22 / 94
2
2人の
しおりを挟む
季節が過ぎていくのは本当にあっという間だ。気付けば5月も半ば。那月の心にある傷はまだ形を残したまま、大きくなったり小さくなったりを繰り返しながら日々を越えていく。
何事もなく終わる日もあれば、男子生徒と関わるチャンスに上手く話せず落ち込む日もある。心ない言葉をかけられることもしばしば。
それでも、視聴覚室で襲おうとしてきた3人はあの時以来、那月に付き纏ったりからかいに来ることは無くなった。先輩に腕を捻り上げられたおかげか、明衣が心配してよく近くにいてくれるおかげか。クラスも離れているらしく関わりはないし、集会でも廊下でも見かける程度だ。
最初こそあの時の恐怖を思い出してビクついていたが、最近は少し気持ちが保たれている。那月はまだ自覚していないが、わずかに男性に対して耐性がついてきているのだ。そしてその理由は明らかだ。
「…………あっ」
「おっそ」
「いや、あの……え、っと、うう、授業が、長引いて」
「ふーん」
中庭で彩世と遭遇したあの日から、那月と彩世がよくここで昼休憩の時に会うようになったからだろう。いつも示し合わせているわけではない。たまたま中庭に来て、たまたま隣同士のベンチに座っているだけ。もちろん、大きな木を間に挟んで。
那月は基本的に中庭に来るが、彩世はいる日といない日が半々。だけどいる時は必ず那月の方には来ず、隣のベンチに座る。
そして那月が昼食を食べるまでの間、彩世は口を聞いたり聞かなかったり。何も話さずに「じゃ」と言って去っていく時もあった。それでも、絶対那月が食べ終わるまでは出て行かない。こんなに近くに居る、同じ空間にいるという事実が那月の男性に対する耐性を作っていったのだろう。
その証拠に、初めて会った時は明衣についていてもらっても冷や汗と震えが止まらなかったが、今となっては1人で彩世と会うことができ、時間はかかっても受け答えができる。まだこうやって受け答えができるのは彩世限定だが、僅かながらもそれは那月にとって大きな進歩だった。
「今日も弁当?」
「あ、は……っ、はい」
「へー」
「………う、あの、え、せ、先輩は、その、ご飯」
「ん?もう食べた、カツパン」
「そっ………で、すか」
お互いの顔も見えない状態で、他愛もない話をする。静かに呼吸をして、近くにいると感じて、同じ音や温度を感じてる。
すごく不思議な感覚だった。こうしようと話した訳でもないのに、いつの間にかこれが日常の1部になっていることが。
今までこんなに近くに男の人がいたら、那月は食事なんて喉を通らなかった。だけど、彩世のそばにいる時は自然とそれができるようになっている。
「…ナツくんって、体育とかどうしてんの?男子と女子別れるし、隣のクラスと合同でしょ」
「えっ…、あ、えっと。個人競技…とかは問題、な、な、ないです。球技とかは…先生に事情、は、話して、けっ見学…その、補習…で、」
「あー揉みくちゃになる球技とかは見学して、居残り補習で単位繋いでるわけね」
「あ、は……は、はい」
何事もなく終わる日もあれば、男子生徒と関わるチャンスに上手く話せず落ち込む日もある。心ない言葉をかけられることもしばしば。
それでも、視聴覚室で襲おうとしてきた3人はあの時以来、那月に付き纏ったりからかいに来ることは無くなった。先輩に腕を捻り上げられたおかげか、明衣が心配してよく近くにいてくれるおかげか。クラスも離れているらしく関わりはないし、集会でも廊下でも見かける程度だ。
最初こそあの時の恐怖を思い出してビクついていたが、最近は少し気持ちが保たれている。那月はまだ自覚していないが、わずかに男性に対して耐性がついてきているのだ。そしてその理由は明らかだ。
「…………あっ」
「おっそ」
「いや、あの……え、っと、うう、授業が、長引いて」
「ふーん」
中庭で彩世と遭遇したあの日から、那月と彩世がよくここで昼休憩の時に会うようになったからだろう。いつも示し合わせているわけではない。たまたま中庭に来て、たまたま隣同士のベンチに座っているだけ。もちろん、大きな木を間に挟んで。
那月は基本的に中庭に来るが、彩世はいる日といない日が半々。だけどいる時は必ず那月の方には来ず、隣のベンチに座る。
そして那月が昼食を食べるまでの間、彩世は口を聞いたり聞かなかったり。何も話さずに「じゃ」と言って去っていく時もあった。それでも、絶対那月が食べ終わるまでは出て行かない。こんなに近くに居る、同じ空間にいるという事実が那月の男性に対する耐性を作っていったのだろう。
その証拠に、初めて会った時は明衣についていてもらっても冷や汗と震えが止まらなかったが、今となっては1人で彩世と会うことができ、時間はかかっても受け答えができる。まだこうやって受け答えができるのは彩世限定だが、僅かながらもそれは那月にとって大きな進歩だった。
「今日も弁当?」
「あ、は……っ、はい」
「へー」
「………う、あの、え、せ、先輩は、その、ご飯」
「ん?もう食べた、カツパン」
「そっ………で、すか」
お互いの顔も見えない状態で、他愛もない話をする。静かに呼吸をして、近くにいると感じて、同じ音や温度を感じてる。
すごく不思議な感覚だった。こうしようと話した訳でもないのに、いつの間にかこれが日常の1部になっていることが。
今までこんなに近くに男の人がいたら、那月は食事なんて喉を通らなかった。だけど、彩世のそばにいる時は自然とそれができるようになっている。
「…ナツくんって、体育とかどうしてんの?男子と女子別れるし、隣のクラスと合同でしょ」
「えっ…、あ、えっと。個人競技…とかは問題、な、な、ないです。球技とかは…先生に事情、は、話して、けっ見学…その、補習…で、」
「あー揉みくちゃになる球技とかは見学して、居残り補習で単位繋いでるわけね」
「あ、は……は、はい」
20
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
Please,Call My Name
叶けい
BL
アイドルグループ『star.b』最年長メンバーの桐谷大知はある日、同じグループのメンバーである櫻井悠貴の幼なじみの青年・雪村眞白と知り合う。眞白には難聴のハンディがあった。
何度も会ううちに、眞白に惹かれていく大知。
しかし、かつてアイドルに憧れた過去を持つ眞白の胸中は複雑だった。
大知の優しさに触れるうち、傷ついて頑なになっていた眞白の気持ちも少しずつ解けていく。
眞白もまた大知への想いを募らせるようになるが、素直に気持ちを伝えられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる