「婚約破棄だ」と叫ぶ殿下、国の実務は私ですが大丈夫ですか?〜私は冷徹宰相補佐と幸せになります〜

万里戸千波

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4.新しい契約

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 ​会場には静寂が戻ったけれど、そこから私が感じていたのは、先ほどの凍りつくような静寂からとは全く違う種類のものだった。厄介者がいなくなった清々しさと、これからの国の行く末への安堵感。

 ​アレクセイが私に向き直り、恭しく手を差し出した。

​「さて、リリエン。邪魔者は消えた」
「ええ、ようやく肩の荷が降りましたわ」

 扇を開いて軽く煽いで微笑むと、アレクセイもいつもの優しい微笑みを顔に浮かべた。

「君は自由だ。もう、誰かの尻拭いのために夜遅くまで王宮に残る必要もない」

 ​彼は私の手を取り、その甲に口づけを落とした。周囲からいくつものため息が聞こえた。

​「これからは俺の隣で、君自身の能力を存分に発揮してほしい……実は、陛下から次期国王への指名を受けた」
「あら、お父上は?」
「ああ。王位継承権を持つ王弟である我が父が辞退したため、俺に回ってきた。だが、俺一人ではこの国を治めるには荷が重い」

 ​アレクセイは紫の瞳で私を真っ直ぐに見つめた。
 そこには、幼い頃から変わらない、熱烈な思慕と信頼が宿っていた。

​「俺には、賢く、美しく、そして誰よりも国を愛するパートナーが必要だ。……リリエン、俺と結婚してくれないか? これは政略ではない。俺個人の、長年の願いだ」

 ​周囲から、おお……! という歓声と拍手が巻き起こる。私は驚きに目を見開いたけれど、すぐにふわりと微笑んだ。
 ジェラルドに向けていたものとは違う、心からの笑顔で。

​「喜んで、殿下。ただし条件がありますわ」
「なんだ?」
「残業は一日二時間まで。休日は二人でゆっくり過ごすこと……守っていただけますか?」

 ​アレクセイは嬉しそうに笑った。

「善処しよう。君となら、どんな難題も解決できそうだ」

 ​音楽が再び流れ始める。
 優雅で希望に満ちたワルツ。
 私たちは手を取り合い、踊りだす。

​ 断罪されかけた私は、今、誰よりも幸せな祝福の中にいる。
 愚かな元婚約者が船の上で南国の陽に焼かれはじめる頃、私はこの国で最も優秀な男と共に、新しい未来を築いていくため歩き出すだろう。

 ​冤罪で婚約破棄された公爵令嬢の物語はここで幕を閉じる。

​(了)
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感想 3

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みんなの感想(3件)

クレサ
2025.12.16 クレサ

王道。こういうの大好き。
テンポよく読みやすくて、品格のある作品でした!

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Vitch
2025.12.09 Vitch

 ジェラルドが最後に呼んだ名前は、ミレイユでなくリリエンですか、そうですか。

解除
ask
2025.12.08 ask

いいねぇー素晴らしい!

ただ、この作品だけじゃなくて国外追放や修道院って罰になるのかな?っていつも思います。
国外追放されて逞しく活躍する追放令嬢とかいらっしゃるし(笑)
修道院は、貧しいけど食生活では困らなさそうだし。
ビッチそうな令嬢だと、娼館に売られてもご褒美かもしれないし。
令嬢への罰って難しいですね

解除

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