異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第二章 粗野な者たち ※ギャグ多めです

第17話 嵐の予感――魔獣召喚兵器到着。強欲と色欲は何を思う……

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――封建王政国家ガルドリアの城

その中枢に位置する王の間には、装飾の豪奢さに反して、重苦しいよどんだ空気が漂っていた。

天井には金細工が施され、赤絨毯の敷かれた床を囲むように高価な柱が並ぶ。

その玉座に、アークリオス三世は肥えた体をどっかりと沈めていた。

首から腰にかけて飾られた過剰な宝飾が、些細な動きにも反応してじゃらじゃらと音を立てる。

「……遅い。いつになったら“魔獣召喚兵器”が届くのだ。オルギーのやつ、まさか嘘をついたのではあるまいな……。
まったく、これだから異世界人は信用ならぬ!」

苛立ち混じりの独白に、乾いた声がかぶさった。

「俺たちも異世界人だがな」

その一言に、アークリオスの体がびくりと跳ねる。声の主に目を向けると、

王の間の柱の陰から、いつの間にか現れていた男――プレオナが、無表情のまま静かに立っていた。

「い、いつの間に……いやいや、そなたは別じゃ! ガルドリアに尽くしてくれる……わ、わが友人《とも》、強欲のプレオナよ。はは、ははは……!」

額に脂汗をにじませながら、アークリオスは必死に愛想笑いを浮かべた。

――そのとき、王の間の隅

赤いビロード張りのソファに脚を組みながら、退屈そうに遠いまなざしで窓の外を眺めていた女が、くすっと唇をゆるめた。

「ふぅん? 友人、ねぇ……前にも同じこと言ってた気がするわ」

脚を組み、深い黒のドレスをまとった女――ラグニア。

ストレートで腰まで届く艶やかな黒髪を指先で弄びながら、物憂げな横顔を見せていた。

すらりと伸びた脚線美、引き締まった腰からヒップのライン、伏し目がちの長い睫毛。

わずかに動くだけで、空間が艶めくような色気を帯びている。

アークリオスは、にやけた顔で両手を広げる。

「おぉ、わが愛しき色欲のラグニアよ。そなたまでそんなことを……ふふふ」

その視線は、周囲の目も気にせず、食い入るようにラグニアの胸元から太ももへと這っていく。

(くっ……何度見ても完璧すぎる……! あの肌、あのくびれ、あの脚線美

……すべてが淫靡なる神の創造よ……!……あぁ、いずれ、いずれわしの夜伽に……)

喉の奥で涎がこみ上げるのをこらえ、咳払い一つで誤魔化す。

ラグニアはその視線に気づいたのか、脚を組み直しながら、冷めた目でアークリオスを一瞥した。

「……で、その兵器って、どんなものなのかしら?」

問いかけに、脇に控えていた老臣が一歩前に出て、恭しく頭を垂れる。

「説明させていただきます。

“魔獣召喚兵器”とは、七つの大罪様方と魔王ゼルヴァスとの大戦後、ラグナメア国が開発した兵器でございます。

異空間のタルタロスに封じられている魔獣を、賢者の石を媒体としてオリンポスに召喚する、極めて危険な禁術装置でございます。

射程距離は三百キロメートル以内、精密な位置指定はできず、連続使用は不可能。

また、使用される賢者の石――すなわち魔素の量と質により、召喚される魔獣の強さが大きく左右されるとのことです。」

「なお、召喚された魔獣の行動を制御することも、察知することすらできず、成り行きに任せるしかないようです……」

と老臣が声をひそめるように付け加えた。

「ふむ……多少、手綱が効かぬということか……」

一瞬だけ眉をひそめたものの、すぐに大きく手を広げて笑い出す。

「――まぁ、よい! どうせ奴らは敵地で暴れるのじゃ!」

そして満面の笑みで、

「すばらしぃ! これさえあれば、魔族など取るに足らん!」

アークリオスが、したり顔で満足げにうなずいた、その直後――

「くだらん」

プレオナが、氷のような声で切り捨てた。

「その気になれば、俺たちが魔族界へ行って、蹴散らしてくることもできる」

「ま、待て! ゼルヴァスがどうなったかもわからぬ魔族界へ、万が一にも何かあったら……!」

「……俺たちが、負けるとでも思っているのか?」

冷たい声音が王の間に響き、空気が凍りつく。

「も、もちろん、そなたたちが負けるなどとは思っておらん! 

しかし……前の大戦でも、七人がかりでようやくだったわけで……い、いや、念のためじゃ、念のため!」

アークリオスはしどろもどろに言い訳を続ける。

ラグニアがふっと笑った。

「私たち、あれからもっと強くなっているの。ゼルヴァスが復活していたとしても――

今なら、一人でも勝てる気がするわ」

アークリオスの頬が引きつる。無理やり笑みを貼り付けたまま、喉を鳴らす。

「そ、そうか、そうか……ならばなおさら、今の魔族界へそなたたちが行くまでもない。

この兵器で十分じゃ!

そなたたちには――そう、隣国からの攻撃に備えていてもらいたいのじゃ!」

(……この愚か者がっ。魔族界になど行ってもらっては困るのだ。

召喚した魔獣が暴走して、我が国で大暴れでもされたら誰がそれを止めるというのだ!

それに、プレオナはどうなっても構わんが、ラグニアがこの地に少しの間でもいなくなっては、

わしがさみしいではないか……あの肌、あの唇……あぁ、いずれ……)

にたにたと笑いながら、アークリオスは自分勝手な妄想にふけっていた。

「――ふぅん、賢者の石ねぇ」

ラグニアは何かを言いかけたが、興味を失ったように視線を宙に流した。

「ガルドリアの賢者の石は、他の二国に比べて少ないのではないか?」

プレオナが冷静に問いかける。

「心配無用じゃ。賢者の石ならいくらでも“おる”。

我が国には原石が眠っておるのじゃ。ただ、加工には多少の手間がかかる。

だが、明日には一回分の魔素が完成する予定じゃ。兵器が届き次第、召喚を試してみるつもりじゃ!」

そのとき――

「ご報告申し上げます!」

扉が勢いよく開き、衛士が膝をついて声を張る。

「ラグナメア国より、殿下への贈り物が到着いたしました!」

「待ちわびたぞっ! ようやく来おったかっ! 噂をすればなんとやら、じゃな!」

と高らかな声が王の間に響く。

「よし、わしが直々に見に行ってやろうぞ!」

アークリオスは叫ぶや否や、じゃらじゃらと宝石を鳴らしながら立ち上がり、腹を揺らして玉座を後にした。

その背を、ラグニアはため息まじりに見送り、ドレスの裾を整えてそっと横顔をそむける。

プレオナは無言のまま、その場を離れた。

王の間には、言葉にならぬ静寂だけが残された。

それはまるで、“何かが確かに動き始めた”ことを告げる合図のように――。

ーーー

空は黒い雲に覆われ、太陽の光を遮っていた。

あたり一帯に、湿った空気が静かに沈んでいる。

遠くで雷が低く鳴った。

ポタ村の入り口に、一団の影が静かに立ち止まっている。

その先頭に立つのは、大きな棍棒を肩に担ぎ、にやりと笑みを浮かべた女――

ゴブリン族の女頭《おんながしら》、エメルダ。

その背後には、複数のゴブリンたちが無言で控えている。

風は止み、空気が張り詰める。

――その静けさは、これから起こる嵐を予感させるかのようだった。
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