この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜

氷雨そら

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招待状

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 ベリアス・シェンディアと、ルナシェ・ミンティア。
 その結婚式が、ギアードの遙か東。魔塔で行われるということは、衝撃的なニュースとして王国全土を駆け回った。

 王座に座った国王は、黒い封筒、金の封蝋、明らかに魔塔からの手紙を見つめていた。

「――――魔塔を手に入れたか」

 その言葉は、国王以外誰もいない王の間に響いて消える。
 シェンディア公爵家と、ミンティア辺境伯家の婚姻をすすめたのは、隣国と、常に国王の廃位を狙い画策している王弟派貴族への牽制だ。
 しかし、そこに魔塔が加わった。

 王国のパワーバランスは、今回のことで大きく変化するに違いない。
 そのことに気がつかない、ベリアス・シェンディアではないだろう。
 しかも、王国の剣、ベリアス・シェンディアからは、隣国との戦争が終結した直後から、再三にわたり騎士団長の職を辞したいという申し出がされていた。

「……さて、どうしたものか」

 ベリアス・シェンディアが騎士団長を辞した後、その地位を継ぐのは、現副団長ジアス・ラジアルしかいないだろう。そして、ジアス・ラジアルは、自他共に認めるベリアスの忠実な部下だ。

「ベリアスが、反旗を翻すことはあるまい。騎士道に忠実であることを絵に描いたような男だ」

 しかし、黒い封筒はいただけない。
 開けてみれば、何が起こるか分からない封筒は、朝起きたとき、厳重に警備されているはずの寝室、それも枕元に置いてあった。

「……魔塔は、もともと王弟だけが関係を築いていたはずだ。……当主が替わったという噂は、本当だったのか」

 しかも、国王が掴んでる情報によれば、新たな魔塔の主は、アベル・ミンティアであるという。
 そして、王国全土にすでに配られた結婚式への招待状。
 そこには、王都の中央神殿が記されていた。

 王国の英雄と、王国の防衛線辺境伯家の姫君との婚礼は、戦時中ではない今、あるいは王族のそれよりも盛大に行われるに違いない。

 口の端を歪めた国王は、黒い封筒を無造作に開く。
 周囲に家臣がいれば、あまりにも危険を顧みない行動を止めたかもしれないが、人払いをしたこの瞬間、国王の周囲には誰もいない。

 黒い封筒の中に入っていた、少し不釣り合いな白い便せんと瑠璃色の文字。
 それは、結婚式の招待状だ。

「魔塔に来いと申すか……」

 王都の中央神殿、そして魔塔。
 国王への、招待状には、二カ所の会場が記されていた。
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