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第一章 光の雪
第13話 魔素とスキル、そして野球で覚える異世界能力
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『おい、やめろっ……ぐはっ、ははっ、や、やめろって言ってんだろォ!!』
ゼルヴァスの情けない悲鳴が、精神空間にむなしく響き渡る。
ティアマトのくすぐり攻撃は止まらない。
まるで幼児にいたずらを仕掛けるような、平和で愉快な地獄がそこに広がっていた。
その光景を斜め上から眺めながら、アマトは深くため息をついた。
『……なあ、ティアマト』
『ん? なぁに?』
ティアマトは手を止めて振り返る。
無邪気な笑顔だ。
『そもそも、“魔素”ってなんなんだ?
俺が大量に持ってるって言ってたけど、持ってると何がどうなるんだ?』
『えぇ~っ!? そんなことも知らないの、アマトちゃん……? うぶねっ。うふっ』
ティアマトはどこか得意げな表情だ。
(いや、こっちは初めてなんだっての……)
心の中でツッコミを入れながら、アマトは続きを促す。
『魔素っていうのはね、万物のエネルギーよ。
生命の根源、命そのもの。生きとし生けるものはみんな、等しく魔素を持ってるの』
『……魂、ってことか?』
『そうね。あなたの世界で“魂”って呼ばれてたもの、それが“魔素体”なの。
死んだ人間の魂はカオスにたどり着いて――資質によって異世界に転生するか、ただの魔素として漂うの』
ティアマトはふぅっとため息をついて、やや怒り気味に続けた。
『ちなみにね、アマトちゃんがカオスにいたとき、
めちゃくちゃな数の魔素体が流れ込んできて、大混雑だったのよ。
たぶん、向こうの世界で一気に人が死んだんでしょうね……
おかげで、処理が大変で。残業よ、残業。深夜手当も出ないのに!』
アマトの脳裏に、あのカオスで見た光景がよみがえる。
――線香花火のように輝いていた、無数の光。
(……やはり、あれが魂だったのか)
『ちなみに、カオスで魔素を吸いすぎると、崩壊しちゃうの。
でも、大量の魔素を取り込んで転生した者は、その世界でとてつもない力を手に入れることになるわ。
アマトちゃんは、特異中の特異。
あり得ないほど長くカオスに居座って、限界なく魔素を吸収してたの。
……まったく、バケモノね』
『……それ、褒めてんのか?』
そこへ、ゼルヴァスが割って入ってきた。
『話の腰を折って悪いが……お前、アマトとか言ったな。
魔素の使い方が無茶苦茶すぎる。あんな雑な放出、下手すりゃ死人が出るぞ』
『使い方がわからねぇんだから、仕方ねぇだろ』
『よし、ならばこの俺様が伝授してやる。
天才魔王ゼルヴァス様の直伝だ。
だから今すぐ……俺様を解放しろ!!』
『無理よ』
ティアマトがきっぱりと即答した。
『あなたの魔素量も異常なの。このままカオスに吸収されれば、魔素が増えてうれしいわっ』
ティアマトが構え直すと、ゼルヴァスは露骨にビクついた。
『や、やめろ!』
そこに、アマトが手を挙げて割って入る。
『……なるほどな。魔素の使い方、か』
『そうだアマト! お前なら、俺様の教えで即座にモノにできる!』
『けど、お前を解放する方法がわからねぇ。だからそれまでは、無条件で教えてもらう』
『……おのれ、俺様を愚弄する気か!』
『それとも、ティアマトにくすぐられながら、カオスの底まで転げ落ちてみるか?』
『ま、待て待て待て! 教える! なんでも教えるからティアマトを止めてくれ!!』
(……ちょろいな)
アマトは心の中で勝利を確信した。
『とはいえ、俺、座って精神集中とかそういうの苦手なんだよな』
『で、では……体を動かしながら覚える、とか……?』
ゼルヴァスが焦り気味に提案する。
『魔素操作は、身体の“動き”と“意志”が鍵だ。力でねじ伏せるんじゃない。
投げる、捕る、叩く、走る――”動き”と”意志”を連動させるんだ』
『そういえば、魔獣に石を投げたとき、石にオーラみたいなもんが巻き付いてた気がしたな』
『そう。それを見て俺様はお前を見つけた。そして、こうなってしまったわけだが……』
『でも、“恩恵”のときは、お前が“スキルを唱えろ”って言っただろ』
『その通り。”動き”と”意志”の連動のほかに、魔素を効率的に制御するのが“スキル”だ。
スキルを唱えることで、魔素の流れをある程度自動で整えてくれる。
お前にもいくつかスキルがあるだろ?頭の中で探すイメージをしてみろ。スキルリストが浮かぶ』
アマトが試してみると、たしかに一覧のようなものが思い浮かんだ。
『なるほど。“アルティメイト”とか“スタンダード”って書いてあるな。これは?』
『スキルのグレードだ。
上から順に、アルティメイト、エクストラ、スタンダード、そして何も付いてないのが最下位のノーマルだ。
お前はこの前、“恩恵”っていうスタンダードスキルを使っただけで、村人全員と森を回復させた。
化け物じみてる』
(アルティメイト、エクストラ……。
なんか、どっかで聞いたことがあるようなスキルのレベル名だな……転ス……いや、気のせいか)
『そしてな……お前は、わからなかっただろうが、
あのとき俺様が魔族界に張っていた結界まで、用途の違うスキルでぶっ壊しやがった』
『そうなのか?それは、なんていうか。悪かった』
と素直にアマトが謝り、ゼルヴァスがちょっとおののく。
『で、このスキルって、どうやって手に入れるんだ?』
『基本は、スキルホルダーを倒すこと。
このスキルシステムは神が”あること”に対応するために作り出したもので、
撃破した相手のレベルに応じてスキルが譲渡される仕組みになってる』
『そういえば……魔獣倒したとき、頭の中に変な声が響いてたな。ゲームっぽいやつ。あれか』
『まさにそれだ。とにかく、お前は魔素の使い方をきちんと学ばなきゃ、何が起こるかわからん。世界が壊れるぞ』
『わかった。ちゃんと覚えないとな……。身体の”動き”と”意志”の連動、そして”スキル”か』
アマトはしばらく考え込み、口を開いた。
『……野球、だな。元の世界でやってた遊びだ』
ボールを投げる、捕る、走る、バットを振る、かつての自分の姿が、アマトの脳裏に浮かぶ。
『どうせなら楽しんだ方がいい。村人たちにも協力してもらうか。あいつらなら、きっと向いてる』
『野球ぅ!? ゲーム!? なにそれ楽しそう!!』
アマトの脳裏情景を見て、ティアマトが無邪気にはしゃぎ始める。
ゼルヴァスは口だけは澄まして、
『く、くだらん遊戯だ……』
と言いつつも、その口元には、かすかな笑みが浮かんでいた。
ゼルヴァスの情けない悲鳴が、精神空間にむなしく響き渡る。
ティアマトのくすぐり攻撃は止まらない。
まるで幼児にいたずらを仕掛けるような、平和で愉快な地獄がそこに広がっていた。
その光景を斜め上から眺めながら、アマトは深くため息をついた。
『……なあ、ティアマト』
『ん? なぁに?』
ティアマトは手を止めて振り返る。
無邪気な笑顔だ。
『そもそも、“魔素”ってなんなんだ?
俺が大量に持ってるって言ってたけど、持ってると何がどうなるんだ?』
『えぇ~っ!? そんなことも知らないの、アマトちゃん……? うぶねっ。うふっ』
ティアマトはどこか得意げな表情だ。
(いや、こっちは初めてなんだっての……)
心の中でツッコミを入れながら、アマトは続きを促す。
『魔素っていうのはね、万物のエネルギーよ。
生命の根源、命そのもの。生きとし生けるものはみんな、等しく魔素を持ってるの』
『……魂、ってことか?』
『そうね。あなたの世界で“魂”って呼ばれてたもの、それが“魔素体”なの。
死んだ人間の魂はカオスにたどり着いて――資質によって異世界に転生するか、ただの魔素として漂うの』
ティアマトはふぅっとため息をついて、やや怒り気味に続けた。
『ちなみにね、アマトちゃんがカオスにいたとき、
めちゃくちゃな数の魔素体が流れ込んできて、大混雑だったのよ。
たぶん、向こうの世界で一気に人が死んだんでしょうね……
おかげで、処理が大変で。残業よ、残業。深夜手当も出ないのに!』
アマトの脳裏に、あのカオスで見た光景がよみがえる。
――線香花火のように輝いていた、無数の光。
(……やはり、あれが魂だったのか)
『ちなみに、カオスで魔素を吸いすぎると、崩壊しちゃうの。
でも、大量の魔素を取り込んで転生した者は、その世界でとてつもない力を手に入れることになるわ。
アマトちゃんは、特異中の特異。
あり得ないほど長くカオスに居座って、限界なく魔素を吸収してたの。
……まったく、バケモノね』
『……それ、褒めてんのか?』
そこへ、ゼルヴァスが割って入ってきた。
『話の腰を折って悪いが……お前、アマトとか言ったな。
魔素の使い方が無茶苦茶すぎる。あんな雑な放出、下手すりゃ死人が出るぞ』
『使い方がわからねぇんだから、仕方ねぇだろ』
『よし、ならばこの俺様が伝授してやる。
天才魔王ゼルヴァス様の直伝だ。
だから今すぐ……俺様を解放しろ!!』
『無理よ』
ティアマトがきっぱりと即答した。
『あなたの魔素量も異常なの。このままカオスに吸収されれば、魔素が増えてうれしいわっ』
ティアマトが構え直すと、ゼルヴァスは露骨にビクついた。
『や、やめろ!』
そこに、アマトが手を挙げて割って入る。
『……なるほどな。魔素の使い方、か』
『そうだアマト! お前なら、俺様の教えで即座にモノにできる!』
『けど、お前を解放する方法がわからねぇ。だからそれまでは、無条件で教えてもらう』
『……おのれ、俺様を愚弄する気か!』
『それとも、ティアマトにくすぐられながら、カオスの底まで転げ落ちてみるか?』
『ま、待て待て待て! 教える! なんでも教えるからティアマトを止めてくれ!!』
(……ちょろいな)
アマトは心の中で勝利を確信した。
『とはいえ、俺、座って精神集中とかそういうの苦手なんだよな』
『で、では……体を動かしながら覚える、とか……?』
ゼルヴァスが焦り気味に提案する。
『魔素操作は、身体の“動き”と“意志”が鍵だ。力でねじ伏せるんじゃない。
投げる、捕る、叩く、走る――”動き”と”意志”を連動させるんだ』
『そういえば、魔獣に石を投げたとき、石にオーラみたいなもんが巻き付いてた気がしたな』
『そう。それを見て俺様はお前を見つけた。そして、こうなってしまったわけだが……』
『でも、“恩恵”のときは、お前が“スキルを唱えろ”って言っただろ』
『その通り。”動き”と”意志”の連動のほかに、魔素を効率的に制御するのが“スキル”だ。
スキルを唱えることで、魔素の流れをある程度自動で整えてくれる。
お前にもいくつかスキルがあるだろ?頭の中で探すイメージをしてみろ。スキルリストが浮かぶ』
アマトが試してみると、たしかに一覧のようなものが思い浮かんだ。
『なるほど。“アルティメイト”とか“スタンダード”って書いてあるな。これは?』
『スキルのグレードだ。
上から順に、アルティメイト、エクストラ、スタンダード、そして何も付いてないのが最下位のノーマルだ。
お前はこの前、“恩恵”っていうスタンダードスキルを使っただけで、村人全員と森を回復させた。
化け物じみてる』
(アルティメイト、エクストラ……。
なんか、どっかで聞いたことがあるようなスキルのレベル名だな……転ス……いや、気のせいか)
『そしてな……お前は、わからなかっただろうが、
あのとき俺様が魔族界に張っていた結界まで、用途の違うスキルでぶっ壊しやがった』
『そうなのか?それは、なんていうか。悪かった』
と素直にアマトが謝り、ゼルヴァスがちょっとおののく。
『で、このスキルって、どうやって手に入れるんだ?』
『基本は、スキルホルダーを倒すこと。
このスキルシステムは神が”あること”に対応するために作り出したもので、
撃破した相手のレベルに応じてスキルが譲渡される仕組みになってる』
『そういえば……魔獣倒したとき、頭の中に変な声が響いてたな。ゲームっぽいやつ。あれか』
『まさにそれだ。とにかく、お前は魔素の使い方をきちんと学ばなきゃ、何が起こるかわからん。世界が壊れるぞ』
『わかった。ちゃんと覚えないとな……。身体の”動き”と”意志”の連動、そして”スキル”か』
アマトはしばらく考え込み、口を開いた。
『……野球、だな。元の世界でやってた遊びだ』
ボールを投げる、捕る、走る、バットを振る、かつての自分の姿が、アマトの脳裏に浮かぶ。
『どうせなら楽しんだ方がいい。村人たちにも協力してもらうか。あいつらなら、きっと向いてる』
『野球ぅ!? ゲーム!? なにそれ楽しそう!!』
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