破滅フラグから逃げたくて引きこもり聖女になったのに「たぶんこれも破滅ルートですよね?」

氷雨そら

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主人公は聖女候補

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 ✳︎ ✳︎ ✳︎

 結果、急きょ開催された徒競走では、身体強化を使ってもフローラに勝てなかった。

(フローラは今、身体強化使ってなかったよね?どんな体力してるの)

 息を弾ませながら入った教室は、まだ人がまばらだった。

(なんだか微妙に心臓まで痛い)

 先にゴールしていたフローラは、息を弾ませてもいない。これじゃだめだ、基礎体力を鍛えないと。騎士団の訓練に加えてもらおうか。それとも世界樹の塔のトレーニングルームで鍛えるか。
 そんなことを考えている私をフローラがじっと見つめてくる。

「あの、リアナ様の心臓」

「え?」

 急にフローラが私の胸に手のひらを当ててきた。内緒話でもするかのように、耳元に唇が寄せられる。

「どうして……そんなことになっているんですか」

「どうしたの急に」

 フローラの体から立ち上る光は柔らかくて暖かい。そうだった、今まで言動に騙されていたけれどこの子は聖女候補でヒロインなのだったわ。

 優しい蜂蜜色の瞳に見つめられると、不思議な気分になってくる。その瞳が、一瞬だけ七色に煌めいた気がした。
 私は固唾をのんで見守る。ゲーム通りなら、私とフローラはともに聖女候補として選ばれる。でも、最後に聖女になるのはフローラの方なわけで。呪いに加えて断罪は……いやだなぁ。

「そんな心臓じゃ本気で走れないじゃないですか!なにやってるんですか!」

「ん?」

「私、親友とは本気の戦いを望みます」

「な……なにを言っているの」

 その親友、たぶんマブダチと読む気がする。その友情は殴り合った後に芽生えるやつな気がする!

「私、ぜったいに聖女になります。そして……あなたを救って見せる」

(――――うれしいですし、本当に頼もしいです。でもでも、それは王家の呪いを解消するためにライアス様にいう台詞じゃなかったかな?!)

「だから……」

 この後に続く台詞は……そう、この時王太子ルートでは初めてフローラの瞳が七色に輝いて、聖女の片鱗を見せるのだった。

 ――――ずっとずっと一緒にいたい。あなたの隣で同じ景色を見ていたい。

 王立学園の教室で、窓の外を眺めながら、二人がする約束。このシーン、結構好きだったんだよなあ。初めてライアス王太子が微笑んだスチルも永久保存したいレベルだった。

(……え?!どうしよう。私まさか告白されちゃうの?!)

「ずっとずっと一緒にいたい」

「あの、フローラ」

 いまだかつてないくらい、頬に熱が集まってきてしまった。たぶん、ぱっと見てほかの人にもわかるくらい、私の顔は薔薇色に染まっていることだろう。

「わがライバルともあなたの隣で極限まで強くなりたい!!」

「お前たち、教室で何やってるんだよ……」

 甘酸っぱい二人の青春物語改め、手に汗握るライバル同士の熱い友情は、呆れた様子のライアス王太子によって中断された。

「こんなやつに首席奪われたとか、王国の恥だな。俺は……」

 やっ、そんなことないと思います。素晴らしい剣技でしたよ。入学試験の合計点、私と一点差だったらしいですよ?!裏から手を回したりしていませんよ私!

「そんなことないと思います。素晴らしい剣技でしたよ」

 私が思わず心の中で言っていた言葉を、フローラはサラリと言った。さすがヒロイン品質。でも、「手合わせ願いたい」って続くんでしょ?

「……じゃあ、俺と共に打倒リアナを目指そう」

 えっ、ライアス様、そんなこと言っちゃうんですか?!ゲームのエンディングの、ラスボス悪役令嬢討伐に舵きるのやめて欲しいです!

「それは素敵な提案です。早速放課後、作戦会議致しましょうか?」

「ふふっ。おもしろい奴だな。俺の周りにはいなかったタイプだ。じゃあ、放課後な」

 フローラの恋物語は王太子ルートがベースになっているのかもしれない。そう思ったけれど、これが二人の恋の始まりなのかは、とてもじゃないけど判別できなそうだった。

 ……でも、フローラってばライアス様の好感度のものさし「おもしろい奴」って言葉を引き出していながらなんとなく友情から進展しなさそう。
 私の予想はたぶん間違っていない気がした。


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