 愛理はひらひらと手を振って湊斗を見送った。涼しい顔をしてリビングから出た湊斗は、扉を閉じた瞬間目を閉じて頭を抱えた。

(俺の認識が甘かった……一緒に暮らすって、これほど大変なのか……)

 それは湊斗が特に拗らせてるから余計に反応してしまうんだ、というツッコミは誰も入れない。

 それに長い間知り合いだったからこそ、初めて見る姿があまりに新鮮で破壊力がすさまじい。

 幸せで、それと同時に拷問。

「……落ち着かないと。水を浴びるか」

 湊斗は一人呟いてふらふらと風呂場へ向かった。

 だが風呂場に入ったら入ったで、『愛理が入った風呂場』と脳は勝手に妄想を始めて止まらず、危うく鼻血が出そうになったのを冷水で何とかした。

 
 この偽装結婚、前途多難である。



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