僕らのトライアングル

私がママよ

私、夢原愛子は我ながら自分勝手な女である。

本名は市原藍子。


狸顔で小柄な割にグラマラスな、今でも20代で通用する、アイドル出身の女優。


若くして天涯孤独になり、何となく学校に行く気が起きずに出入りしていたグループに入り浸るようになり、その中で気軽に話しかけてきて接しやすかった中性的な顔立ちの先輩と付き合うようになって、彼の自立とともに家に転がり込み、それからはあっという間に関係をもって子どもができた。

最初は幸せだなって思ってたけど、お腹が大きくなるとともに不安になった。

自分で家におしかけて、それまでは子どもみたいな可愛い交際だったのに、自分からなし崩しにそういう関係にしてできた子どもだったクセして……、子どもが産まれる幸せよりも自分の体形が崩れていくのが嫌になったのよ。

子どもが産まれて、彼はなんとかいい仕事に就こうって頑張ってるみたいだったけどうまくいかない。
それもそうよね。

高校中退のヤンキーなんてね。

あーあー、私の人生ってこんななんだ。

私は可愛かったし、グループでちやほやされて嬉しかったけど、そのグループで中心にいてかっこよかった彼も、世間に出てしまえば底辺なのよね。


私くらい可愛ければもっといい人生送れてたんじゃないかしら。


アイツに子どもを任せている間にオシャレをして街をぶらぶらしていたら、スカウトされて…
子持ちだけど、幸いまだ籍も入ってなかったし、書置きして子どもをアイツに押し付けて事務所の寮にお引越し。

出産後にめちゃくちゃ頑張ったから、スタイルも殆どもとに戻っていたし、だーれも気付かない。

アイツも私の情報を売らなかったし、芸能人として私は登り詰めていった。


カッコいい芸能人の何人かとお付き合いもしたけど、結局、お金のこと以外は彼が一番良かったから結婚まではいかなかったわ。

彼は芸能人より美形だったのよねぇ。ヤンキー姿で損をしてたけど。


なんなら私のアイドル時代の仲間と比べても〇年に一度の美少女と比べてもはるかに可愛かったもの。




年を重ねて私も３０代。

まだドラマの主役は張れるけど、段々難しくなってくる。

同世代の芸能人は結婚出産をしてママタレとして一世風靡。


私も子どもがいるんだから、ママタレになれないかしら。


泣く泣く子どもと別れた設定にしたらダメかしら。


そうよね、それなら今まで黙っていても許してもらえそう。


家族に恵まれずに家族を求めた結果、私は子どもをとられて捨てられたの。


そして、運命の再会をテレビで演出したらどうかしら。




ふふっ、そうと決まればあの子と接触しないとね。

あの子はどんな子に育ってるかしら。
どっちに似ても可愛い子に決まってるわ。

芸能人にして、親子共演もいいわね。


あら、そしたら芸能人も通ってる学校にも転校させたいわね。



「マネージャー！ねえ！」


私はマネージャーを呼んだ。