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兄と騎士の誓い
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「リアナ。昨日はあれからきちんと休めた?」
「ディオ様?」
騎士団の遠征でも、周りから遠巻きにされて浮いている私に、ディオ様はいつも声をかけてくれた。それは学園でも変わらないらしい。そのお気持ちだけで、生きていけそうです。
「ディオ!」
しかし、そんな天使のようなディオ様に、なぜか今日も兄が凄い勢いで噛みつきそうになっている。
兄、あなたは他人なんて興味ないって言うスタンスだったと記憶しているのですが?ディオ様にだけどうしてしまったのですか。
ま、まさか二人はすでにそんな関係に?!そんなわけないか。そうだったらいいのに。
「とりあえず、一発殴らせろ」
(ええええ?!どうしてそんな藪から棒に?!)
「分かった。フリードが気がすむまで好きにしろ」
(ええええ?!ディオ様までどうしちゃったんです?!)
まさか、ライバル設定がまだまだ継続しているんですか?!乙女ゲームだと思ってたのは実は少年漫画の世界だったと言うオチですか?
「私も参加したいです!」
(フローラ!ややこしくしないで!)
「――――くっ。いや、ディオが悪いわけじゃない。分かってはいるんだ」
(……からのナイスフォロー?)
「お前が辛い思いしてたのは、分かってるのにな。熱くなって悪かった。王家の噂が真実だったなんてな」
「フリード……いや、巻き込んでしまったのは全て俺の責任だ」
なんだか二人が熱く見つめ合っているように見える。エモいって言葉の意味、今初めて分かったかもしれない。
「リアナを助けるために、力を貸して欲しい」
「もちろんだ、フリード。君の協力が本当に心強いよ」
あれあれ?私についてのお話ですか。完全に蚊帳の外になっている気がします。どこからそのお話になりましたか?
「あの……二人とも、無茶したらダメなんですからね?」
振り返った二人は、揃ってなんだか複雑そうに微笑んでいる。
「リアナにだけは、言われたくない」
あ……兄?!ここまできて裏切りですか?!
「愛しいリアナが自重してくれるなら、俺も考えますよ?」
あの、愛しいって私の枕詞になったのでしょうか。責任感を超えてしまうので、多用は避けた方がいいと思います。
あまりにも絵になる二人に笑顔のまま迫られてしまい、私はこう言うしかなかった。
「あ、授業始まります。行かないと!」
二人を置いて駆け出す。何故かフローラも一緒に駆け出した。競争ではないんだよ?でも、絶対に負けたくはない!
全力で走り去る二人を見つめながら残された二人は顔を見合わせた。
「俺は18歳にまだなっていない。最終手段にしたいが、覚悟はできている。方法を調べてくれ、ディオ」
「フリード……本気か」
「可愛い妹に先に死なれるのだけは勘弁だ」
「ああ、俺だってリアナだけは救いたい。だが、リアナが泣くことは避けたい。フリードに何かあったら、号泣じゃすまなそうだ。必ず他の方法を見つけてみせる」
兄が覚悟を決めた人のする微笑みをディオ様に向けていたことを、私は知らない。
「ま、そちらも期待してるさ。あ、あと次の学期は首席、俺が頂くからな?」
「……それだけは負けられないな」
私の知らないところで、物語はまた新たなルートへと分岐していた。
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