異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第四章 森の精霊

第85話 安堵、拘束、そして疑念

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エルシアの森とドルムの里――その手前に広がる道を、リーファ、ミィナ、そしてグラントの三人が風を裂く勢いで駆け抜けていた。

前方に、森と里の入り口が見え始める。

「ふーっ……なんとか魔素を使い切らずに走ってこれたのぉ。これもアマト殿から分けてもらった魔素のおかげじゃわい」

グラントが肩で息をしながらも、ほっとした声を漏らす。

本来なら数日かかる距離。

普通の者なら途中で何度も休憩を入れねばならない道のりである。

しかし三人は一度たりとも立ち止まらず、ひたすら全速力でここまで来ていた。

グラントは特に体力面が壊滅的だったため、本来であれば真っ先に脱落していたはずだ。

事前にアマトから魔素の供給を受けていたおかげで、なんとか脚が動き続けたのだ。


―――


森と里に到着した三人。

とくに変わった様子もなく、いつも通り仕事をしている風景が目に入った。

そこには、魔素供給装置で何やら作業をしているドルクの姿も見えた。

ドルクがこちらに気づくと、手を振り大声で叫ぶ。

「おぉっ!グラントォーーッ、戻ったか!」

グラントも声を張る。

「あぁ、魔石を何とか見つけてのぉ!」

その声を聞きつけ、詰所のドアが勢いよく開いた。

「なに!?もう戻ったのか?」

ルーインが駆け出してくる。

三人の前に走り寄ると、

「思ったより早かったな。ご苦労!」

と、どこか安心したような表情で言った。

続いて、ゆっくりと詰所から出てきたのはセイラスタンであった。

やけに落ち着いた足取りで三人に近づくと、無表情のまま問いかける。

「それで……魔石はどこにある?」

グラントがポケットをゴソゴソと探り――

「これじゃ」

と青く輝く魔石を取り出し、セイラスタンの目の前へ差し出した。

淡い光がその場の空気を揺らす。

セイラスタンがそれを手に取ると鋭い目で見つめまわす。

「まさか偽物ではないだろうな……」

その言葉にリーファが少しだけ反応を示す。

しかし、グラントは落ち着き払って言った。

「何を疑っておる。間違いなく本物じゃ」

その言葉にセイラスタンがグラントの顔を見ると、

「そうか。ご苦労だった。これは私が預かったおこう」

と言って、自分のポケットに目をやって魔石をそこに入れた。

そして再び顔をリーファとグラントに向けようとして、初めてミィナの存在に気が付いた。

「その者は?」

ミィナが少し前に出て、

「申し遅れてしまい申し訳ございません。私はスライム族のリーファと申します」

と挨拶をすると続けた。

「実は、ポタ村に魔獣が現れてここまで逃げおおせてきたところ、お二人にお会いしてここまで連れてきていただきました」

「魔獣だと!?」

セイラスタンが思わず声を上げる。

隣にいたルーインも驚いた様子であった。

「そうか、それは災難であったな。私は族長のセイラスタンだ。ゆっくりしていくとよ……」

と言いかけた時だった。

「!?」

セイラスタンがミィナの腕の中に抱いている小動物に気づき驚きを隠せずにいた。

しばらくルクピーを見つめるセイラスタンにミィナも戸惑いを見せる。

「あの……この子が何か?」

我に返るセイラスタン。

「いや、なんでもない……失礼した。後でいろいろと話を聞きたいことがある。しばらく詰所に三人ともいるように」

と言って、その場をセイラスタンが去っていった。

その様子にリーファとグラントもどこか違和感を感じるのであった。



その後、三人は詰所で待機していた――



「さて、これからどう探ろうかのぉ……」

グラントが腕を組んで唸っていた。

「そうね……ミィナさんに森と里のものを会わせてオーラを見てもらうとか」

とリーファが申し訳なさそうにミィナをチラッと見た。

「いいですよ。皆さんにお会いしましょう」

ミィナが快諾すると、リーファの耳がピクピク動いた。

「……でも、さっきの族長さんなんですが、どこかオーラに深みがあってちょっとわかりづらかったというか……」

そう言ってミィナが言いよどむと、

「まさか、セイラスタンが?それはさすがにあり得んじゃろ。長年付き合ってきたが、ミオルネさんを殺害するような者には思えん」

と、グラントが首を振って否定した。

それに対しミィナも

「そ、そうですよね。さっきはちょっと時間がなくてよくわからなかったんです。きっと勘違いだと思います」

と言って自ら発言を取り下げた。

そんな二人の会話を肯定も否定もせずただ聞くだけのリーファがそこにいた。

しばらくの静寂が訪れた。

その時であった――

詰所の扉がバタンと大きく音をたてて開くと、複数の武装したエルフたちがなだれ込んできたのであった。

「なにごとじゃ!?」

グラントが思わず席を立つと椅子が後ろへ倒れた。

エルフたちは三人を取り囲むように並んだところで、入り口から一人の男が入って来た――ルーインである。

彼は険しい顔をして三人の前に立つと、

「先ほどの魔石だが偽物と判明した。従って、お前たち三人を虚偽報告の罪で拘束する」

と言って、周りのエルフたちに首で拘束の合図を送った。

「偽物だと?なぜ断言できる!」

グラントが僅かに抵抗を試みるも腕を押さえられ、そのまま床に押し付けられてしまった。

そんなグラントを見つめながらルーインが言った。

「バルナックが魔石を鑑定した。あいつの見解では、良くできてはいるが偽物だと断定した。あいつの眼識が確かなのはお前もよく知っているだろ?グラント」

どこか物寂し気に話すルーイン。

グラントは言葉なくその場に臥した。

リーファも特に抵抗することもなく黙って拘束されていた。

ミィナは抱きかかえているルクピーを男たちに取り上げられ、そのまま拘束されてしまった。

「ルククッ!ルククーーッ!」

ルクピーが必死に声を上げる。

「ルクちゃんに乱暴はしないで!」

ミィナがルーインを睨みつける。

そんな彼女の叫びに、ルーインは眉一つ動かさなかった。

「セイラスタンの命令だ。乱暴などしない。だがこの動物を調べさせてもらう必要がある」

そう言うと彼は、そのまま振り向きもせず扉から出て行ったのであった。



ある部屋に一人の男が座っている。

その部屋の扉でノック音がなると、

「入れ」

とその男が答えた。

「失礼します」

入って来たのはルーインであった。

「あいつらはちゃんと捕まえたか?」

ルーインの目の前にいる男はセイラスタンである。

セイラスタンは力を込めてルーインに確認すると、

「はい。三人はいま牢屋に入っております。それと例の動物を連れてまいりました」

とルーインが言って、ルクピーをセイラスタンに差し出した。

セイラスタンはルクピーを掴むと、

「おぉ、そうか。ご苦労であった。下がっていいぞ」

とルーインも見ずに、ほくそ笑む。

しかし、ルーインの眼が少し尖る。

「族長、魔石は偽物であっても魔素は十分に入っているとバルナックが申しております。なので、三人を拘束する必要はあるのでしょうか?」

そんなルーインを見ることもなく、ルクピーを見つめながらセイラスタンが答えた。

「精霊の結界に偽の魔石を使うことはしきたりが許さん。お前は、そんなことも忘れたのか?」

ルーインが食い下がる。

「しかし、そもそも先日は守り人ではない我々が人工的に魔素を供給したではないですか。それをいまさら……」

そう言いかけた時、

「私が決めたのだ。それにお前は逆らうのか?」

今度はルーインを睨みながらセイラスタンが遮るように言った。

「……わかりました。それでは失礼します」

ルーインは腑に落ちない表情のままセイラスタンの部屋を出て行った。

一人部屋に残ったセイラスタン。

その顔は怪しげな笑みで満たされていたのだった――。
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