穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ

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2年2学期

48話: お誕生日会にご招待③

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 たどり着いた人垣の隙間、俺の目に飛び込んだのは期待していた華やかな出し物とかではなく

「……え?」

大勢の綺麗な女性に囲まれて笑う真紅の瞳の男だった。

「ヴァンピールのジン様よ……今日も素敵」
「完璧な紳士だわ……私も挨拶したーい」

 俺の中でのそれとだいぶ違う評価を受けて注目を集めている男、ジン。吸血鬼である事を隠して一般にはヴァンピールと名乗っているのは本当らしい。
 彼は誕生日会に相応しい正装に身を固め、上品な仕草で女の子の手を取っていた。

「なんでジンがここに……?」

 いや、理由なんて考えてる暇はない。あいつに見つかったら最後、ヘラヘラとした長話に付き合わされた挙句精神が消耗する。せっかく楽しい誕生日会なのにそんなのはあんまりだ。俺は素早く踵を返しその場からできるだけ遠ざかろうと思ったけれど

「あれ……フレン?やっぱりそうだよね?こんなところで会えるだなんて俺ついてるなぁ」

俺に気がついたジンがエスコートしていた淑女達に優雅に別れを告げてこちらに歩いてくる。脚が長い分、距離を詰めるのも早い。俺はこんな場所で走るわけにもいかないから、半ば諦めてその手が腰に絡みついてくる事を覚悟したけど

「手癖悪りぃな、本当に招待客か?」

ジンの手が俺に触れる前に、カイがそれを制止する。

「君誰?俺とこの子は仲良しだから大丈夫」

 ワーウルフでがっしりとした体格のカイに臆すどころか、余裕のある表情で笑うジンに、俺がどの口が……と言う前に

「紳士ってのは逃げてる相手に勝手に手ぇ出すのかよ」

とカイがジンの手首を掴んで力を込める。

「いたた……ん?ああ、君もしかして……」

 2人が何を言ってるのかはわからないけど、空気が最悪に悪いことだけは俺にもわかった。

「2人とも、ちょっとこっち……」

 このままだとまずそうだと思った俺はなるべく人のいない方向へ彼らを引っ張る。頼むから喧嘩だけはしないでほしい……そんな俺の思惑をよそに、背後では絡み合う金と真紅の視線が静かに火花を散らしていた。

 ◇

「そろそろ離してくれないかなぁ……?俺基本的に可愛い子の手以外握りたくないんだよね。」

 パーティ会場の内、人気のないテーブルの前で、開口一番、ヘラヘラしながら手を振るジンに俺は違和感を覚える。いつもジンは、あのルカの攻撃すら余裕でかわしてるのになんでカイの手は振り解けないんだろう。

「気持ち悪りぃこと言うんじゃねぇよ……てかてめえ本当にヴァンピールか……?」

 カイの金色の瞳が鋭くなり、真紅の瞳を貫く。

「男に見つめられても全然嬉しく無いんだけど……君、随分と鼻がいいみたいだね?」

 さっきから挑発じみた言葉遣いをするジンに俺はハラハラした。カイは短気だから喧嘩になったらどうしよう。俺は自分がきっかけでクリスフィアさんの誕生日会を壊してしまうのが怖くてカイの方を見つめる。

「……心配すんな、別に何もしねーよ」

 だけど、これだけ煽られたのにカイは俺に静かな声でこう伝えてくれる。まるで安心させてくれようとしてるみたい……なんて思ったのは気のせい?

「さっきから何狙ってんのか知らねぇけど、見え見えの挑発に乗るほどガキじゃねぇんだわ」
「見かけより冷静なんだ……意外だなぁ」

 煽るような笑顔を浮かべ、カイの言葉に答えるジンの血のような真っ赤な瞳が俺を見つめる。

「ねぇ、フレンからも言ってくれない?俺そろそろ腕疲れてきちゃった」
「おま……まさか……知り合いか?」

 ジンが俺の名前を知ってるのに驚いて、カイが問いかけてくる。一応知り合いではあるけど、説明が難しいなんとも言えない関係に悩んだ俺は

「他校交流の時にナンパされてから何度か絡まれてる感じ」
「まじの不審者じゃねぇか……」

と、およそ人の紹介としてよろしくはない経緯を端的に説明した。

「えー?そんな言い方傷つくなぁ?俺達2回もデートもしたのに」
「でっ……!?」

 ジンの言葉にカイが目を見開く。

「適当なこと言って……どっちも無理やりみたいなもんじゃん」
「でもフレン、今日だってほら……」

 俺が捻じ曲げられた事実を訂正してる最中に、ジンの視線が俺の頭に向かう。

「……っ、これは!物に罪は無いから使ってるだけ!!」
「気に入ってくれたんだ?嬉しいな」

 どんな状況でも嬉しそうにするジンのメンタルの強さがどうなってるのか知りたい。

 だんだん話の収拾がつかなくなってきて焦ってきた俺の後ろから透き通った声が聞こえる。

「楽しんでくださるのは嬉しいけれど、挨拶も無しなのはいかがなものかしら」

 振り返った先には真っ白な雪のような少女、今日の主役のクリスフィアさんが立っていた。

「これは失礼しました……主賓自らお出迎えとは」

 カイの手からいつの間に抜け出したのか、ジンが彼女の前に立ち恭しくお辞儀をする。

「挨拶はあちらで聞くわ。それではね、フレンさん」

「あ、ありがとう……ございます」

 思いがけない優雅な助け舟に、俺はぎこちなくお礼を返す。遠ざかる白い影を見送って俺はほっと胸を撫で下ろした。
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