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誰?
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中々に濃い1日を終え、あっという間に下校時間になった夕方。那月はバイトに向かう明衣と別れて校舎を出た。今は特に、生徒が道にも校舎にもたくさん行き交っている時間帯。出来るだけ人とぶつからないように、那月は最寄りの駅へと急ぎ足で向かった。
ーーー結局、さっきの彩世先輩のことずっと考えちゃってたな。頭の中にモヤがあるみたいで…授業中でも、こんなに他のことが気になるのって初めてだ。
「……あ、」
そう考えながら歩いていたが、フェンスの向こう側に生徒の集まりを見つけ、足を止めた那月。
集まっている生徒達は男女共に腕に風紀委員の名札をつけている。すぐに委員会の集まりだと分かった。風紀委員は活動も多いし、朝の身だしなみチェックの他に、放課後に残って行う清掃や校内の見回りもあるらしい。今も何か校舎内で活動をしているのだろう。
じっと立ち止まり、那月の視線はその風紀委員の様子に真っ直ぐ伸びている。そしてキョロキョロと無意識に目を転がした。
ーーーえ、僕今…無意識にキョロキョロしてた?自分から先輩のこと探してた……?うそ、どうして……
一一一なんかおかしいな、僕。なに立ち止まってんだろ。早く帰ろう…。
ドンッ
「わっ!」
「!!」
歩き出そうと意識がハッとしたその瞬間、突然那月の背中に人がぶつかった感触がした。
「うおっ…」
軽くぶつかった程度だがボーッとしていたせいもあり、那月の体は前に少しよろける。
「あー、すいません!大丈夫ですか?」
そのよろけた体に、咄嗟に添えられた大きな手のひら。ぶつかった人が支えてくれたんだろう。そのおかげで転ぶことは免れた。しかし、その鼻を通り抜ける強い香りに那月は目を見開く。嗅いだことのある有名なメンズ香水の香りだからだ。
勢いよく振り向くと、やはり。そのぶつかった人は学生服を着た金髪の男だった。
「……!わっ!あ!」
那月は驚いて声を上げ、慌ててその人から離れた。我に返って「またやってしまった」とは思ったが、足と手の震え、冷や汗は出ていない。
「……あ、え、え、えっと、あの、あ、ご、ごめ、なさ……い……」
しかもポカンと首を傾げる金髪の男子高校生に、どもりながらも謝ることができた。少し息切れはするが、今までの恐怖感と比べると全然違う。なんなら今日の化学室での時よりも。短時間でその差を感じて那月は自分に驚いた。
「いやいや俺がー、携帯見ながら歩いちゃってたんで気にしないでください。むしろぶつかってすんません!」
男子生徒は、距離を取られたことも那月の様子も気にする感じがなく笑顔であっけらかんと声をかける。
「……っ、あ、は、はぁ。い、あ、で、で、は…」
那月はそれに少しホッとして、恐る恐るお辞儀をして前向いた。その振り向き際に見えたのは彼の制服姿。那月の学校の制服とは違う、第3ボタンくらいまで外したカッターシャツと胸元には緩めた緑のネクタイ。
この人が他校の生徒だと分かった。「なんでここに他校の人が?」と思いつつ那月はまた踵を返し、その場を離れようと背中を向けた。
まあ、きっと誰か友達を迎えに来たか会いに来たんだろう。
「…っふぅーーー、それより深呼吸…」
一一一急すぎてびっくりした…。やっぱり怖いせいで喉がヒュって縮まったけど、前までと違う。こんな突然のことに尻もちつかずに返事ができるなんて…。今日のら化学の時は全然だったのに…。もしかして彩世先輩のおかげ…?
「あ!!!いた、いろーーーー!いーーーろ!」
その時、背後から聞こえたさっきの金髪男子の明るい声。誰かを呼んでいるような声だ。
「……え、」
しかも「いろ」と言っている。呼んでいる人の名前か。名前だとしたら、那月が思い当たるのは1人しか居ない。
後ろを振り返ると、さっき那月とぶつかった男子生徒がフェンスに掴まり、やはり校舎内に向かって誰かに呼びかけていた。
「いろってばー!聞こえてるでしょ、無視しないでよ!いーろーせーくーん」
ーーー結局、さっきの彩世先輩のことずっと考えちゃってたな。頭の中にモヤがあるみたいで…授業中でも、こんなに他のことが気になるのって初めてだ。
「……あ、」
そう考えながら歩いていたが、フェンスの向こう側に生徒の集まりを見つけ、足を止めた那月。
集まっている生徒達は男女共に腕に風紀委員の名札をつけている。すぐに委員会の集まりだと分かった。風紀委員は活動も多いし、朝の身だしなみチェックの他に、放課後に残って行う清掃や校内の見回りもあるらしい。今も何か校舎内で活動をしているのだろう。
じっと立ち止まり、那月の視線はその風紀委員の様子に真っ直ぐ伸びている。そしてキョロキョロと無意識に目を転がした。
ーーーえ、僕今…無意識にキョロキョロしてた?自分から先輩のこと探してた……?うそ、どうして……
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ドンッ
「わっ!」
「!!」
歩き出そうと意識がハッとしたその瞬間、突然那月の背中に人がぶつかった感触がした。
「うおっ…」
軽くぶつかった程度だがボーッとしていたせいもあり、那月の体は前に少しよろける。
「あー、すいません!大丈夫ですか?」
そのよろけた体に、咄嗟に添えられた大きな手のひら。ぶつかった人が支えてくれたんだろう。そのおかげで転ぶことは免れた。しかし、その鼻を通り抜ける強い香りに那月は目を見開く。嗅いだことのある有名なメンズ香水の香りだからだ。
勢いよく振り向くと、やはり。そのぶつかった人は学生服を着た金髪の男だった。
「……!わっ!あ!」
那月は驚いて声を上げ、慌ててその人から離れた。我に返って「またやってしまった」とは思ったが、足と手の震え、冷や汗は出ていない。
「……あ、え、え、えっと、あの、あ、ご、ごめ、なさ……い……」
しかもポカンと首を傾げる金髪の男子高校生に、どもりながらも謝ることができた。少し息切れはするが、今までの恐怖感と比べると全然違う。なんなら今日の化学室での時よりも。短時間でその差を感じて那月は自分に驚いた。
「いやいや俺がー、携帯見ながら歩いちゃってたんで気にしないでください。むしろぶつかってすんません!」
男子生徒は、距離を取られたことも那月の様子も気にする感じがなく笑顔であっけらかんと声をかける。
「……っ、あ、は、はぁ。い、あ、で、で、は…」
那月はそれに少しホッとして、恐る恐るお辞儀をして前向いた。その振り向き際に見えたのは彼の制服姿。那月の学校の制服とは違う、第3ボタンくらいまで外したカッターシャツと胸元には緩めた緑のネクタイ。
この人が他校の生徒だと分かった。「なんでここに他校の人が?」と思いつつ那月はまた踵を返し、その場を離れようと背中を向けた。
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「……え、」
しかも「いろ」と言っている。呼んでいる人の名前か。名前だとしたら、那月が思い当たるのは1人しか居ない。
後ろを振り返ると、さっき那月とぶつかった男子生徒がフェンスに掴まり、やはり校舎内に向かって誰かに呼びかけていた。
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