6 / 20
第6話 氷の館
しおりを挟む
朝、砦の鐘は鳴らなかった。代わりに、風が長く鳴っていた。石壁の継ぎ目をなぞり、回廊を縫い、空気だけを震わせて去っていく。
ローザはその音で目を覚まし、膝を抱えたまま、昨夜窓辺に広げた黒い土を確かめる。指の腹をそっと押し当てると、ひやりとした冷たさの奥に、かすかな弾力があった。土は死んでいない。眠っているだけ。
扉の外に、足音の代わりに金属の擦れる音が近づいて、止まる。軽い二度のノック。返事をすると、鉄の従者が無言で扉を押し、盆を置いた。平たい黒パン、塩気の強いチーズ、薄いスープ。従者の仮面に目はない。口もない。言葉が入っていく余地が、そもそも作ってないみたいだ。
「おはよう」
ローザはいつもの癖で話しかけ、笑ってしまう。返事がないのは分かっている。けれど、口に出した言葉は、自分の耳で自分に戻ってくる。それでいい朝も、ある。
パンを少し齧り、スープで喉を温める。昨夜押した契印の跡は、痛まなかった。薬指に浅い凹みが残っているだけだ。凹みに親指を重ねると、そこだけ体温が鈍い。合図は生きている。ここにいていい、という合図。
部屋を出ると、廊下の影は薄くて長い。窓は細く、風が糸のように抜けていく。壁に埋まった鉱脈がわずかに光を返し、通るたびに彼女の輪郭を細くなぞった。角を曲がるたび、鉄の従者が一体、決まった距離を保ってついてくる。護衛か監視か、その境目もまた、薄くて長い。
「庭はどこ?」
従者に問うと、無言で歩幅を少し広げた。付いてくるように、という合図だと受け取るしかない。上階へ、回廊を渡り、暗い半円の扉を潜る。冷たい空気が頬の色を奪い、次の瞬間、眩しい白に目が細くなった。
そこが庭だった。といっても、王都の屋敷みたいな庭ではない。四角い中庭に、石畳が敷き詰められ、その間の割れ目に短い草が押し出されるように生えている。隅に低い壇。土が浅く盛られて、いちおう「畝」と呼べる線がいくつも並ぶ。今は雪の薄い膜に覆われ、光が硬く跳ね返ってくる。
「……寒い」
思わず声が漏れた。寒さには種類がある。王都の冬は肌の表面を刺す寒さだったが、ここは骨に直接触れてくる。空気自体が密度を増し、肺の奥で音を立てて固まっていくみたいだ。
従者は壇の縁に置かれた木箱の蓋を開けた。古びた移植ゴテ、短いスコップ、麻紐、ひび割れた陶製の札。道具は揃っているが、使われた形跡は薄い。彼女はゴテを手に取って重さを量り、箱の端に置いた。
「ここで、土を起こしてもいい?」
無言。だが従者は一歩退き、道具箱の前を空けて立った。許可と受け取る。
ローザは厚手の手袋の上からさらに革の手袋を重ね、ひざまずいた。雪の薄皮を手で払い、凍った土の表面をゴテでそっと割る。硬い。刃が跳ね返される。力を加える角度を変え、今度は押す。刃先が少し入った。ひと筋が生まれる。ひと筋に沿って、土は少しずつほどける。ほどく、という手応えが嬉しい。ほどけるものは、もう一度結べる。
窓辺の「石の腹」の土を少し持ってきていた。黒く乾いた土。彼女はそれを掌に広げ、起こした溝にそっと混ぜ、指先でならす。自分にしか意味の分からない、小さな儀式みたいなものだ。ここに、あの温室の呼吸を少し連れてきたかった。呼吸は感染する。よい息は、土に伝わる。
麻袋から、エミリアがくれた銀花の種を一粒だけ取り出し、凍みる空気から守るように身を屈める。両手で小さな窪みをつくり、種を置く。軽い。軽すぎて、指の上では重みが分からない。では、言葉で重みを与えるしかない。
「――ここで生きて」
誰にも聞こえないくらいの声で言い、土をかぶせ、手のひらでそっと押した。
「無駄だ」
背後で声が落ちた。振り返ると、回廊の陰からカイゼルが歩み出てくるところだった。光を反射しない灰の衣、風を切らない足取り。銀の瞳だけが、庭の白に馴染まず、浮いている。
「ここは風が全て持っていく。雪は遅れて返す。土は浅く、石は深い」
「知ってる。知った上で、置くの」
ローザは立ち上がらず、膝のまま顔を上げた。彼は庭の端で足を止め、薄く笑った。
「王都の娘は、たいてい初日に泣くか怒るかだ」
「泣くのは後に取っておくわ。怒るのは、目の前の誰かに向けるものじゃない。ここに怒るのは、私が嫌だ」
「ここに?」
「この庭に、この風に、この石に。ここは私の敵じゃない」
カイゼルの笑みが消える。視線が彼女の手元、わずかに違う色をした土の部分に落ちた。
「それは」
「王都の、いえ、私の温室の土。ほんの少しだけ」
「泥仕合を持ち込むな、という意味のことわざがあるが」
「違う。挨拶を連れてきただけ」
「挨拶」
「よそから来た者は、必ず挨拶をするものよ。土にも、風にも。そうしないと、居心地が悪くなる」
彼は黙り、短く息を吐く。
「好きにしろ。ただし、好きにするなら責任を持て」
「もちろん」
ローザは頷き、指先の土を撫でる。冷たい、でも生きてる。今はそれでいい。
その日から、彼女は毎朝庭に出た。雪が薄くても厚くても、風が刃物でも鈍でも、関係なく。鉄の従者はいつも同じ距離を保ち、道具箱は毎回、前日と同じ位置に戻されていた。夜には炉の火を落とす前に、日記を開く。
〈一日目――土は息が浅い。風が早口。手の中の種は静か〉
〈二日目――雪は言葉を飲み込む。従者にも挨拶をした。“おはよう”は石に吸われた〉
〈三日目――土の温度が、少し上がる。カイゼルが通りかかった。無駄だ、とまた言った。無駄は私の敵じゃない、と答えた〉
言葉で日が重なる。書くたび、胸のざわめきが細くなる。夜は静かだが、静かすぎない。砦のどこかで、たまに低い音が鳴る。深呼吸みたいな音。彼の「しまう」部屋の前なのかもしれない。彼もまた、何かと折り合いをつけている。
四日目の朝は、風が鳴らなかった。雪も降らなかった。音が少ない朝は、逆にいろんな音が聞こえる。自分の靴の革が折れる音、布が擦れる音、指の中の血の動く音。ローザはいつものように膝をつき、土を撫で――止まった。
表面に、針の先みたいな割れ目。昨日までも見た気がしたが、今日は違う。割れ目の縁に、湿り気の濃い影。影の底で、何かが押し返すように盛り上がっている。彼女は息を止め、指先を離した。押せば壊す。待てば見える。
影が、ほんの少し裂けた。薄い薄い緑がひとかけら、光の方へ顔を向ける。緑、と呼ぶには頼りない、半分は土の色のままの、かすかな色。
「――出た」
声が勝手に漏れた。従者は動かない。風も、まだ遠くにいる。ローザは両手を土の左右に置き、芽に触れないように囲む。冷たい。この冷たさの中で、どうして前へ来ようと思えたのか。芽は答えない。でも、前へ来ている。理由は、たぶん、あとでついてくる。
そのとき、背中に気配が落ちた。彼女は振り返らずに言う。
「無駄じゃなかった」
「偶然だ」
カイゼルの声には、苦くも甘くもない硬さがある。「雪の下で、去年の根が残っていたのかもしれない」
「だったら、なおさら嬉しい。誰かの続きに、やっと追いつけた」
「……」
彼は黙り、ゆっくりと回廊から降りてきた。足音が石を選ぶ。芽の前に立つと、彼は腰を折り、遠くから覗き込むみたいにして目を細めた。
「小さい」
「大きい芽はないの。最初はみんな、小さい」
「雪はまた降る」
「じゃあ、雪の上に布をかける。従者に頼めば、きっと黙って持ってきてくれる」
「従者は黙る」
「でも、してくれる」
カイゼルは、芽ではなくローザの手を見た。薄い泥が指先に線を作っている。契印の凹みの上にその線が交わり、ちいさな十字ができていた。
「お前の指は、王都の女の指ではない」
「ひどい」
「褒めた」
唐突で、少し遅れて意味が届く褒め方だった。ローザは笑って、泥の十字を見下ろした。
「ねえ、カイゼル」
「なんだ」
「ここに“庭”を作ってもいい?」
「いま見ているのは何だ」
「庭の入口。庭って、線じゃなくて空気だから。人が“ここは庭だ”って呼吸できる場所のことを、たぶん私は庭と呼びたい」
「呼吸は感染する、と言ったな」
「うん。うつすわ」
彼は立ち上がり、石畳をひとつ蹴った。蹴った、と言っても音は出ない。ただ、石がひとつだけ息を吐く。
「好きにしろ。好きにするなら、責任を持て」
「二度言った」
「大事なことは、二度言う」
「分かった」
ローザは背筋を伸ばし、従者に目をやる。「布と、薄い板で小さな覆いを作りたいの。風避けと、雪よけ」
従者は無言で回れ右をし、音もなく去る。命令を理解し、実行に移す。言葉はいらない。いらないが、言葉を使いたい日もある。
「あなたは」
「なんだ」
「無駄って言いにくくなったでしょう」
カイゼルは答えず、代わりに回廊の影を見上げた。風がそこだけ、彼の前で遠慮して回り道をする。
「芽は、雪に勝たない」
「勝たなくていい。同じ場所にいて、同じ空気を吸って、春になれば勝手に背が伸びる。勝つとか負けるとかじゃない。ここは戦場じゃないから」
「戦場は、いつだって他人が作る」
「じゃあ、そのときは避難所も作る。庭の隅に」
彼の口元が、ほんのわずかにほどけた。笑いにはならない。けれど、笑いに十分近い。
従者が布と板を運んできた。ローザは手際よく、板で小さな三角形の骨組みを作り、布をかける。布の端を石で押さえる。芽の真上には隙間を少し残す。空気の出入り口。彼女は覆いに手を添え、布越しに声を落とす。
「寒いけど、がんばって」
「芽は聞かない」
「私には聞こえる」
「幻聴だ」
「そう。あなたにもいつか聞こえる」
カイゼルは何も返さず、覆いの影を一瞥して回廊に上った。去り際、ささやくように言った。
「……声は、氷を砕く音に似ている」
「何の?」
「お前の声だ」
彼はそれだけ言い、影に消えた。風が戻る。砦の上を回り、庭の角で渦を巻き、布の端を一度だけ持ち上げ、また置いた。置かれた布は、さっきより落ち着いた。
昼を過ぎると、空が厚くなってきた。雪はまだ降らない。けれど、降る前の匂いがする。ローザは部屋に戻り、器にぬるい湯を用意して庭に運んだ。布の外側の土に少しずつ落とす。湯気がすぐ消える。湯の代わりに、彼女の呼吸を深くする。呼吸が深くなると、時間も少し深くなる。深い時間は、芽の味方だ。
夕方、焚き火の匂いが回廊の端から流れてきた。誰が焚いているのか分からない火。砦は無人に近いのに、火の匂いは人を安心させる。ローザは覆いの布を指で弾き、小さく頷いた。
「明日も来るからね」
夜、暖炉の火が落ち着くころ、彼女は日記を開いた。
〈四日目――芽。勝ち負けじゃない。覆いを作る。声は氷を砕く音に似ている、と言われた。氷は痛まないで砕ける? 砕けるなら、どこへ行く?〉
書き終えると、窓を少し開けて外気を入れた。冷たい空気は、眠気を整えてくれる。遠くで、低い音が一度だけ鳴る。砦の呼吸。彼の呼吸。庭の小さな覆いの布は、雪の前触れの風で、わずかに鳴った。
翌朝、薄雪。覆いの布に薄く積もり、角のところで細い線をつくる。ローザは手袋を外して、その線をそっと払った。布の下から、緑が少しだけ濃くなっているのが見える。芽は、雪の重みを経験した。経験したものは、次に同じ重さが来ても、少しだけ上手に受け止められる。
「おはよう」
いつもの挨拶のあと、彼女は覆いに耳を当てた。土の音は聞こえない。けれど、土の「静けさ」が聞こえる。静けさにも色がある。今日は、すこし柔らかい。昨日より、春に近い。
回廊の上に、灰色の影が立っていた。カイゼルは何も言わない。言わない沈黙は、昨日より長い。沈黙は、だいたい観察か、思案の時間だ。どちらでもいい。どちらでも、今は味方だ。
「ねえ」
ローザは顔を上げずに言った。「この庭に名前をつけてもいい?」
「名は持っていかれる」
「持っていかれてもいい。持っていく相手が、ここなら」
カイゼルは少し考えて、短く答えた。
「好きにしろ」
「じゃあ――“風の入口”」
「入口?」
「出口でもいい。入口と出口は、よく似てるの。ここに入ってきた風が、春になって出ていく場所」
「春は、ここに来るのか」
「来させる」
彼は、その言葉に何も足さなかった。足さないことで、少しだけ受け入れた。
その日から、庭は「風の入口」になった。鉄の従者は相変わらず黙っているが、道具箱が少し整理され、板や布が乾きやすい位置に並べられるようになった。カイゼルは庭を横切るとき、覆いの端を無言で押さえ、風がいたずらをした形跡を整えた。整え方はぶっきらぼうで、正確だった。
夜。灯りを落とし、目を閉じる前に、ローザは小さく呟いた。
「ここで、春に間に合う」
返事はない。けれど、砦のどこかで、氷が微かにきしむ音がした。砕ける音ではない。きしみは、予告だ。次の季節の予告。彼女の声が届き、届いた声が、どこかの氷に細い亀裂を入れた。亀裂は、いずれ光になる。
冷たい世界に、息を一つ置いた。息は薄い。けれど、確かに温度を持っていた。芽と、土と、石と、風。その全てに、彼女の声が薄く染み込む。春は約束ではない。春は、作業だ。彼女は明日も起きて、風の入口に行く。覆いの布を持ち上げ、目を凝らし、また挨拶をする。おはよう、と。そこから、春が始まる。
ローザはその音で目を覚まし、膝を抱えたまま、昨夜窓辺に広げた黒い土を確かめる。指の腹をそっと押し当てると、ひやりとした冷たさの奥に、かすかな弾力があった。土は死んでいない。眠っているだけ。
扉の外に、足音の代わりに金属の擦れる音が近づいて、止まる。軽い二度のノック。返事をすると、鉄の従者が無言で扉を押し、盆を置いた。平たい黒パン、塩気の強いチーズ、薄いスープ。従者の仮面に目はない。口もない。言葉が入っていく余地が、そもそも作ってないみたいだ。
「おはよう」
ローザはいつもの癖で話しかけ、笑ってしまう。返事がないのは分かっている。けれど、口に出した言葉は、自分の耳で自分に戻ってくる。それでいい朝も、ある。
パンを少し齧り、スープで喉を温める。昨夜押した契印の跡は、痛まなかった。薬指に浅い凹みが残っているだけだ。凹みに親指を重ねると、そこだけ体温が鈍い。合図は生きている。ここにいていい、という合図。
部屋を出ると、廊下の影は薄くて長い。窓は細く、風が糸のように抜けていく。壁に埋まった鉱脈がわずかに光を返し、通るたびに彼女の輪郭を細くなぞった。角を曲がるたび、鉄の従者が一体、決まった距離を保ってついてくる。護衛か監視か、その境目もまた、薄くて長い。
「庭はどこ?」
従者に問うと、無言で歩幅を少し広げた。付いてくるように、という合図だと受け取るしかない。上階へ、回廊を渡り、暗い半円の扉を潜る。冷たい空気が頬の色を奪い、次の瞬間、眩しい白に目が細くなった。
そこが庭だった。といっても、王都の屋敷みたいな庭ではない。四角い中庭に、石畳が敷き詰められ、その間の割れ目に短い草が押し出されるように生えている。隅に低い壇。土が浅く盛られて、いちおう「畝」と呼べる線がいくつも並ぶ。今は雪の薄い膜に覆われ、光が硬く跳ね返ってくる。
「……寒い」
思わず声が漏れた。寒さには種類がある。王都の冬は肌の表面を刺す寒さだったが、ここは骨に直接触れてくる。空気自体が密度を増し、肺の奥で音を立てて固まっていくみたいだ。
従者は壇の縁に置かれた木箱の蓋を開けた。古びた移植ゴテ、短いスコップ、麻紐、ひび割れた陶製の札。道具は揃っているが、使われた形跡は薄い。彼女はゴテを手に取って重さを量り、箱の端に置いた。
「ここで、土を起こしてもいい?」
無言。だが従者は一歩退き、道具箱の前を空けて立った。許可と受け取る。
ローザは厚手の手袋の上からさらに革の手袋を重ね、ひざまずいた。雪の薄皮を手で払い、凍った土の表面をゴテでそっと割る。硬い。刃が跳ね返される。力を加える角度を変え、今度は押す。刃先が少し入った。ひと筋が生まれる。ひと筋に沿って、土は少しずつほどける。ほどく、という手応えが嬉しい。ほどけるものは、もう一度結べる。
窓辺の「石の腹」の土を少し持ってきていた。黒く乾いた土。彼女はそれを掌に広げ、起こした溝にそっと混ぜ、指先でならす。自分にしか意味の分からない、小さな儀式みたいなものだ。ここに、あの温室の呼吸を少し連れてきたかった。呼吸は感染する。よい息は、土に伝わる。
麻袋から、エミリアがくれた銀花の種を一粒だけ取り出し、凍みる空気から守るように身を屈める。両手で小さな窪みをつくり、種を置く。軽い。軽すぎて、指の上では重みが分からない。では、言葉で重みを与えるしかない。
「――ここで生きて」
誰にも聞こえないくらいの声で言い、土をかぶせ、手のひらでそっと押した。
「無駄だ」
背後で声が落ちた。振り返ると、回廊の陰からカイゼルが歩み出てくるところだった。光を反射しない灰の衣、風を切らない足取り。銀の瞳だけが、庭の白に馴染まず、浮いている。
「ここは風が全て持っていく。雪は遅れて返す。土は浅く、石は深い」
「知ってる。知った上で、置くの」
ローザは立ち上がらず、膝のまま顔を上げた。彼は庭の端で足を止め、薄く笑った。
「王都の娘は、たいてい初日に泣くか怒るかだ」
「泣くのは後に取っておくわ。怒るのは、目の前の誰かに向けるものじゃない。ここに怒るのは、私が嫌だ」
「ここに?」
「この庭に、この風に、この石に。ここは私の敵じゃない」
カイゼルの笑みが消える。視線が彼女の手元、わずかに違う色をした土の部分に落ちた。
「それは」
「王都の、いえ、私の温室の土。ほんの少しだけ」
「泥仕合を持ち込むな、という意味のことわざがあるが」
「違う。挨拶を連れてきただけ」
「挨拶」
「よそから来た者は、必ず挨拶をするものよ。土にも、風にも。そうしないと、居心地が悪くなる」
彼は黙り、短く息を吐く。
「好きにしろ。ただし、好きにするなら責任を持て」
「もちろん」
ローザは頷き、指先の土を撫でる。冷たい、でも生きてる。今はそれでいい。
その日から、彼女は毎朝庭に出た。雪が薄くても厚くても、風が刃物でも鈍でも、関係なく。鉄の従者はいつも同じ距離を保ち、道具箱は毎回、前日と同じ位置に戻されていた。夜には炉の火を落とす前に、日記を開く。
〈一日目――土は息が浅い。風が早口。手の中の種は静か〉
〈二日目――雪は言葉を飲み込む。従者にも挨拶をした。“おはよう”は石に吸われた〉
〈三日目――土の温度が、少し上がる。カイゼルが通りかかった。無駄だ、とまた言った。無駄は私の敵じゃない、と答えた〉
言葉で日が重なる。書くたび、胸のざわめきが細くなる。夜は静かだが、静かすぎない。砦のどこかで、たまに低い音が鳴る。深呼吸みたいな音。彼の「しまう」部屋の前なのかもしれない。彼もまた、何かと折り合いをつけている。
四日目の朝は、風が鳴らなかった。雪も降らなかった。音が少ない朝は、逆にいろんな音が聞こえる。自分の靴の革が折れる音、布が擦れる音、指の中の血の動く音。ローザはいつものように膝をつき、土を撫で――止まった。
表面に、針の先みたいな割れ目。昨日までも見た気がしたが、今日は違う。割れ目の縁に、湿り気の濃い影。影の底で、何かが押し返すように盛り上がっている。彼女は息を止め、指先を離した。押せば壊す。待てば見える。
影が、ほんの少し裂けた。薄い薄い緑がひとかけら、光の方へ顔を向ける。緑、と呼ぶには頼りない、半分は土の色のままの、かすかな色。
「――出た」
声が勝手に漏れた。従者は動かない。風も、まだ遠くにいる。ローザは両手を土の左右に置き、芽に触れないように囲む。冷たい。この冷たさの中で、どうして前へ来ようと思えたのか。芽は答えない。でも、前へ来ている。理由は、たぶん、あとでついてくる。
そのとき、背中に気配が落ちた。彼女は振り返らずに言う。
「無駄じゃなかった」
「偶然だ」
カイゼルの声には、苦くも甘くもない硬さがある。「雪の下で、去年の根が残っていたのかもしれない」
「だったら、なおさら嬉しい。誰かの続きに、やっと追いつけた」
「……」
彼は黙り、ゆっくりと回廊から降りてきた。足音が石を選ぶ。芽の前に立つと、彼は腰を折り、遠くから覗き込むみたいにして目を細めた。
「小さい」
「大きい芽はないの。最初はみんな、小さい」
「雪はまた降る」
「じゃあ、雪の上に布をかける。従者に頼めば、きっと黙って持ってきてくれる」
「従者は黙る」
「でも、してくれる」
カイゼルは、芽ではなくローザの手を見た。薄い泥が指先に線を作っている。契印の凹みの上にその線が交わり、ちいさな十字ができていた。
「お前の指は、王都の女の指ではない」
「ひどい」
「褒めた」
唐突で、少し遅れて意味が届く褒め方だった。ローザは笑って、泥の十字を見下ろした。
「ねえ、カイゼル」
「なんだ」
「ここに“庭”を作ってもいい?」
「いま見ているのは何だ」
「庭の入口。庭って、線じゃなくて空気だから。人が“ここは庭だ”って呼吸できる場所のことを、たぶん私は庭と呼びたい」
「呼吸は感染する、と言ったな」
「うん。うつすわ」
彼は立ち上がり、石畳をひとつ蹴った。蹴った、と言っても音は出ない。ただ、石がひとつだけ息を吐く。
「好きにしろ。好きにするなら、責任を持て」
「二度言った」
「大事なことは、二度言う」
「分かった」
ローザは背筋を伸ばし、従者に目をやる。「布と、薄い板で小さな覆いを作りたいの。風避けと、雪よけ」
従者は無言で回れ右をし、音もなく去る。命令を理解し、実行に移す。言葉はいらない。いらないが、言葉を使いたい日もある。
「あなたは」
「なんだ」
「無駄って言いにくくなったでしょう」
カイゼルは答えず、代わりに回廊の影を見上げた。風がそこだけ、彼の前で遠慮して回り道をする。
「芽は、雪に勝たない」
「勝たなくていい。同じ場所にいて、同じ空気を吸って、春になれば勝手に背が伸びる。勝つとか負けるとかじゃない。ここは戦場じゃないから」
「戦場は、いつだって他人が作る」
「じゃあ、そのときは避難所も作る。庭の隅に」
彼の口元が、ほんのわずかにほどけた。笑いにはならない。けれど、笑いに十分近い。
従者が布と板を運んできた。ローザは手際よく、板で小さな三角形の骨組みを作り、布をかける。布の端を石で押さえる。芽の真上には隙間を少し残す。空気の出入り口。彼女は覆いに手を添え、布越しに声を落とす。
「寒いけど、がんばって」
「芽は聞かない」
「私には聞こえる」
「幻聴だ」
「そう。あなたにもいつか聞こえる」
カイゼルは何も返さず、覆いの影を一瞥して回廊に上った。去り際、ささやくように言った。
「……声は、氷を砕く音に似ている」
「何の?」
「お前の声だ」
彼はそれだけ言い、影に消えた。風が戻る。砦の上を回り、庭の角で渦を巻き、布の端を一度だけ持ち上げ、また置いた。置かれた布は、さっきより落ち着いた。
昼を過ぎると、空が厚くなってきた。雪はまだ降らない。けれど、降る前の匂いがする。ローザは部屋に戻り、器にぬるい湯を用意して庭に運んだ。布の外側の土に少しずつ落とす。湯気がすぐ消える。湯の代わりに、彼女の呼吸を深くする。呼吸が深くなると、時間も少し深くなる。深い時間は、芽の味方だ。
夕方、焚き火の匂いが回廊の端から流れてきた。誰が焚いているのか分からない火。砦は無人に近いのに、火の匂いは人を安心させる。ローザは覆いの布を指で弾き、小さく頷いた。
「明日も来るからね」
夜、暖炉の火が落ち着くころ、彼女は日記を開いた。
〈四日目――芽。勝ち負けじゃない。覆いを作る。声は氷を砕く音に似ている、と言われた。氷は痛まないで砕ける? 砕けるなら、どこへ行く?〉
書き終えると、窓を少し開けて外気を入れた。冷たい空気は、眠気を整えてくれる。遠くで、低い音が一度だけ鳴る。砦の呼吸。彼の呼吸。庭の小さな覆いの布は、雪の前触れの風で、わずかに鳴った。
翌朝、薄雪。覆いの布に薄く積もり、角のところで細い線をつくる。ローザは手袋を外して、その線をそっと払った。布の下から、緑が少しだけ濃くなっているのが見える。芽は、雪の重みを経験した。経験したものは、次に同じ重さが来ても、少しだけ上手に受け止められる。
「おはよう」
いつもの挨拶のあと、彼女は覆いに耳を当てた。土の音は聞こえない。けれど、土の「静けさ」が聞こえる。静けさにも色がある。今日は、すこし柔らかい。昨日より、春に近い。
回廊の上に、灰色の影が立っていた。カイゼルは何も言わない。言わない沈黙は、昨日より長い。沈黙は、だいたい観察か、思案の時間だ。どちらでもいい。どちらでも、今は味方だ。
「ねえ」
ローザは顔を上げずに言った。「この庭に名前をつけてもいい?」
「名は持っていかれる」
「持っていかれてもいい。持っていく相手が、ここなら」
カイゼルは少し考えて、短く答えた。
「好きにしろ」
「じゃあ――“風の入口”」
「入口?」
「出口でもいい。入口と出口は、よく似てるの。ここに入ってきた風が、春になって出ていく場所」
「春は、ここに来るのか」
「来させる」
彼は、その言葉に何も足さなかった。足さないことで、少しだけ受け入れた。
その日から、庭は「風の入口」になった。鉄の従者は相変わらず黙っているが、道具箱が少し整理され、板や布が乾きやすい位置に並べられるようになった。カイゼルは庭を横切るとき、覆いの端を無言で押さえ、風がいたずらをした形跡を整えた。整え方はぶっきらぼうで、正確だった。
夜。灯りを落とし、目を閉じる前に、ローザは小さく呟いた。
「ここで、春に間に合う」
返事はない。けれど、砦のどこかで、氷が微かにきしむ音がした。砕ける音ではない。きしみは、予告だ。次の季節の予告。彼女の声が届き、届いた声が、どこかの氷に細い亀裂を入れた。亀裂は、いずれ光になる。
冷たい世界に、息を一つ置いた。息は薄い。けれど、確かに温度を持っていた。芽と、土と、石と、風。その全てに、彼女の声が薄く染み込む。春は約束ではない。春は、作業だ。彼女は明日も起きて、風の入口に行く。覆いの布を持ち上げ、目を凝らし、また挨拶をする。おはよう、と。そこから、春が始まる。
22
あなたにおすすめの小説
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
追放された公爵令息、神竜と共に辺境スローライフを満喫する〜無敵領主のまったり改革記〜
たまごころ
ファンタジー
無実の罪で辺境に追放された公爵令息アレン。
だが、その地では神竜アルディネアが眠っていた。
契約によって最強の力を得た彼は、戦いよりも「穏やかな暮らし」を選ぶ。
農地改革、温泉開発、魔導具づくり──次々と繁栄する辺境領。
そして、かつて彼を貶めた貴族たちが、その繁栄にひれ伏す時が来る。
戦わずとも勝つ、まったりざまぁ無双ファンタジー!
パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。
さくら
ファンタジー
勇者パーティーから「お前は役立たずだ」と追放され、冒険者ギルドからも追い出され、最後には国からすら追放されてしまった俺――カイル。
居場所を失った俺が選んだのは、「追放された者だけのギルド」を作ることだった。
仲間に加わったのは、料理しか取り柄のない少女、炎魔法が暴発する魔導士、臆病な戦士、そして落ちこぼれの薬師たち。
周囲から「無駄者」と呼ばれてきた者ばかり。だが、一人一人に光る才能があった。
追放者だけの寄せ集めが、いつの間にか巨大な力を生み出し――勇者や王国をも超える存在となっていく。
自由な農作業、にぎやかな炊き出し、仲間との笑い合い。
“無駄”と呼ばれた俺たちが築くのは、誰も追放されない新しい国と、本物のスローライフだった。
追放者たちが送る、逆転スローライフファンタジー、ここに開幕!
【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様
岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです
【あらすじ】
カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。
聖女の名前はアメリア・フィンドラル。
国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。
「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」
そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。
婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。
ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。
そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。
これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。
やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。
〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。
一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。
普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。
だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。
カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。
些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
【完結】虐げられた男装令嬢、聖女だとわかって一発逆転!~身分を捨てて氷の騎士団長に溺愛される~
久遠れん
ファンタジー
「お前は公爵家の恥だ」
――魔力ゼロと宣告された日、家族の愛も未来も、全てを失った。
前世の記憶を持つ公爵令嬢リーベは、冷たい瞳の家族に心の中で別れを告げる。
もう、虐げられるだけの弱い私じゃない。
ドレスを脱ぎ捨て、男装の騎士「フィーネ」として、偽りの人生を歩き始めた。
たった一つの目的、この家から完全に自由になるために。
しかし、運命は皮肉だった。配属されたのは、私を最も嫌っていたはずの義兄・パシェンが率いる騎士団。
冷酷な彼に正体がバレれば終わり……のはずが、なぜか彼は“男”である私をやたらと気にかけてくる。
「まさかお義兄様って、男の子がお好きなの!?」
彼の不器用な優しさに戸惑い、封印したはずの想いが揺れる。
そんな偽りの平穏は、魔物の大群によって打ち砕かれた。仲間が倒れ、血に濡れていく義兄の姿……。
*******
完結いたしました!ありがとうございます!!!
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる