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2年1学期
5話:休日デートは波乱の予感①
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「ふぁぁ、よく寝た」
寮の自室、俺はベッドの上で伸びをしながら目を擦りカレンダーを見る。久しぶりに何の予定もない休日。今日の行動は最近の諸々を鑑みてもう決めているんだよね。朝食を食べた後俺が談話室に向かうとお目当ての顔はすぐに見つかった。俺はソファに座っているクロードに後ろから声をかける。
「おはよクロード」
「おはよう、フレン。今日はいつもより髪が跳ねてるな……こっちに来てくれるか?」
クロードの大きな手のひらに後頭部を撫でられる感覚が気持ちよくて、うっかり二度寝しそうになる。だけど、今日はそうしているわけにはいかないので俺はその欲求に逆らって口を開く。
「ん、ありがと……。あのさクロード、俺そろそろ新しいヘアオイル欲しくてさ」
「そうか……なら買いに行くか?」
「うん。ついでにご飯も食べに行こ」
今日の俺の髪が大暴れしてたのはヘアオイルが切れてしまったから。今使ってるのは悪くないけどそろそろ新しいのが欲しかったからちょうどいいタイミングだった。それに、最近ゆっくりクロードと話す時間が取れなかったから、久々に一緒に出かけたくなったのだ。
「外出届は俺が用意しておくから、10時に玄関でいいか?」
「ありがと!久しぶりに街に出るし楽しみ」
うちの学校は全寮制で、普段は授業以外で外に出る機会がない。だから俺達にとって休日の外出はなかなかの娯楽で、思惑がなくても楽しみなものだった。
◇
久しぶりに出た街は相変わらず賑やかで、喧騒に満ちていた。
「目当てのやつは決めてるのか?」
「決めてない!前のとは違うのがいいかなってくらい」
休日の外出は私服が許可されている。制服じゃないクロードはいつもより少し大人びていて、背が高いと何でも似合っていいなぁって少し羨ましい。まあ、俺の服も自分で選んだお気に入りのやつだから見劣りはしないんだけどね。
「なら、昼を食べてから探すか。今ならまだ混んでないし午後からゆっくりできる」
「俺ガレット食べたい!目玉焼き乗ってるやつ」
「じゃああそこの角の店にしよう。前にフレンが食べて気に入ってたところ、確かあそこだよな」
「そうだっけ?クロード記憶力いいね。じゃあそこで」
今日に限らず、俺が覚えてないことまでクロードは覚えてるんだよね。優秀な人ってどこまで記憶力いいんだろう?
彼の案内で入った店内は言われてみれば確かに少し見覚えがある気がした。そのまま窓際の席に案内されてメニューを渡された時に、俺は若い女性の店員さんがクロードを見て頬を染めてるのを見逃さなかった。
「相変わらずクロードってかっこいいよね」
「えっ……急に何……を」
「さっきの店員さんクロードのことばっか見てたよ?よほど気に入られたんだね」
「なんだ……、たまたまじゃないか?あまり見ない顔だから珍しいとか」
「そっかなー?まあ、そういうことにしといてあげる」
クロードは否定したけど絶対そう言うことだと思うんだけどな。まあ、あんまりからかうと可哀想だし、俺はこの辺で切り上げることにする。
それから少しして、頼んだものがテーブルに運ばれてくる。俺がたっぷり悩んで選んだベーコンエッグガレットは卵の焼き具合が絶妙ですごく美味しかった。
「お腹いっぱい~!クロードのチーズのも美味しかったね」
「そうだな、シェア用の皿も貸してもらえたし、相変わらずいい店だった」
こうやって、お互い別々のメニューを頼んで少しずつ分けて食べられるから1人より2人で食べる方が俺は好きだ。
「他のメニューも美味しそうだったしまた来ようね!店の位置今度は俺も覚えたから」
「ああ」
海色の瞳が優しく笑う。それは初夏の休日にぴったりな穏やかな色をしていた。
◇
昼食選びと違って、ヘアオイル選びは難航を極めた。
「なんか、違うんだよね……、使用感とかツヤ感とか」
「フレンの髪質ならこっちの方が合うんじゃないか?」
ため息をつきながら試供品を棚に戻す俺にクロードが別の商品を手渡す。俺は受け取って早速手に取り少し試したけど、毛先がうまくまとまらなかった。
「ごめん、これも違うかも。別の店行ってもいい?」
「なら本屋の隣はどうだ?あそこなら品揃えもあるし、ここにはないものもある筈だ」
クロードが提案したのは最近できた大型のショップ。確かにその店ならもっといいのが見つかるかも。
「うん!そうする……あれ?」
次の店を決め、向かっている途中で靴先が何かにぶつかり俺は足を止めた。
「これ、落とし物かな?」
拾い上げたそれはクマのぬいぐるみで、綺麗なリボンが結んであった。毛並みも綺麗で、一目で大事にされてる事がわかる。俺は持ち主がいないか周囲を見渡したけれどそれらしい人は見つからない。
「俺が交番に届けてくるよ。フレンは先に行ってオイルを試しててくれ」
「いいの?ありがとう。じゃあお願い!」
ぬいぐるみをクロードに預けた俺は、一人で道を進んでいく。そして目的地である本屋の隣のヘア用品店に入ろうとしたその時――
「……フレン?」
本屋の方から俺の名を呼ぶ声が聞こえた。その声にもしかしてと思い、立ち止まって振り返るとすぐ後ろに見慣れたツートン前髪が立っていた。
「ルカ!街に来てたんだ、珍しいね?」
正直なところ、ルカが街に行くイメージがなかったから、俺がその新鮮な驚きを口に出すと彼は
「……本、探してた、フレンは?」
と隣の本屋を指差して答えた。へぇ、ルカって本読むタイプなんだ。
「俺はヘアオイル探し!今使ってるの切れちゃったから」
ルカからの問いかけに俺は事情を説明しつつ、少し跳ねている髪を摘んで彼に見せる。ルカはそれをしばらく見つめた後
「……俺も探す」
と、俺の後ろについてきた。どうやら彼は俺のヘアオイル探しを手伝ってくれる気になったらしい。
◇
「っ!?」
ルカの手伝いの申し出を、断る理由もないしとそのままにしていたのがまずかった。交番から帰ってきたクロードが店内に入ってきた途端、ルカの方から張り付くような魔力圧が発生し、店内に充満する。
(ルカ、まだこの間のクロードの言葉許してなかったんだ……)
俺はこの間の中庭でのことを思い出して息を飲んだ。日頃から邪竜ってキーワードに敏感なルカのことだ、初対面の時のクロードの言葉が胸に刺さって抜けてないんだろう。俺はできればルカとクロードにも仲良くなって欲しいんだけど、今はそれより2人の仲裁をする方が優先だった。
「……なんで、いる」
俺の肩をガッチリホールドしながら、不機嫌を露わにしたルカがクロードを睨みつける。深緑色の瞳は獲物を見る竜のようで、俺はかなり空気がピリピリしているのを感じた。
「それは俺の台詞だ。俺はフレンと朝から出かけいるだけだ。お前こそ急になんのつもりだ?」
「……フレンと、朝から……?」
対するクロードも、後輩に対するには少し強い口調で返している。クロードは、基本的に穏やかだからこれはルカの感情に引っ張られてるのかもしれない。
クロードの言葉に反応して、ルカの魔力圧が強まる。今回はこの前みたいな魔力暴走とは違うけど、魔力圧による重い空気に店内にいる他のお客さんも居心地悪そうにしていてこのままにはしておけない。俺はルカが落ち着くよう、彼の顔に手を添え
「ルカ、魔力抑えて。クロードは朝から俺に付き合って買い物してくれてるだけで今日はルカに嫌なこと言ってないでしょ?」
と言いながら彼の深緑色の瞳をじっと見つめた。
「う……」
俺がしばらくこうして宥めていたら、ルカが気まずそうに目を逸らす。だんだんと魔力圧がなくなっていくのが肌の感覚でわかった。
「うん、よくできたね。ルカ偉い」
俺がいつもの癖でルカの白黒の前髪を撫でると彼は嬉しそうに目を細めて俺の手に頬を擦り付けてくる。こうしてると可愛いんだけど、ルカはまだ邪竜って言葉や、人からの拒絶的な態度に反応して攻撃的になる癖が抜けないみたい。俺がもう少しうまくルカの心の棘を抜いてあげれたらいいんだけどまだ1ヶ月の付き合いじゃそこまでは難しいよね。
「じゃ、オイル試したいから、手どけて」
撫で終わった後、俺は本来の目的であるヘアオイル探しに戻るためルカに声をかける。ルカはまだ離れたくないみたいで少し抵抗したけど、催促するように俺がじっと見つめたらすぐに解放してくれた。
予期せぬ一悶着があったけど、結果的に協力者も増えたわけだし、いいオイルが見つかるといいな。
俺はたくさん商品が並んだ棚を見て中断していたオイル探しを再開した。
寮の自室、俺はベッドの上で伸びをしながら目を擦りカレンダーを見る。久しぶりに何の予定もない休日。今日の行動は最近の諸々を鑑みてもう決めているんだよね。朝食を食べた後俺が談話室に向かうとお目当ての顔はすぐに見つかった。俺はソファに座っているクロードに後ろから声をかける。
「おはよクロード」
「おはよう、フレン。今日はいつもより髪が跳ねてるな……こっちに来てくれるか?」
クロードの大きな手のひらに後頭部を撫でられる感覚が気持ちよくて、うっかり二度寝しそうになる。だけど、今日はそうしているわけにはいかないので俺はその欲求に逆らって口を開く。
「ん、ありがと……。あのさクロード、俺そろそろ新しいヘアオイル欲しくてさ」
「そうか……なら買いに行くか?」
「うん。ついでにご飯も食べに行こ」
今日の俺の髪が大暴れしてたのはヘアオイルが切れてしまったから。今使ってるのは悪くないけどそろそろ新しいのが欲しかったからちょうどいいタイミングだった。それに、最近ゆっくりクロードと話す時間が取れなかったから、久々に一緒に出かけたくなったのだ。
「外出届は俺が用意しておくから、10時に玄関でいいか?」
「ありがと!久しぶりに街に出るし楽しみ」
うちの学校は全寮制で、普段は授業以外で外に出る機会がない。だから俺達にとって休日の外出はなかなかの娯楽で、思惑がなくても楽しみなものだった。
◇
久しぶりに出た街は相変わらず賑やかで、喧騒に満ちていた。
「目当てのやつは決めてるのか?」
「決めてない!前のとは違うのがいいかなってくらい」
休日の外出は私服が許可されている。制服じゃないクロードはいつもより少し大人びていて、背が高いと何でも似合っていいなぁって少し羨ましい。まあ、俺の服も自分で選んだお気に入りのやつだから見劣りはしないんだけどね。
「なら、昼を食べてから探すか。今ならまだ混んでないし午後からゆっくりできる」
「俺ガレット食べたい!目玉焼き乗ってるやつ」
「じゃああそこの角の店にしよう。前にフレンが食べて気に入ってたところ、確かあそこだよな」
「そうだっけ?クロード記憶力いいね。じゃあそこで」
今日に限らず、俺が覚えてないことまでクロードは覚えてるんだよね。優秀な人ってどこまで記憶力いいんだろう?
彼の案内で入った店内は言われてみれば確かに少し見覚えがある気がした。そのまま窓際の席に案内されてメニューを渡された時に、俺は若い女性の店員さんがクロードを見て頬を染めてるのを見逃さなかった。
「相変わらずクロードってかっこいいよね」
「えっ……急に何……を」
「さっきの店員さんクロードのことばっか見てたよ?よほど気に入られたんだね」
「なんだ……、たまたまじゃないか?あまり見ない顔だから珍しいとか」
「そっかなー?まあ、そういうことにしといてあげる」
クロードは否定したけど絶対そう言うことだと思うんだけどな。まあ、あんまりからかうと可哀想だし、俺はこの辺で切り上げることにする。
それから少しして、頼んだものがテーブルに運ばれてくる。俺がたっぷり悩んで選んだベーコンエッグガレットは卵の焼き具合が絶妙ですごく美味しかった。
「お腹いっぱい~!クロードのチーズのも美味しかったね」
「そうだな、シェア用の皿も貸してもらえたし、相変わらずいい店だった」
こうやって、お互い別々のメニューを頼んで少しずつ分けて食べられるから1人より2人で食べる方が俺は好きだ。
「他のメニューも美味しそうだったしまた来ようね!店の位置今度は俺も覚えたから」
「ああ」
海色の瞳が優しく笑う。それは初夏の休日にぴったりな穏やかな色をしていた。
◇
昼食選びと違って、ヘアオイル選びは難航を極めた。
「なんか、違うんだよね……、使用感とかツヤ感とか」
「フレンの髪質ならこっちの方が合うんじゃないか?」
ため息をつきながら試供品を棚に戻す俺にクロードが別の商品を手渡す。俺は受け取って早速手に取り少し試したけど、毛先がうまくまとまらなかった。
「ごめん、これも違うかも。別の店行ってもいい?」
「なら本屋の隣はどうだ?あそこなら品揃えもあるし、ここにはないものもある筈だ」
クロードが提案したのは最近できた大型のショップ。確かにその店ならもっといいのが見つかるかも。
「うん!そうする……あれ?」
次の店を決め、向かっている途中で靴先が何かにぶつかり俺は足を止めた。
「これ、落とし物かな?」
拾い上げたそれはクマのぬいぐるみで、綺麗なリボンが結んであった。毛並みも綺麗で、一目で大事にされてる事がわかる。俺は持ち主がいないか周囲を見渡したけれどそれらしい人は見つからない。
「俺が交番に届けてくるよ。フレンは先に行ってオイルを試しててくれ」
「いいの?ありがとう。じゃあお願い!」
ぬいぐるみをクロードに預けた俺は、一人で道を進んでいく。そして目的地である本屋の隣のヘア用品店に入ろうとしたその時――
「……フレン?」
本屋の方から俺の名を呼ぶ声が聞こえた。その声にもしかしてと思い、立ち止まって振り返るとすぐ後ろに見慣れたツートン前髪が立っていた。
「ルカ!街に来てたんだ、珍しいね?」
正直なところ、ルカが街に行くイメージがなかったから、俺がその新鮮な驚きを口に出すと彼は
「……本、探してた、フレンは?」
と隣の本屋を指差して答えた。へぇ、ルカって本読むタイプなんだ。
「俺はヘアオイル探し!今使ってるの切れちゃったから」
ルカからの問いかけに俺は事情を説明しつつ、少し跳ねている髪を摘んで彼に見せる。ルカはそれをしばらく見つめた後
「……俺も探す」
と、俺の後ろについてきた。どうやら彼は俺のヘアオイル探しを手伝ってくれる気になったらしい。
◇
「っ!?」
ルカの手伝いの申し出を、断る理由もないしとそのままにしていたのがまずかった。交番から帰ってきたクロードが店内に入ってきた途端、ルカの方から張り付くような魔力圧が発生し、店内に充満する。
(ルカ、まだこの間のクロードの言葉許してなかったんだ……)
俺はこの間の中庭でのことを思い出して息を飲んだ。日頃から邪竜ってキーワードに敏感なルカのことだ、初対面の時のクロードの言葉が胸に刺さって抜けてないんだろう。俺はできればルカとクロードにも仲良くなって欲しいんだけど、今はそれより2人の仲裁をする方が優先だった。
「……なんで、いる」
俺の肩をガッチリホールドしながら、不機嫌を露わにしたルカがクロードを睨みつける。深緑色の瞳は獲物を見る竜のようで、俺はかなり空気がピリピリしているのを感じた。
「それは俺の台詞だ。俺はフレンと朝から出かけいるだけだ。お前こそ急になんのつもりだ?」
「……フレンと、朝から……?」
対するクロードも、後輩に対するには少し強い口調で返している。クロードは、基本的に穏やかだからこれはルカの感情に引っ張られてるのかもしれない。
クロードの言葉に反応して、ルカの魔力圧が強まる。今回はこの前みたいな魔力暴走とは違うけど、魔力圧による重い空気に店内にいる他のお客さんも居心地悪そうにしていてこのままにはしておけない。俺はルカが落ち着くよう、彼の顔に手を添え
「ルカ、魔力抑えて。クロードは朝から俺に付き合って買い物してくれてるだけで今日はルカに嫌なこと言ってないでしょ?」
と言いながら彼の深緑色の瞳をじっと見つめた。
「う……」
俺がしばらくこうして宥めていたら、ルカが気まずそうに目を逸らす。だんだんと魔力圧がなくなっていくのが肌の感覚でわかった。
「うん、よくできたね。ルカ偉い」
俺がいつもの癖でルカの白黒の前髪を撫でると彼は嬉しそうに目を細めて俺の手に頬を擦り付けてくる。こうしてると可愛いんだけど、ルカはまだ邪竜って言葉や、人からの拒絶的な態度に反応して攻撃的になる癖が抜けないみたい。俺がもう少しうまくルカの心の棘を抜いてあげれたらいいんだけどまだ1ヶ月の付き合いじゃそこまでは難しいよね。
「じゃ、オイル試したいから、手どけて」
撫で終わった後、俺は本来の目的であるヘアオイル探しに戻るためルカに声をかける。ルカはまだ離れたくないみたいで少し抵抗したけど、催促するように俺がじっと見つめたらすぐに解放してくれた。
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