異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

文字の大きさ
83 / 93
第四章 森の精霊

第83話 侮る者、あしらわれる者となる――

しおりを挟む
一面を黒雲が覆い、泉の畔に重苦しい気配が沈み込む。

バナムは前回と同様に精霊発見装置を手にしていた。

おそらく精霊探しを続けていたのであろう。

だが、今は違う。

その目は、すでにアマトたちを“敵”と断定していた。

「この辺りに精霊がいるはずだとは思うが……まぁいい。まずはお前たちを倒す方が先だ」

バナムが精霊発見装置を無造作に地面へ置くと、アマトたちの方へ歩み寄って来た。

背後の部下たち10人もそれに続く。

バナムがアマト達の目前で立ち止まると、背後で部下たちは揃って膝をつき、頭を垂れた。

「俺の名はバナム。ラグナメア軍、ドルギー将軍配下の者だ」

淡々とした名乗り。

しかし、その声には相手を見下す色がはっきり滲んでいた。

アマトとルダルは何も言わず、じっとバナムを見据える。

重い沈黙が落ちた――その時。

ルノアとエメルダが、迷いなくアマトの前へ踏み出し、バナムとの間に割って入った。

「ほう、勇ましいお嬢さんたちだ。だが、お前たちの相手をする暇はない。邪魔だ。どけ」

バナムの眼中にないようである。

「まったく。言ってくれるねぇ」
「まぁ、それぐらい威勢を張ってもらった方が倒し甲斐があるってもんだ」

二人も真っ向から喧嘩を売る。

バナムの顔からは表情が消えた。

「仕方ない。お前たち、この二人を消せ」

片腕を水平に上げ、後ろに控える部下たちに命令を下すと、部下たちが立ち上がり、バナムの前に出て戦闘態勢をとる。

それに対しルノアとエメルダも構えると、スライムとゴブリンの形態に変身した。

その姿を見たバナムが思わずあざ笑う。

「ふっ。たいそうな威勢を張っていたからどんな魔物かと思えば、スライムにゴブリンか?話にならんな」

部下たちも同じように薄ら笑いを浮かべる。

「一瞬で決着《けり》をつけろ」

バナムが一言発すると、次の瞬間、部下たちが飛び出した。

ルノアとエメルダはお互い左右逆方向へ飛ぶ。

すると、部下たちは二手に分かれルノアとエメルダをすかさず追う。

二人はそのまま真っすぐ飛び続けた。

「先ほどまでの威勢はどこへ行った。逃げ回っているだけでは勝負にならんぞ」

バナムが上空を見上げ、ルノアとエメルダの様子を嘲笑する。

「まぁいい。時間の問題だろう。俺はルダルと異世界人を叩くとするか」

そう言うとバナムがアマトとルダルの方へ振り返る。

そして、ニヤリと笑うと低い声で言い放った。

「さぁ、ショウタイムだ」

ただ、次の瞬間――。

「勝負をしてやってもいいが……お前の眼は節穴か?あれのどこが逃げ回っているように見える」

ルダルが空を舞っている二人を仰いで言った。

「なに?」

そう言ってバナムも空を見上げると、先ほどとは異なる光景が目に写った。

逃げ回っていると思っていた二人の魔物は、空中をものすごいスピードで飛び回っていたのだ。

部下たちは明らかにそのスピードについていけていない。

「お前たち、何をしているのだ!?さっさと叩き落さんか!」

バナムの怒りの声が無意識のうちに発せられていた。

一方、ルノアとエメルダは――。

「はははっ!こいつらオレたちのスピードに全然ついてこれてないぞ!」

ルノアは完全にはしゃいでいる。

「まったくだ!あの忌々しい虫どもより遅ぇぞ!」

エメルダが鼻で笑った。

「ったく。これもあの鬼教官のおかげってことか!」
「あぁ、悔しいがそのとおりだな!」

二人は眼下のルダルの方を見た。

ルダルは、そんな二人を見て口元だけわずかに緩める。



『あいつら……本当に見違えたな』

アマトの精神空間のゼルヴァスが感心した。

『きゃぁーっ、二人とも!かっくいいぃぃーっ!』

ティアマトも大はしゃぎである。

『あぁ、確かにな』

アマトはそう呟くと、笑みを零して上空の二人を見上げた。



「じゃぁ、そろそろ叩き落しますか?」
「あぁ、そうだな!」

そう言い合い、二人はそれぞれ反転すると、追ってくる異世界人の方へ突っ込んだ。

次の瞬間、異世界人たちは地面に叩きのめされていた。

その様子を見たバナム。

さっきまでの冷静さが嘘のように動揺して、目の前の部下たちに怒鳴る。

「な、なにをやっているのだ!さっさと立ち上がれ!!」

すると、部下たちは何とか立ち上がってきた。

「よ、よし。仕方ない。俺も戦うぞ」

そう言って腰の剣を抜いて上を向くと、そこに二人はいなかった。

その刹那――

「あれぇ?結構しぶといね」
「黙って寝ときゃぁ、死ななくて済んだものを」

その声にビクッと驚いてその方向へ体を向けるバナム。

そこには、余裕しゃくしゃくのルノアとエメルダの姿があった。

「ふ、ふざけるな……たかがスライムとゴブリンの分際で!」

バナムの額に汗が滲む。

ルノアとエメルダの顔がポカンとするも、

「いいよ。今度こそ叩きのめしてやる!」
「お前たち、後悔すんなよ!」

と構えた。

一瞬の沈黙――

バッ!

次の瞬間、飛び出したのはバナムであった。

ルノアとエメルダ目掛けて攻撃を仕掛けるバナム。

そのスピードは確かに早かった――早かったが、それは普通の異世界人に比べてである。

ルノアとエメルダは、二人の間に突進してくるバナムの軌道を読み切ると、身体をわずかにひねってかわし、すれ違いざま――

ゴッ!!

「ぐはっ……!?」

二人同時の肘打ちが、真上からバナムの背中へ叩き込まれた。

直撃した瞬間、

ズドン!!

バナムはそのまま地面へ叩き落ちた。

土煙が舞い、バナムは顔面から地面に沈んだまま動かない。

「ゴホッ、おいおい、勘弁してよ」
「土埃が舞ったじゃないか、ゴホッ」

二人がむせる。

その言葉にバナムは目を見開き、歯ぎしりを立てると、すぐに後ろへ跳ねあがる。

「おのれぇぇぇっ。思い知らせてやる!」

そう言うと、右の胸ポケットから注射器のようなものを取り出す。

魔素ドーピングのアルティマナである。

そして、そのまま自分の心臓に突き立てた。

すると、淡い青のオーラが彼の全身を包み込んだかと思うと、その肉体が膨れ上がり筋肉質の体が浮き彫りになったのだ。

「ふっ、俺の本気を見せてやる」

と言うと、すかさず剣をルノアとエメルダの方へ掲げて唱えた。

「”青矢”」

次の瞬間、剣の先から青い光の矢がルノアとエメルダを襲ったのだった。

ガキィィィン!

金属同士が激突したような鋭い音が辺りに響き、直後、二人のいた地点に砂煙が柱のように吹き上がった。

「ふっ、はっはっ。跡形もなく吹き飛んだぞ!」

バナムが大きく笑う。

だが――

砂煙が薄れはじめると、そこに二つの影がゆっくりと浮かび上がる。

「……なっ!?」

バナムが目を見開いた。

「……だから、砂埃を立てるなよ」
「泉で洗い流す手間が増えたじゃねぇか」

声と共に姿を現したのは、槍を構えるルノアと棍棒を振り切っているエメルダであった。

そう、二人は咄嗟にアイテムを取り出して、その一撃を真正面で弾き返していたのである――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

湖畔の賢者

そらまめ
ファンタジー
 秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。  ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。  彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。 「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」  そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。  楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。  目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。  そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。

異世界へ転生した俺が最強のコピペ野郎になる件

おおりく
ファンタジー
高校生の桜木 悠人は、不慮の事故で命を落とすが、神のミスにより異世界『テラ・ルクス』で第二の生を得る。彼に与えられたスキルは、他者の能力を模倣する『コピーキャット』。 最初は最弱だった悠人だが、光・闇・炎・氷の属性と、防御・知識・物理の能力を次々とコピーし、誰も成し得なかった多重複合スキルを使いこなす究極のチートへと進化する! しかし、その異常な強さは、悠人を巡る三人の美少女たちの激しい争奪戦を引き起こすことになる。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...