僕らのトライアングル

気に入らない男

「おはよー」

ふわふわっとした声色の、小柄で華奢な『男子生徒』がクラスに入ってくる。

クラスに入る瞬間、否、学校の校門をくぐる瞬間、否、彼が家を出た瞬間から、周囲の視線は彼に集まる。

それは、小学生、幼稚園、保育園……の頃からそうだった。


親は多種多様なITサービスとパソコンプログラムの製品で国内ではほぼ独占状態にある大企業のSE。
全く彼に瓜二つで、サラサラな髪も、年齢より幼く見えるその美しい顔も、男女ともに惹きつけた。

何か変なフェロモンでも出ているのか、私の父親も先生も、彼の父親が授業参観や三者面談で来ると、目で追うのだ。



なぜ、父親の仕事を知っているかって！？

私の父親も母親も同じ会社だからよ！

私はそこの企業内保育所にいて、神蔵君とも幼馴染なんだから！！


なのに、いつもいっつも神蔵君は工藤と一緒！

ずーっと一緒！

あいつの親が入社して、あいつが保育所に来てからずうーっとね！



私だって幼馴染なのに、その他大勢と同じ扱い。


言っとくけど、私だってモテるんだから！
学園のアイドルなんだから！

人気読モなんだからね！

今度、女優デビューだってするんだから！
TVCMにだって出るんだから！

あの夢原愛子と共演なんだからね！



「ホームルームを始める。明日からいよいよ暁祭、今日は設営準備だ。常温保管できない食材は調理実習に運び入れたか、必要物品は不足ないかよく確認しておくように。」

うちのクラスは女装男装喫茶。
みんなで机といすを運び出す。


「あ～ん。重くてもてなぁい～！」

チラッと神蔵君を見るけど…


「ユウキ、大丈夫か？」

「大丈夫だよ！もうっ！」


さっさとあいつと行ってしまった。



気に入らない。気に入らない！！！



「あの、持ちましょうか？」


「だいじょうぶです。やっぱり自分で頑張らないとね（にっこり）」


「さすがカレンちゃん！」

「有名人なのに驕らない！」


私の周囲が私を褒める。崇める。
いいのよもっと崇めて。




学園一のアイドルの座は渡さない。
神蔵君も私の虜にしてやるんだから！

神蔵君みたいなエリート男子は私の隣こそふさわしいんだからね！



夕方、衣装の試着をみんなでした。





頬を膨らませて、ミニスカートのメイド服を着たあいつは……。







嘘でしょ？

許せない…！