29 / 94
3
電話
しおりを挟む
彩世が立ち去ってから、体が棒になったかのようにその場に立ち尽くしていた那月。数分経った頃、昼休みの終わりを知らせるチャイムで我に返った。
慌てて弁当袋を持ち中庭を出ると、早歩きで教室へと向かった。その足取りは先程とは比べ物にならないくらい軽く弾んでいる。4時間目の苦しさが9割頭から抜けていったように感じだ。
「あ!こっちからのが早い…な」
そして教室へ戻る途中、昇降口の横を通ろうとした時。誰かの話し声が聞こえてきた。人が少ない廊下な上、昇降口は声が響く作りになっているから外からでもよく聞こえてしまう。
「…あれ?この声」
男子生徒の話し声だと分かり、足を止めた那月。前だったら近くで男の声がしたら一目散に離れていたのに、立ち止まったのは他でもないあの人の声だと分かったからだ。
「……一一一で?それが?」
一一一あ、やっぱりこれ、彩世先輩の声だ!びっくりした…まだ教室に戻ってなかったんだ。でも1人で喋ってる…?
聞こえてきたのが彩世の声だと分かり、那月は少しこっそりと昇降口を覗いてみた。すると、やはり他には誰もいない。そして携帯を耳に当てている彩世の後ろ姿が微かに見える。誰かと電話をしているようだ。
「だから…一一一一なんで……」
声は聞こえるが、内容までは聞こえてこない。彩世がこちらを向く前に、那月は覗いた顔を秒で引っ込めて、小走りでその場を去った。
「ふー…間に合った」
「那月!大丈夫だった?ご飯食べた?」
「明衣、食べたよ!もう大丈夫」
「そっか…よかった」
「あっ、早く席座ろう!」
教室に入るなり、心配そうに駆け寄ってきた明衣に今度は自然な笑顔を見せた那月。それにホッとしたような表情を見せる明衣。2人がそれぞれ席につき、周りの生徒も段々とまばらに着席していく。
だが、那月は教室に戻ってからも、さっきの電話をしている彩世の様子が妙に引っかかっていた。中庭で聞いた穏やかな声とは真逆のトーン。少し俯いて話していた後ろ姿。
一一一そういえば、初めて中庭で彩世先輩と鉢合わせた時も誰かと電話していたような…。その時も、ちょっと雰囲気が良くなかった気がする。
一一一いや、僕が気にすることじゃないよな。まずは自分のことをしっかりしないと…でもでもでも…なんでか気になる、引っかかる…。
「ねーねー、あいつまだ戻ってきてないの?」
「だねー、なんか彼氏から電話かかってきたーって言ってたし。もう先生来ちゃうのにね」
「このままサボりかな?」
ぼんやりそんなことを考えていたら、那月の隣の席から女子達の話し声が聞こえてきた。友達のことを話しているんだろう。タイムリーな「電話」というワードについ反応してしまう。
「てか、よく電話かかってくるよねー。彼氏って他校でしょ?」
「らしいよ。彼氏がちょっと束縛気味らしくて、あいつもちょっとしんどいって言ってたけどね」
「マジ!?そんなソクバッキーなんだ、彼氏」
「うんー、でも好きだから別れられないし、私がいないとダメだからーって言ってた」
「こわー」
「あ、先生来た」
那月はその話を聞いて、ゴクッと喉を鳴らした。恋愛もしたことがない自分には到底理解できない世界だ。それに、どこにでもある恋バナ兼女子トーク。
なのに変に気になってしまうのは、きっとタイミングの良さだ。彩世のさっきの状況と、今の電話の話が少し重なるからかもしれない。
一一一そうか…。僕は今まで男の人を克服することに必死で、そういうのに興味なかったけど…先輩はやっぱり恋人とかいたりするのかな。年上だし、優しいし、真面目だし…居るのかも。もしかして、あの電話は恋人からだったりして?
一一一ていうか、それこそ僕が気にする所じゃないよな…。
慌てて弁当袋を持ち中庭を出ると、早歩きで教室へと向かった。その足取りは先程とは比べ物にならないくらい軽く弾んでいる。4時間目の苦しさが9割頭から抜けていったように感じだ。
「あ!こっちからのが早い…な」
そして教室へ戻る途中、昇降口の横を通ろうとした時。誰かの話し声が聞こえてきた。人が少ない廊下な上、昇降口は声が響く作りになっているから外からでもよく聞こえてしまう。
「…あれ?この声」
男子生徒の話し声だと分かり、足を止めた那月。前だったら近くで男の声がしたら一目散に離れていたのに、立ち止まったのは他でもないあの人の声だと分かったからだ。
「……一一一で?それが?」
一一一あ、やっぱりこれ、彩世先輩の声だ!びっくりした…まだ教室に戻ってなかったんだ。でも1人で喋ってる…?
聞こえてきたのが彩世の声だと分かり、那月は少しこっそりと昇降口を覗いてみた。すると、やはり他には誰もいない。そして携帯を耳に当てている彩世の後ろ姿が微かに見える。誰かと電話をしているようだ。
「だから…一一一一なんで……」
声は聞こえるが、内容までは聞こえてこない。彩世がこちらを向く前に、那月は覗いた顔を秒で引っ込めて、小走りでその場を去った。
「ふー…間に合った」
「那月!大丈夫だった?ご飯食べた?」
「明衣、食べたよ!もう大丈夫」
「そっか…よかった」
「あっ、早く席座ろう!」
教室に入るなり、心配そうに駆け寄ってきた明衣に今度は自然な笑顔を見せた那月。それにホッとしたような表情を見せる明衣。2人がそれぞれ席につき、周りの生徒も段々とまばらに着席していく。
だが、那月は教室に戻ってからも、さっきの電話をしている彩世の様子が妙に引っかかっていた。中庭で聞いた穏やかな声とは真逆のトーン。少し俯いて話していた後ろ姿。
一一一そういえば、初めて中庭で彩世先輩と鉢合わせた時も誰かと電話していたような…。その時も、ちょっと雰囲気が良くなかった気がする。
一一一いや、僕が気にすることじゃないよな。まずは自分のことをしっかりしないと…でもでもでも…なんでか気になる、引っかかる…。
「ねーねー、あいつまだ戻ってきてないの?」
「だねー、なんか彼氏から電話かかってきたーって言ってたし。もう先生来ちゃうのにね」
「このままサボりかな?」
ぼんやりそんなことを考えていたら、那月の隣の席から女子達の話し声が聞こえてきた。友達のことを話しているんだろう。タイムリーな「電話」というワードについ反応してしまう。
「てか、よく電話かかってくるよねー。彼氏って他校でしょ?」
「らしいよ。彼氏がちょっと束縛気味らしくて、あいつもちょっとしんどいって言ってたけどね」
「マジ!?そんなソクバッキーなんだ、彼氏」
「うんー、でも好きだから別れられないし、私がいないとダメだからーって言ってた」
「こわー」
「あ、先生来た」
那月はその話を聞いて、ゴクッと喉を鳴らした。恋愛もしたことがない自分には到底理解できない世界だ。それに、どこにでもある恋バナ兼女子トーク。
なのに変に気になってしまうのは、きっとタイミングの良さだ。彩世のさっきの状況と、今の電話の話が少し重なるからかもしれない。
一一一そうか…。僕は今まで男の人を克服することに必死で、そういうのに興味なかったけど…先輩はやっぱり恋人とかいたりするのかな。年上だし、優しいし、真面目だし…居るのかも。もしかして、あの電話は恋人からだったりして?
一一一ていうか、それこそ僕が気にする所じゃないよな…。
11
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
Please,Call My Name
叶けい
BL
アイドルグループ『star.b』最年長メンバーの桐谷大知はある日、同じグループのメンバーである櫻井悠貴の幼なじみの青年・雪村眞白と知り合う。眞白には難聴のハンディがあった。
何度も会ううちに、眞白に惹かれていく大知。
しかし、かつてアイドルに憧れた過去を持つ眞白の胸中は複雑だった。
大知の優しさに触れるうち、傷ついて頑なになっていた眞白の気持ちも少しずつ解けていく。
眞白もまた大知への想いを募らせるようになるが、素直に気持ちを伝えられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる