2 / 4
2
しおりを挟む
市場に通うようになってから、私の日常は少しずつ色づいていった。侯爵家の中では相変わらず地味なクラリスだけれど、街では、私も一人の人間として扱われる。それが何よりも嬉しかった。
ある日のこと。いつものように市場を歩いていると、賑やかな通りの片隅で、小さな人だかりができているのが見えた。何だろうと思って近づいてみたら、一人の老人が、道端に倒れている。
「大丈夫ですか!?おじい様!」
思わず、駆け寄っていた。周りの人たちは、ただ遠巻きに見ているだけで、誰も助けようとしない。私は、震える手で老人の体を支え起こそうとしたけれど、思ったよりもずっと体が重くて、なかなか持ち上がらない。
「すみません……足がもつれてしまって」
老人は、苦しそうに顔を歪めていた。顔色はあまり良くないみたい。私は、どうしたらいいか一瞬戸惑ったけれど、すぐに決心した。
「私にお任せください!少しだけ、我慢してくださいね」
私は、老人の腕を自分の肩に回し、ゆっくりと、本当にゆっくりと立ち上がらせた。市場の人混みを避けて、近くの日陰まで連れて行く。
「こちらで少し休みましょう。何か飲み物でも買ってきましょうか?」
老人は、息を整えながら、私の顔をじっと見つめた。その眼差しは、どこか澄んでいて、優しくて……。あれ?こんなおじいさん、市場でよく見かける人たちとは、ちょっと違う気がする。清潔な身なりに、上品な話し方。もしかして、どこかの屋敷の使用人さん、とか?
「いえ、大丈夫です、お嬢さん。お優しいお心遣い、痛み入ります」
老人は、深々と頭を下げた。その動作が、どこか洗練されている。
「でも、お一人で大丈夫ですか?誰か、お迎えに来たりはしないんですか?」
私が尋ねると、老人は困ったように笑った。
「いや、私は一人暮らしでね。散歩中に、うっかり転んでしまったんだ」
なんだか、本当かなって疑ってしまったけれど、それ以上は聞かなかった。
「では、少し休まれたら、お気をつけてお帰りくださいね」
そう言って、私は老人のそばを離れようとした。その時、老人が私を呼び止めたの。
「お嬢さん、お名前は?何か、お礼をしたいのですが」
「いえ、お礼なんて結構です。困っている方を放っておけないのは、人として当然のことですから」
私はそう答えて、軽く頭を下げた。でも、老人は諦めないみたい。
「だが、それでは私の気が済まぬ。せめて、これを受け取ってくれないか」
老人は、懐から小さな袋を取り出した。中には、キラキラと輝くコインが何枚か入っている。
「いいえ!本当に結構です!」
私は慌てて断った。見ず知らずの人からお金をもらうなんて、そんなことはできない。
「だが……」
「もし本当に感謝してくださるなら、またお元気な姿で、この市場でお会いしましょう。それが、私にとって一番嬉しいお礼です」
私が笑顔でそう言うと、老人は少し驚いたような顔をした後、ふっと穏やかに微笑んだ。
「なるほど……。お嬢さんは、本当に変わった方だ。しかし、心が洗われる思いがします。そうか、それが一番の礼か。では、また会えることを楽しみにしていますよ」
老人はそう言って、ゆっくりと立ち上がった。私がお手伝いしましょうか、と声をかけると、「いや、もう大丈夫」と力強く答えてくれた。そして、深々と頭を下げて、人混みの中に消えていった。
その日から数日後。私はまた市場へ来ていた。目的は、最近見つけた美味しいパン屋さんに行くこと。焼きたてのパンの匂いに誘われて、お店の前で列に並んでいると、不意に声をかけられた。
「やあ、お嬢さん。また会えたな」
振り返ると、そこにいたのは、先日助けた老人だった。彼は、前回よりもずっと元気そうな顔をしていて、私の顔を見るなりにこやかに微笑んだ。
「おじい様!お元気そうで良かったです!」
私は心から安堵した。あの時、ちゃんと助けられたんだって、嬉しくなった。
「君のおかげだ。本当にありがとう」
そう言って、老人は私の隣に並んだ。そして、私に話しかけてきたの。
「いつも、この市場に来るのかい?」
「はい。たまに、気分転換に」
「ふむ。侯爵家のお嬢さんにしては、珍しいな」
え?侯爵家?どうしてこのおじいさんが、私の身分を知っているんだろう?私は、フードを深くかぶっていたし、誰にも正体を明かしていないはずなのに。
「あの……どうして、私のことを……?」
私の問いに、老人は楽しそうに笑った。
「ふふ、まあ、この私にも、色々と情報が入ってくるのだよ」
一体この人は何者なんだろう?ただの老人じゃない。そう直感した。でも、彼の瞳はとても優しくて、警戒する気持ちよりも、不思議な好奇心が湧いてきた。
それからも、老人は、私が市場に来るたびに、どこからともなく現れるようになった。私たちは、パン屋の前のベンチに座って、色々な話をした。私は、今まで誰にも話せなかった、心の奥底にしまっていた気持ちを、彼に打ち明けることもあった。侯爵家での孤独な生活、病弱な体、婚約破棄されたこと……。彼は、ただ静かに耳を傾けてくれた。
「君は、本当に聡明な女性だ。そして、何よりも優しい。そのような君を理解できない男は、よほど愚か者なのだろうな」
エルマー様のことを話した時、老人はそう言ってくれた。誰かに、こんなに真っ直ぐに肯定されたのは、生まれて初めてのことだった。彼の言葉は、私の心をじんわりと温めてくれた。
老人は、とても博識だった。世界の歴史、各国の文化、果ては天文学のことまで、何でも知っていた。彼の話を聞いていると、まるで新しい世界が目の前に広がるようだった。私は、彼の話に夢中になった。そして、私自身も、今まで学んできた知識や、本で読んだ物語について、彼に話すようになった。
「クラリス嬢は、本当に素晴らしい教養の持ち主だ。私が知らないことも、たくさん知っている」
老人は、いつもそう言って、私の話に真剣に耳を傾けてくれた。彼の隣にいると、私は自分が侯爵家の地味な長女だということを忘れることができた。ただの一人の人間として、彼と語り合える。それが、本当に心地よかった。
私自身も、少しずつ変わっていった。以前は、常にうつむき加減だったけれど、最近は顔を上げて歩くことが増えた。心なしか、表情も明るくなったと、たまに侯爵家で会う使用人たちに言われるようになった。
「クラリス様、最近、なんだかお顔が明るくなりましたね」
そんな言葉を聞くたびに、私の心は温かくなった。これも、きっとあのおじいさんのおかげだ。
だけど、一つだけ、気がかりなことがあった。このおじいさんが一体何者なのか、いまだに分からなかったのだ。彼は自分のことはほとんど話さない。いつも「ただの隠居暮らしの老人だよ」と笑ってごまかすだけ。
でも、彼の言葉の端々からは、尋常ではない知性と、ある種の威厳が感じられた。
私は、彼に淡い恋心を抱き始めていたけれど、この関係がどこへ向かうのか、不安でもあった。彼は、いつか私の前から消えてしまうんじゃないか。そんなことを考えて、胸が締め付けられる夜もあった。
それでも、私は彼に会うのが楽しみだった。彼との時間は、私にとってかけがえのないものになっていたから。この秘密の交流が、いつまでも続けばいいのに。私は、そう願っていた。
ある日のこと。いつものように市場を歩いていると、賑やかな通りの片隅で、小さな人だかりができているのが見えた。何だろうと思って近づいてみたら、一人の老人が、道端に倒れている。
「大丈夫ですか!?おじい様!」
思わず、駆け寄っていた。周りの人たちは、ただ遠巻きに見ているだけで、誰も助けようとしない。私は、震える手で老人の体を支え起こそうとしたけれど、思ったよりもずっと体が重くて、なかなか持ち上がらない。
「すみません……足がもつれてしまって」
老人は、苦しそうに顔を歪めていた。顔色はあまり良くないみたい。私は、どうしたらいいか一瞬戸惑ったけれど、すぐに決心した。
「私にお任せください!少しだけ、我慢してくださいね」
私は、老人の腕を自分の肩に回し、ゆっくりと、本当にゆっくりと立ち上がらせた。市場の人混みを避けて、近くの日陰まで連れて行く。
「こちらで少し休みましょう。何か飲み物でも買ってきましょうか?」
老人は、息を整えながら、私の顔をじっと見つめた。その眼差しは、どこか澄んでいて、優しくて……。あれ?こんなおじいさん、市場でよく見かける人たちとは、ちょっと違う気がする。清潔な身なりに、上品な話し方。もしかして、どこかの屋敷の使用人さん、とか?
「いえ、大丈夫です、お嬢さん。お優しいお心遣い、痛み入ります」
老人は、深々と頭を下げた。その動作が、どこか洗練されている。
「でも、お一人で大丈夫ですか?誰か、お迎えに来たりはしないんですか?」
私が尋ねると、老人は困ったように笑った。
「いや、私は一人暮らしでね。散歩中に、うっかり転んでしまったんだ」
なんだか、本当かなって疑ってしまったけれど、それ以上は聞かなかった。
「では、少し休まれたら、お気をつけてお帰りくださいね」
そう言って、私は老人のそばを離れようとした。その時、老人が私を呼び止めたの。
「お嬢さん、お名前は?何か、お礼をしたいのですが」
「いえ、お礼なんて結構です。困っている方を放っておけないのは、人として当然のことですから」
私はそう答えて、軽く頭を下げた。でも、老人は諦めないみたい。
「だが、それでは私の気が済まぬ。せめて、これを受け取ってくれないか」
老人は、懐から小さな袋を取り出した。中には、キラキラと輝くコインが何枚か入っている。
「いいえ!本当に結構です!」
私は慌てて断った。見ず知らずの人からお金をもらうなんて、そんなことはできない。
「だが……」
「もし本当に感謝してくださるなら、またお元気な姿で、この市場でお会いしましょう。それが、私にとって一番嬉しいお礼です」
私が笑顔でそう言うと、老人は少し驚いたような顔をした後、ふっと穏やかに微笑んだ。
「なるほど……。お嬢さんは、本当に変わった方だ。しかし、心が洗われる思いがします。そうか、それが一番の礼か。では、また会えることを楽しみにしていますよ」
老人はそう言って、ゆっくりと立ち上がった。私がお手伝いしましょうか、と声をかけると、「いや、もう大丈夫」と力強く答えてくれた。そして、深々と頭を下げて、人混みの中に消えていった。
その日から数日後。私はまた市場へ来ていた。目的は、最近見つけた美味しいパン屋さんに行くこと。焼きたてのパンの匂いに誘われて、お店の前で列に並んでいると、不意に声をかけられた。
「やあ、お嬢さん。また会えたな」
振り返ると、そこにいたのは、先日助けた老人だった。彼は、前回よりもずっと元気そうな顔をしていて、私の顔を見るなりにこやかに微笑んだ。
「おじい様!お元気そうで良かったです!」
私は心から安堵した。あの時、ちゃんと助けられたんだって、嬉しくなった。
「君のおかげだ。本当にありがとう」
そう言って、老人は私の隣に並んだ。そして、私に話しかけてきたの。
「いつも、この市場に来るのかい?」
「はい。たまに、気分転換に」
「ふむ。侯爵家のお嬢さんにしては、珍しいな」
え?侯爵家?どうしてこのおじいさんが、私の身分を知っているんだろう?私は、フードを深くかぶっていたし、誰にも正体を明かしていないはずなのに。
「あの……どうして、私のことを……?」
私の問いに、老人は楽しそうに笑った。
「ふふ、まあ、この私にも、色々と情報が入ってくるのだよ」
一体この人は何者なんだろう?ただの老人じゃない。そう直感した。でも、彼の瞳はとても優しくて、警戒する気持ちよりも、不思議な好奇心が湧いてきた。
それからも、老人は、私が市場に来るたびに、どこからともなく現れるようになった。私たちは、パン屋の前のベンチに座って、色々な話をした。私は、今まで誰にも話せなかった、心の奥底にしまっていた気持ちを、彼に打ち明けることもあった。侯爵家での孤独な生活、病弱な体、婚約破棄されたこと……。彼は、ただ静かに耳を傾けてくれた。
「君は、本当に聡明な女性だ。そして、何よりも優しい。そのような君を理解できない男は、よほど愚か者なのだろうな」
エルマー様のことを話した時、老人はそう言ってくれた。誰かに、こんなに真っ直ぐに肯定されたのは、生まれて初めてのことだった。彼の言葉は、私の心をじんわりと温めてくれた。
老人は、とても博識だった。世界の歴史、各国の文化、果ては天文学のことまで、何でも知っていた。彼の話を聞いていると、まるで新しい世界が目の前に広がるようだった。私は、彼の話に夢中になった。そして、私自身も、今まで学んできた知識や、本で読んだ物語について、彼に話すようになった。
「クラリス嬢は、本当に素晴らしい教養の持ち主だ。私が知らないことも、たくさん知っている」
老人は、いつもそう言って、私の話に真剣に耳を傾けてくれた。彼の隣にいると、私は自分が侯爵家の地味な長女だということを忘れることができた。ただの一人の人間として、彼と語り合える。それが、本当に心地よかった。
私自身も、少しずつ変わっていった。以前は、常にうつむき加減だったけれど、最近は顔を上げて歩くことが増えた。心なしか、表情も明るくなったと、たまに侯爵家で会う使用人たちに言われるようになった。
「クラリス様、最近、なんだかお顔が明るくなりましたね」
そんな言葉を聞くたびに、私の心は温かくなった。これも、きっとあのおじいさんのおかげだ。
だけど、一つだけ、気がかりなことがあった。このおじいさんが一体何者なのか、いまだに分からなかったのだ。彼は自分のことはほとんど話さない。いつも「ただの隠居暮らしの老人だよ」と笑ってごまかすだけ。
でも、彼の言葉の端々からは、尋常ではない知性と、ある種の威厳が感じられた。
私は、彼に淡い恋心を抱き始めていたけれど、この関係がどこへ向かうのか、不安でもあった。彼は、いつか私の前から消えてしまうんじゃないか。そんなことを考えて、胸が締め付けられる夜もあった。
それでも、私は彼に会うのが楽しみだった。彼との時間は、私にとってかけがえのないものになっていたから。この秘密の交流が、いつまでも続けばいいのに。私は、そう願っていた。
64
あなたにおすすめの小説
冷徹公爵様は、捨てられた私が『治癒』するまで離してくれません
咲月ねむと
恋愛
聖女候補だったエルナは、「魔力がない」という理由で婚約破棄され、実家からも追放される。厄介払いとして嫁がされたのは、国境を守る「冷徹公爵」ジークハルトのもと。
「氷の彫像」と恐れられる彼は、実は強大すぎる魔力のせいで常に高熱と不眠に苛まれていた。しかし、魔力がないエルナが触れると、なぜか彼の魔力が中和され、安眠できることが判明!
「君がいないと眠れない」と、毎晩抱き枕にされるうちに、冷徹だったはずの彼は甘々な過保護夫に変貌していき……?
追放された悪役令嬢、辺境で植物魔法に目覚める。銀狼領主の溺愛と精霊の加護で幸せスローライフ!〜真の聖女は私でした〜
黒崎隼人
恋愛
「王国の害悪」として婚約破棄され、魔物が棲む最果ての地『魔狼の森』へ追放された悪役令嬢リリア。
しかし、彼女には前世の記憶と、ゲーム知識、そして植物を癒やし育てる不思議な力があった!
不毛の地をハーブ園に変え、精霊と友達になり、スローライフを満喫しようとするリリア。
そんな彼女を待っていたのは、冷徹と噂される銀狼の獣人領主・カイルとの出会いだった。
「お前は、俺の宝だ」
寡黙なカイルの不器用な優しさと、とろけるような溺愛に包まれて、リリアは本当の幸せを見つけていく。
一方、リリアを追放した王子と偽聖女には、破滅の足音が迫っていて……?
植物魔法で辺境を開拓し、獣人領主に愛される、大逆転ハッピーエンドストーリー!
婚約破棄された令嬢は氷の公爵に拾われ、気づけば溺愛されていました~見下してきたあなた、後悔してももう遅いわ~
exdonuts
恋愛
婚約者である王太子に理不尽な罪をなすりつけられ、婚約破棄された公爵令嬢レティシア。
家族にも見放され、絶望の淵にいた彼女の手を取ったのは「氷の公爵」と呼ばれる冷徹な青年・アランだった。
愛を知らずに生きてきた彼の優しさが、傷ついたレティシアの心を少しずつ溶かしていく。
一方、過去の悪行が暴かれ始めた王太子とその取り巻きたち。
ざまぁが爽快、愛が深く、運命が巡る。
涙と笑顔の“溺愛ざまぁ”ロマンス。
『婚約破棄された公爵令嬢は、線を引く』――戻れない場所で、判断する席に座りました
鷹 綾
恋愛
では、アルファポリス掲載用・完結作品として最適な内容紹介を書きます。
※ネタバレなし/静かな強さ重視/女子読者向け最適化済みです。
---
内容紹介
婚約者から一方的に婚約を破棄された、公爵令嬢エヴァリーナ・フォン・クロイツ。
感情的な復讐も、涙ながらの弁明もしない彼女が選んだのは――
**「線を引くこと」**だった。
誰を受け入れ、誰を拒むのか。
例外を作らず、条件を曖昧にせず、責任から逃げない。
静かに、しかし確実に引かれたその線は、王都の秩序そのものを変えていく。
期待だけで近づく者は去り、
覚悟を持つ者だけが残る。
重くなる席。
晒される判断。
分けられない責任。
それでもエヴァリーナは、
選ばれる立場ではなく、選び続ける席に座り続ける。
これは、誰かを打ち負かすための物語ではない。
戻れない線の先で、覚悟を引き受けた一人の女性の物語。
婚約破棄から始まる、
静かで冷静な“ざまぁ”と、
自立した公爵令嬢の決断の物語、ここに完結。
---
参考:一行キャッチ(任意)
「復讐しない。感情に溺れない。ただ、線を引く。」
「選ばれなかった令嬢が、選ぶ側に立つまで。」
「これは恋愛ではなく、覚悟の物語。」
---
もしご希望なら、次に
タグ(アルファポリス最適化)
完結作品として強い冒頭注意文(作者コメント)
表紙向けキャッチコピー(10〜20文字)
もすぐ出せます。
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
「やはり鍛えることは、大切だな」
イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」
その日、一つのお見合いがあった。
ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。
クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。
そして互いに挨拶を交わすその場にて。
ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。
けれども……――。
「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」
婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。
ムラサメ
恋愛
「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」
婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。
泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。
「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」
汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。
「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。
一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。
自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。
ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。
「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」
圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる