84 / 93
第四章 森の精霊
第84話 深層の域へ沈む者と十傑の域へ届く者たち
しおりを挟む
泉の洞窟の入り口――
「……ん?なんの音じゃ?」
金属が弾け飛ぶような甲高い音が洞窟の入り口まで届き、エアデランの瞼がぴくりと震えた。
エアデランは、ゆっくりと目を開け、寝ぼけた目をこすりながら顔を上げる。
その視線の先にはルノアとエメルダ。
二人の向こう側には、武装した男たちがずらりと並び、殺気を剥き出しにしている。
「おお……なんじゃ、あれは。揉め事か?」
エアデランは首をかしげると、のんびりした調子のまま立ち上がった。
「仕方ないのぅ。わしが行って仲裁でもしてやるか。なにせわしは長老じゃからの。うぉーほっ、ほっ」
と自信満々に言って、彼はヨタヨタと二人のほうへ歩き出した。
少なくとも本人の中では、状況はすでに解決へ向かっているつもりだった。
「今のって、攻撃だったのか?」
「いや、さすがに違うだろ。弱すぎる。準備運動だよな?」
ルノアとエメルダが、バナムの全力の一撃を“軽く笑い飛ばす”。
「なっ……なんだと!?」
バナムは目を見開いたまま固まっている。
「しかし、このアイテム、すげぇな!」
「あぁ、無敵感が半端ねぇ!」
二人はアイテムを掲げ、まるで戦闘後の記念撮影のように喜び合っていた。
バナムのこめかみに青筋が浮かぶ。
「な、舐めるなよ!!小娘が!!」
怒鳴り声が裏返るほど、怒りで顔が真っ赤になっている。
「おっ、いよいよボルテージマックスか」
「やっと本気で来る気になったか。こっちは色々試したいことがあるんだよ」
二人はにやりと笑い、アイテムを構える。
「後悔するなよ……全力でぶっ潰す!お前たち!アルティマナを使え!!」
バナムの怒号とともに、背後の部下たちがいっせいに動いた。
彼らは注射器のようなものを胸元から取り出すと、そのまま心臓へ突き立てる。
次の瞬間、淡い青の光が部下たちの全身を包み込み、筋肉が盛り上がり始めた。
ルノアとエメルダはほくそ笑んで、目の前の屈強な異世界人たちに向き直る。
一触即発――時が止まる。
時を動かしたのはバナムであった。
バナムは、ニヤッとほくそ笑むと、前にではなく横に飛び出た。
すると、その背後にいた男がスキルを放っていた。
そのスキルは至近距離にいる二人を捉える。
しかし、ルノアが槍で軽く弾き返す。
その間に、バナムをはじめ他の異世界人たちがルノアとエメルダを中心に置き円状に取り囲んでいた。
「いまだ!やれ!」
バナムが叫び、他の者たちが一斉に構えてそれぞれのスキルを唱えるや、一斉攻撃がルノアとエメルダを襲う。
しかし、二人は上空へ飛び上がると再び二手に分かれる。
その様子を見るとバナムがほくそ笑む。
次の瞬間、異世界人たちが放ったスキルも分裂し、二手に分かれてルノアとエメルダを追う。
「へぇ、追従してくるのか」
「おもしれぇ。どれくらいの威力なんだ?」
二人は上空で止まると、それぞれのアイテムを構える。
ガキィィーーン!
ドカーン!
異世界人たちのスキルが二人のアイテムではじかれると、あたりの岩々にぶつかり小石が飛び散った。
そして、その一部の小石がエアデランの方まで飛んでいき、彼の頭をかすめた。
「おっ、おう。危ない、危ない……。ぶつかったらどうするんじゃい」
驚きながら、かすめて行った小石の方に目をやった。
次に、上空のルノアとエメルダを見上げると、
「こりゃぁ、早いところ戦いを止めんと、この辺りがめちゃくちゃになってしまうの」
と言って、バナムたちの方へ再び歩き出すエアデランであった。
一方――。
「な、なんだと……」
上空を見上げ絶句するバナムとその部下たち。
ルノアとエメルダは眼下にいる異世界人たちを見てニヤリと笑う。
「じゃぁ、今度はこっちの番だね」
「おぅ、せっかくだからアイテムの力を試すぞ!」
「まずは接近戦からいくか」
「あんまり力出すなよ。簡単に終わっちまいそうだ」
「あぁ、わかってる。実験台がいなくなったら困るからな」
「まずは雑魚共からいくぞ!」
二人が上空から地上の異世界人たちへ目掛けて突進したかと思うと、突如、異世界人たちの前に現れた。
「うっ!?」
驚く異世界人たちは慌てて後方へ飛びのいた。
すかさずルノアとエメルダが間合いを詰めながらアイテムで攻撃を始めた。
ルノアは目にもとまらぬ速さの槍で連撃。
「あははっ。めちゃ早く槍を打てるし、扱いやすいし!」
喜んで逃げ惑う異世界人たちに致命傷を与えないように追いかけまわす。
エメルダというと、棍棒を片手で振り回し、
「軽いっ!軽いぞぉ、この棍棒はっ!」
と、こちらも大喜びで異世界人たちをいたぶっている。
一人取り残され、部下たちの逃げ惑う姿を見て戸惑いと焦りを隠せないバナム。
「お、お前たち!何をやっている。相手は二人だけだぞ。早いところ反撃しろ!!」
声を張り上げて部下たちを叱責するのが精いっぱいであった。
「どうだ。うちの二人は?」
「ひっ!?」
突然のアマトの声に驚いて腰を抜かすバナム。
「あれでも実力の半分も出してないと思うぞ」
腰をついているバナムの目の前にしゃがみ込んでアマトが彼を見つめた。
その威圧に、ガクガクと震えだすバナムは、アマトを直視できず思わず顔を横に背ける。
するとその先には、ヨタヨタと歩いてくるエアデランの姿があった。
バナムは、ごくりと唾をのむとニヤリとほくそ笑む。
「た、確かにあいつらは強い。だが強いだけだ」
そう言ったかと思うとバナムは横へ飛び跳ね、エアデランの後ろから首元に腕を回して拘束した。
「戦いは、その戦況においてあらゆるものを利用できる者が勝つのだ!」
バナムが大声を発し、高笑いする。
その声に気づいたルノアとエメルダ。
「あのくそジジィ。あんなところで何やってんだ」
「放っておいていいんじゃねぇか」
異世界人をあらかた片付けていた二人は、エアデランを見てあきれ声を出す。
それでも、二人は顔を見合わせて頷くと、次の瞬間にはバナムの前に立っていた。
突如現れた二人に動揺するバナムが、短剣をエアデランに突き付けて言った。
「こ、こいつがどうなってもいいのか!?」
エアデランを拘束する腕に力が入る。
「これ!放さんか!老人虐待反対っ!!」
首に腕を嵌められジタバタするエアデラン。
「「……」」
言葉を発しないルノアとエメルダを見てバナムがほくそ笑む。
「どうだ。手も足も出るまい。さぁ、武器をこっちによこせ」
そう言ってバナムはエアデランをさらに締め上げる。
「正直……そんなエロジジィどうでもいいんだけど」
「そもそも仲間でも何でもねぇしな」
ルノアとエメルダがニヤリと笑う。
「馬鹿な。はったりだ!」
バナムが怒鳴るも焦りの色は隠せない。
「はったりかどうか……」
「見せてやるぜ」
と言い放った瞬間、二人はバナムの懐に入り込んでいた。
バナムは、反射的にエアデランを放り出す。
すると、
「ぎゃぁぁーーっ!」
エアデランはよろけ、そのまま仰向けに後ろへ倒れ込んでいった。
そして――
ゴチィィーン!
哀れエアデラン。そこにあった大きな石に頭をぶつけ、その意識は深層の域へと沈んでいった。
一方バナムは、防御しようと腕を上げた瞬間にはもう遅かった。
ルノアの拳が顔面を、エメルダの拳がボディを同時に撃ち抜く。
ドゴォォーーン!!
バナムの身体は後方へ吹き飛び、岸壁に派手にめり込んだ。
そしてバナムは、それきり微動だにすることなく、完全に沈黙した。
ルノアとエメルダはそれを確認すると、互いに身体を向け合い、肘をぶつけてニヤリと笑った。
「さて……このめんどくせぇジジィ、どうする?」
「放っておけばいずれ目覚ますんじゃねぇか?」
ルノアとエメルダは、地面に倒れているエアデランを見下ろし、ため息をつく。
「洞窟の入り口まで運んでやれ」
ルダルがいつの間にか近くまで歩いてきていた。
「えぇーーっ。面倒くさいし」
「水ぶっかければ目覚ますかもしれねぇぜ」
露骨に嫌がる二人であった。
「そもそも、お前らの詰めが甘すぎたからエアデランが巻き添えを食ったんだ。連帯責任だ」
ギロリと二人を睨みつけるルダル。
「「うっ……」」
その威圧に押され首をうなだれる二人は、
「「はい……」」
と言ってエアデランの腕と足を持ってしぶしぶと洞窟の入り口の方へ歩いて行った。
その様子をほくそ笑んで見守るアマトの精神空間では――
『あいつら……魔素供給もスキルもなしでアレを倒したぞ』
再び感心するゼルヴァス。
『すごいわよねっ!ルノアちゃんとエメルダちゃんっ!」
ピョンピョンと跳ねて喜ぶティアマト。
『あぁ、本当に強くなったな』
アマトも頷く。
『かつてのゼルヴァス十傑の域に、届きつつあるかもしれん』
『そうなの!じゃぁ、ルダルちゃんと同じくらいになったってこと?』
『いや。ルダルはそれ以上に強くなっている気配を感じる……』
一呼吸置くとゼルヴァスが続けた。
『これは俺様の推測だが、アマトと一緒に長い間行動を共にしたことによる結果なんじゃないかと思ってる』
『ふむふむ、なるほどぉ……』
目が点になっているティアマトは、あまり理解してなさそうではあるが、とりあえず大きく頷く。
『どういうことだ?』
アマトが問いかけた。
『つまりだ……長い間、無意識のうちにお前から魔素を吸収し続けて、あいつらの身体に何か変化が起きたのではないかと思っている』
『ということは、ミィナちゃんも強くなっているってこと!?』
ティアマトが目を丸くして言った。
『あぁ、そうだ。事実、ミィナのオーラの千里眼は尋常ではない。三人娘、いや、ルダルを含めてこの四人は今後すごいことになりそうだ』
ゼルヴァスが関心のため息をついた。
『いいじゃないっ!要するに、もう向かうところ敵なしになっていくってことね!』
ティアマトがはしゃぐ。
「あぁ、そうだな」
アマトは、ルノアとエメルダの姿を目で追うと、嬉しそうに一人呟いたのであった――。
「……ん?なんの音じゃ?」
金属が弾け飛ぶような甲高い音が洞窟の入り口まで届き、エアデランの瞼がぴくりと震えた。
エアデランは、ゆっくりと目を開け、寝ぼけた目をこすりながら顔を上げる。
その視線の先にはルノアとエメルダ。
二人の向こう側には、武装した男たちがずらりと並び、殺気を剥き出しにしている。
「おお……なんじゃ、あれは。揉め事か?」
エアデランは首をかしげると、のんびりした調子のまま立ち上がった。
「仕方ないのぅ。わしが行って仲裁でもしてやるか。なにせわしは長老じゃからの。うぉーほっ、ほっ」
と自信満々に言って、彼はヨタヨタと二人のほうへ歩き出した。
少なくとも本人の中では、状況はすでに解決へ向かっているつもりだった。
「今のって、攻撃だったのか?」
「いや、さすがに違うだろ。弱すぎる。準備運動だよな?」
ルノアとエメルダが、バナムの全力の一撃を“軽く笑い飛ばす”。
「なっ……なんだと!?」
バナムは目を見開いたまま固まっている。
「しかし、このアイテム、すげぇな!」
「あぁ、無敵感が半端ねぇ!」
二人はアイテムを掲げ、まるで戦闘後の記念撮影のように喜び合っていた。
バナムのこめかみに青筋が浮かぶ。
「な、舐めるなよ!!小娘が!!」
怒鳴り声が裏返るほど、怒りで顔が真っ赤になっている。
「おっ、いよいよボルテージマックスか」
「やっと本気で来る気になったか。こっちは色々試したいことがあるんだよ」
二人はにやりと笑い、アイテムを構える。
「後悔するなよ……全力でぶっ潰す!お前たち!アルティマナを使え!!」
バナムの怒号とともに、背後の部下たちがいっせいに動いた。
彼らは注射器のようなものを胸元から取り出すと、そのまま心臓へ突き立てる。
次の瞬間、淡い青の光が部下たちの全身を包み込み、筋肉が盛り上がり始めた。
ルノアとエメルダはほくそ笑んで、目の前の屈強な異世界人たちに向き直る。
一触即発――時が止まる。
時を動かしたのはバナムであった。
バナムは、ニヤッとほくそ笑むと、前にではなく横に飛び出た。
すると、その背後にいた男がスキルを放っていた。
そのスキルは至近距離にいる二人を捉える。
しかし、ルノアが槍で軽く弾き返す。
その間に、バナムをはじめ他の異世界人たちがルノアとエメルダを中心に置き円状に取り囲んでいた。
「いまだ!やれ!」
バナムが叫び、他の者たちが一斉に構えてそれぞれのスキルを唱えるや、一斉攻撃がルノアとエメルダを襲う。
しかし、二人は上空へ飛び上がると再び二手に分かれる。
その様子を見るとバナムがほくそ笑む。
次の瞬間、異世界人たちが放ったスキルも分裂し、二手に分かれてルノアとエメルダを追う。
「へぇ、追従してくるのか」
「おもしれぇ。どれくらいの威力なんだ?」
二人は上空で止まると、それぞれのアイテムを構える。
ガキィィーーン!
ドカーン!
異世界人たちのスキルが二人のアイテムではじかれると、あたりの岩々にぶつかり小石が飛び散った。
そして、その一部の小石がエアデランの方まで飛んでいき、彼の頭をかすめた。
「おっ、おう。危ない、危ない……。ぶつかったらどうするんじゃい」
驚きながら、かすめて行った小石の方に目をやった。
次に、上空のルノアとエメルダを見上げると、
「こりゃぁ、早いところ戦いを止めんと、この辺りがめちゃくちゃになってしまうの」
と言って、バナムたちの方へ再び歩き出すエアデランであった。
一方――。
「な、なんだと……」
上空を見上げ絶句するバナムとその部下たち。
ルノアとエメルダは眼下にいる異世界人たちを見てニヤリと笑う。
「じゃぁ、今度はこっちの番だね」
「おぅ、せっかくだからアイテムの力を試すぞ!」
「まずは接近戦からいくか」
「あんまり力出すなよ。簡単に終わっちまいそうだ」
「あぁ、わかってる。実験台がいなくなったら困るからな」
「まずは雑魚共からいくぞ!」
二人が上空から地上の異世界人たちへ目掛けて突進したかと思うと、突如、異世界人たちの前に現れた。
「うっ!?」
驚く異世界人たちは慌てて後方へ飛びのいた。
すかさずルノアとエメルダが間合いを詰めながらアイテムで攻撃を始めた。
ルノアは目にもとまらぬ速さの槍で連撃。
「あははっ。めちゃ早く槍を打てるし、扱いやすいし!」
喜んで逃げ惑う異世界人たちに致命傷を与えないように追いかけまわす。
エメルダというと、棍棒を片手で振り回し、
「軽いっ!軽いぞぉ、この棍棒はっ!」
と、こちらも大喜びで異世界人たちをいたぶっている。
一人取り残され、部下たちの逃げ惑う姿を見て戸惑いと焦りを隠せないバナム。
「お、お前たち!何をやっている。相手は二人だけだぞ。早いところ反撃しろ!!」
声を張り上げて部下たちを叱責するのが精いっぱいであった。
「どうだ。うちの二人は?」
「ひっ!?」
突然のアマトの声に驚いて腰を抜かすバナム。
「あれでも実力の半分も出してないと思うぞ」
腰をついているバナムの目の前にしゃがみ込んでアマトが彼を見つめた。
その威圧に、ガクガクと震えだすバナムは、アマトを直視できず思わず顔を横に背ける。
するとその先には、ヨタヨタと歩いてくるエアデランの姿があった。
バナムは、ごくりと唾をのむとニヤリとほくそ笑む。
「た、確かにあいつらは強い。だが強いだけだ」
そう言ったかと思うとバナムは横へ飛び跳ね、エアデランの後ろから首元に腕を回して拘束した。
「戦いは、その戦況においてあらゆるものを利用できる者が勝つのだ!」
バナムが大声を発し、高笑いする。
その声に気づいたルノアとエメルダ。
「あのくそジジィ。あんなところで何やってんだ」
「放っておいていいんじゃねぇか」
異世界人をあらかた片付けていた二人は、エアデランを見てあきれ声を出す。
それでも、二人は顔を見合わせて頷くと、次の瞬間にはバナムの前に立っていた。
突如現れた二人に動揺するバナムが、短剣をエアデランに突き付けて言った。
「こ、こいつがどうなってもいいのか!?」
エアデランを拘束する腕に力が入る。
「これ!放さんか!老人虐待反対っ!!」
首に腕を嵌められジタバタするエアデラン。
「「……」」
言葉を発しないルノアとエメルダを見てバナムがほくそ笑む。
「どうだ。手も足も出るまい。さぁ、武器をこっちによこせ」
そう言ってバナムはエアデランをさらに締め上げる。
「正直……そんなエロジジィどうでもいいんだけど」
「そもそも仲間でも何でもねぇしな」
ルノアとエメルダがニヤリと笑う。
「馬鹿な。はったりだ!」
バナムが怒鳴るも焦りの色は隠せない。
「はったりかどうか……」
「見せてやるぜ」
と言い放った瞬間、二人はバナムの懐に入り込んでいた。
バナムは、反射的にエアデランを放り出す。
すると、
「ぎゃぁぁーーっ!」
エアデランはよろけ、そのまま仰向けに後ろへ倒れ込んでいった。
そして――
ゴチィィーン!
哀れエアデラン。そこにあった大きな石に頭をぶつけ、その意識は深層の域へと沈んでいった。
一方バナムは、防御しようと腕を上げた瞬間にはもう遅かった。
ルノアの拳が顔面を、エメルダの拳がボディを同時に撃ち抜く。
ドゴォォーーン!!
バナムの身体は後方へ吹き飛び、岸壁に派手にめり込んだ。
そしてバナムは、それきり微動だにすることなく、完全に沈黙した。
ルノアとエメルダはそれを確認すると、互いに身体を向け合い、肘をぶつけてニヤリと笑った。
「さて……このめんどくせぇジジィ、どうする?」
「放っておけばいずれ目覚ますんじゃねぇか?」
ルノアとエメルダは、地面に倒れているエアデランを見下ろし、ため息をつく。
「洞窟の入り口まで運んでやれ」
ルダルがいつの間にか近くまで歩いてきていた。
「えぇーーっ。面倒くさいし」
「水ぶっかければ目覚ますかもしれねぇぜ」
露骨に嫌がる二人であった。
「そもそも、お前らの詰めが甘すぎたからエアデランが巻き添えを食ったんだ。連帯責任だ」
ギロリと二人を睨みつけるルダル。
「「うっ……」」
その威圧に押され首をうなだれる二人は、
「「はい……」」
と言ってエアデランの腕と足を持ってしぶしぶと洞窟の入り口の方へ歩いて行った。
その様子をほくそ笑んで見守るアマトの精神空間では――
『あいつら……魔素供給もスキルもなしでアレを倒したぞ』
再び感心するゼルヴァス。
『すごいわよねっ!ルノアちゃんとエメルダちゃんっ!」
ピョンピョンと跳ねて喜ぶティアマト。
『あぁ、本当に強くなったな』
アマトも頷く。
『かつてのゼルヴァス十傑の域に、届きつつあるかもしれん』
『そうなの!じゃぁ、ルダルちゃんと同じくらいになったってこと?』
『いや。ルダルはそれ以上に強くなっている気配を感じる……』
一呼吸置くとゼルヴァスが続けた。
『これは俺様の推測だが、アマトと一緒に長い間行動を共にしたことによる結果なんじゃないかと思ってる』
『ふむふむ、なるほどぉ……』
目が点になっているティアマトは、あまり理解してなさそうではあるが、とりあえず大きく頷く。
『どういうことだ?』
アマトが問いかけた。
『つまりだ……長い間、無意識のうちにお前から魔素を吸収し続けて、あいつらの身体に何か変化が起きたのではないかと思っている』
『ということは、ミィナちゃんも強くなっているってこと!?』
ティアマトが目を丸くして言った。
『あぁ、そうだ。事実、ミィナのオーラの千里眼は尋常ではない。三人娘、いや、ルダルを含めてこの四人は今後すごいことになりそうだ』
ゼルヴァスが関心のため息をついた。
『いいじゃないっ!要するに、もう向かうところ敵なしになっていくってことね!』
ティアマトがはしゃぐ。
「あぁ、そうだな」
アマトは、ルノアとエメルダの姿を目で追うと、嬉しそうに一人呟いたのであった――。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
不死身のボッカ
暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。
小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。
逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。
割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。
※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。
※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。
※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。
※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
異世界へ転生した俺が最強のコピペ野郎になる件
おおりく
ファンタジー
高校生の桜木 悠人は、不慮の事故で命を落とすが、神のミスにより異世界『テラ・ルクス』で第二の生を得る。彼に与えられたスキルは、他者の能力を模倣する『コピーキャット』。
最初は最弱だった悠人だが、光・闇・炎・氷の属性と、防御・知識・物理の能力を次々とコピーし、誰も成し得なかった多重複合スキルを使いこなす究極のチートへと進化する!
しかし、その異常な強さは、悠人を巡る三人の美少女たちの激しい争奪戦を引き起こすことになる。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる