穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ

文字の大きさ
47 / 76
2年2学期

47話: お誕生日会にご招待②

しおりを挟む
 レイラさんに腕を引かれ、俺達は誕生日会の会場の中心にある一際煌びやかなテーブルの前に連れてこられた。

「お嬢様、ご紹介いたします。私の弟のカイとその友人フレンです。以後お見知り置きを」

 レイラさんが恭しくお辞儀するのに合わせ俺とカイもそれに続く。

「レイラ、ありがとう。私はクリスフィア。カイさん、フレンさん、どうか楽しんでいってね」

 (これが、レイラさんの仕えてるお嬢様……)

 俺たちに労いの言葉をかけたのは俺より頭一つ分小さなとても綺麗な女の子だった。言葉遣いは大人っぽいけどきっと年下だろう。雪のように真っ白で長い髪の毛は春の日差しを受けてキラキラしていた。思わず見惚れていたら、彼女がテーブルからマカロンを取り分け俺に差し出してくれる。

「ありがとうございます。クリスフィアさん」
「いいのよ。ねぇ、フレンさん、早速だけれど、よかったら私とお話ししてくださらない?」

 そう言って笑いかけるクリスフィアさんのお言葉に甘え、俺は近くの椅子に腰掛けた。

「お嬢様とフレン君が並んでお話ししてる……天国の光景……?可愛すぎる……最高」
「姉貴……まさかこのためにあいつ呼んだんじゃねぇよな?」

 少し離れたところでカイとレイラさんが何か話しているけれど、パーティ会場のざわめきでよく聞こえない。俺はクリスフィアさんに勧められた紅茶で喉を潤しながら会話と共に甘いマカロンを味わった。

 ◇

「フレンさんのことは前からレイラに聞いて気になってたの」
「レイラさんから?どんな話を……」

 ボディーガードってお嬢様に後輩の話とかするんだ……確かに仕事中ずっと無言なのも気まずそうだしそういうものなのかも?

「とても可愛らしい方だって聞いて……私も一度会ってみたいなと思っていたのよ。」

 なるほどそういうことか。レイラさんは俺の事を毎度可愛いって言ってくれるからその延長線上でクリスフィアさんにも話してるんだろう。

「ねえ、フレンさん……もし良ければ答えてもらえたら嬉しいのだけど」

 彼女が自身の長い髪を指に絡めながら小さな声で呟く。

「私もよく、お人形に喩えられたりするのだけど……たまにそれが、少し疲れるというか……フレンさんはそういう時、良くない気持ちになったりするは事ない……かしら?」
「……それは」

 お嬢様らしく、上品で選ばれた言葉だったけれど俺はその中に込められた気持ちに気がつく

「俺は、自分の事を気に入ってるので基本的には嬉しいですけど、それでトラブルに巻き込まれるのはちょっと……辛いですね」

 魅力的な容姿は時に人との距離を無遠慮に壊す材料になる。前にレイラさんと出かけた時のナンパもそうだ。クリスフィアさんはお嬢様だからああいう奴らに声をかけられたりはあまりないだろうけど、きっと彼女には彼女なりの苦労がある。
 クリスフィアさんの問いかけから、俺はレイラさんに招待された理由がなんとなくわかった気がした。そのまま普段は少し話しずらい事を話題に初対面にしては長く話し込んでしまった。

「変な事を聞いてごめんなさいね。お話しできてよかったわ。ありがとう」
「いえ、俺も話せてよかったです」

 紅茶を飲み干してカップが殻になる。丁度いいタイミングなので俺は挨拶をして席を立った。

「あら……その髪飾り……」

 立ち上がった際に髪が揺れたのだろう。少し驚いたような彼女の目を見て

「これがどうかされましたか?」

俺は首を傾げた。

「……いいえ、なんでも。今日はありがとう。いい誕生日になったわ。また仲良くしてくれたら嬉しい」

 けれどクリスフィアさんはそれには答えず、綺麗に笑って俺を見送った。彼女の白い髪が風に舞い上がり天使の羽のようだと、そう思った。

 ◇

「フレン君ありがとね!私はお嬢様の側を離れられないけど、自由に楽しんでいって!……カイあんたさっき言ったことちゃんとわかってるでしょうね」
「っせぇな、何度も言うなよ、さっさと仕事戻れ!」

 レイラさんに勧められ俺とカイは会場を見て回ることにした。
 入った時から思ってたけどこの会場かなり広い。それに細部まで綺麗に飾り付けられていて歩いてるだけで楽しい。

「わぁ、カイ見て!あそこのケーキ虹みたい!」
「あ?どれだよ……お前さっきから忙しなさすぎんだろ」

 俺はパステルカラーのグラデーションが美しいケーキが目に止まり、取り皿に盛り付けてもらう。

「美味しい……!えーこの青いところ何味だろ?不思議な味~」
「食いながら喋んな……リスかよお前は……」

 果物ではない甘い味が広がる。食べながら分析をするけど、何が入ってるのか全然わかんない。

「はい!カイはなんだと思う?」
「むぐっ……は?お前これ間接キ……」

 真相を求めるため俺は隣でぶつぶつ言ってたカイの口にケーキを突っ込んだ。ちゃんと取り分け用のフォークを使ったんだけど、カイは突然でびっくりしたのか顔を真っ赤にしながらそれを飲み込み

「す……菫じゃねぇの?知らねえけど」

とそっぽを向く。あ、今のは無理やりすぎたかも……怒らせちゃったかな?流石にちょっと申し訳なくなった俺は

「確かにそうかも……ね、もしかして怒った?飲み物とってくる?」
「別に……怒ってねえよ。はぐれたらだりぃから勝手にどっか行くなっての」

少し様子を伺いつつカイから距離を取ろうとしたけど返ってきた返事はこんな感じで特に機嫌が悪くはなってないみたい。怒ってないなら良かった。カイの言葉にほっとして胸を撫で下ろしたところで、俺の耳に突然女の子達の黄色い歓声が飛び込んでくる。

「人だかりできてる!なんだろ?出し物とか?」
「っおい、言った側からガキかお前は……」

 賑やかな人だかりに俄然興味を惹かれた俺は人の集まる方向に駆け寄る。こんな盛大なパーティだからきっと出し物も素敵に違いない。見逃すのは勿体無いもんね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

先輩たちの心の声に翻弄されています!

七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。 ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。 最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。 乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。 見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。 **** 三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。 ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は未定 ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い ・本格的に嫌われ始めるのは2章から

α主人公の友人モブαのはずが、なぜか俺が迫られている。

宵のうさぎ
BL
 異世界に転生したと思ったら、オメガバースの世界でした。  しかも、どうやらここは前世の姉ちゃんが読んでいたBL漫画の世界らしい。  漫画の主人公であるハイスぺアルファ・レオンの友人モブアルファ・カイルとして過ごしていたはずなのに、なぜか俺が迫られている。 「カイル、君の為なら僕は全てを捨てられる」  え、後天的Ω?ビッチング!? 「カイル、僕を君のオメガにしてくれ」  この小説は主人公攻め、受けのビッチング(後天的Ω)の要素が含まれていますのでご注意を!  騎士団長子息モブアルファ×原作主人公アルファ(後天的Ωになる)

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

クールな義兄の愛が重すぎる ~有能なおにいさまに次期当主の座を譲ったら、求婚されてしまいました~

槿 資紀
BL
イェント公爵令息のリエル・シャイデンは、生まれたときから虚弱体質を抱えていた。 公爵家の当主を継ぐ日まで生きていられるか分からないと、どの医師も口を揃えて言うほどだった。 そのため、リエルの代わりに当主を継ぐべく、分家筋から養子をとることになった。そうしてリエルの前に表れたのがアウレールだった。 アウレールはリエルに献身的に寄り添い、懸命の看病にあたった。 その甲斐あって、リエルは奇跡の回復を果たした。 そして、リエルは、誰よりも自分の生存を諦めなかった義兄の虜になった。 義兄は容姿も能力も完全無欠で、公爵家の次期当主として文句のつけようがない逸材だった。 そんな義兄に憧れ、その後を追って、難関の王立学院に合格を果たしたリエルだったが、入学直前のある日、現公爵の父に「跡継ぎをアウレールからお前に戻す」と告げられ――――。 完璧な義兄×虚弱受け すれ違いラブロマンス

処理中です...