掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト

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第3話 ゴミ置き場の墓場と、ぼろ靴の女

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 城の裏側は、想像していたよりずっと遠かった。

 石畳は途中で途切れ、土の道に変わり、壁際の魔導灯もどんどん間引かれていく。
 人通りはほとんどなくて、たまに通るのは荷車を押す下働きか、眠たそうな衛兵くらい。

 そのさらに奥。
 城壁の内側ギリギリ、外界との境界線みたいな場所に、それはあった。

 ――王城ゴミ集積所。

 立てかけられた木の札に、ぞんざいな字でそう書かれている。
 近づくだけで、いろんな匂いが鼻を刺した。
 湿った布の匂い。鉄の匂い。油の匂い。腐りかけた野菜の甘ったるさ。
 それら全部がぐちゃぐちゃに混ざって、重たい空気になって沈んでいる。

(……ここが、私の職場)

 胸の中で、何度もそう繰り返す。
 繰り返さないと、現実として飲み込めない気がした。

 踏み出した足が、ぎゅ、と変な音を立てる。
 見下ろせば、泥と、なにか分からない黒い染みと、ちぎれた紙が靴裏にくっついていた。

「おや、新顔だね」

 不意に、しゃがれた声が飛んできた。

 リーナが顔を上げると、ゴミ山の手前、ひしゃげた木箱の上に座っている女がいた。

 年は……六十より上、七十より下、ってところだろうか。
 白髪混じりの灰色の髪を後ろでひとまとめにし、皺の刻まれた顔には、細い目が鋭く光っている。
 何より目についたのは、その足元。

 ぼろっぼろの靴。

 革靴だったらしいものは、もはや原型をとどめていない。
 つま先は擦り切れて穴が開き、そこから厚手の靴下が覗いている。
 靴紐は別の布で何重にも補修されていて、それでも今にもほどけそうだ。

 両手には分厚い革の手袋。
 何度も洗ったのか、擦り切れて色が抜けている。

 その格好で、彼女は王城の一角とは思えないほど自然体に、木箱に腰掛けていた。

「えっと、本日付で配属になりました、リーナ・フィオレです」

 リーナが慌てて頭を下げると、女はふん、と鼻を鳴らした。

「フィオレねぇ。上品な苗字だこと。……で?」

「で、とは?」

「ここに落とされた理由だよ。城のゴミ置き場に回されるのなんて、大抵“どっかでやらかした”奴さ。  変なもの壊したとか、貴族の靴に水ぶっかけたとか、上役に口答えしたとか。あたしの経験上ね」

 目を細めるというより、獲物を品定めするみたいにじっと見られて、リーナは肩を縮めた。

「え、えっと……私は、その……」

 言葉に詰まる。

 工房での一件をどう説明したらいいのか、自分でも整理がついていなかった。
 “計器に出ない波長が見える”なんて言ったところで、どうせまた変な顔をされるのがオチだ。

 少し迷って、結局、一番短い言葉を選ぶ。

「……虚偽申告、だそうです」

「ほぉ?」

 女の眉がぴくりと動く。

「“だそうです”、ね。自分ではそう思ってないって顔だ」

「だって、本当に感じたんです。排水管の奥で、変な波が――」

 そこまで言って、自分で「あ」と口を押さえる。
 条件反射みたいに、喋りすぎたと感じてしまった。

 女は、しばらくリーナの顔をじっと見ていたが、やがてふっと笑った。

「いいねぇ、その顔」

「え?」

「“自分はおかしくないのに、おかしいって扱われてきました”って顔。ここの奴ら、だいたいそんな顔してるよ」

 言ってから、女は木箱からひょいと降りた。
 ぼろ靴が、地面をぺちゃんと踏む。

「マルタ・グレン。ここの掃除婦たちのまとめ役だよ。  戦時中は補給兵として前線を走り回ってたけどね。戦が終わったら、誰もそんなこと覚えちゃいない。  で、そのまま城の裏側に流れ着いて、今に至るってわけさ」

 語り口は軽いけれど、その奥に沈んでいる年輪みたいな重さが、言葉の端々に滲んでいた。

「ほ、補給兵……?」

「そうそう。前線の連中に食いもんと弾薬と靴底を届ける仕事。  敵の矢の雨の中を走り抜けて、味方がくたばらないようにってね。  でもまあ、勲章は前に立ってたお偉いさんの胸元にしか増えなかったよ」

 肩をすくめて笑うけれど、その目はちっとも笑っていなかった。

「城壁のこっち側は、そういうもんさ。表に見せたいもんだけ、光の下に出す。  残りは全部、見えないところに押し込める」

 マルタはゆっくりと腕を広げ、背後にそびえる“それ”を示す。

 ゴミ山。

 それは、もはや「山」としか言いようがなかった。

 金属片がざくざくと積み重なり、その間に壊れた魔導器具が半ば埋もれている。
 割れた食器。折れた椅子の脚。穴の開いた鎧。
 布の塊は、元は誰かの服だったのだろう。
 ところどころに、黒く炭化した木材や、溶けて固まったガラスの塊が突き出ている。

 風が吹くたびに、金属同士がこすれ合って、かしゃり、と寂しい音が鳴った。

「ここはな、城中の“要らないもの”が流れ着く場所さ」

 マルタが、ぼろ靴で地面をコツンと叩く。

「物も、人も、同じだよ、嬢ちゃん」

 その言葉は、思っていた以上にまっすぐ、リーナの胸に刺さった。

 “要らないもの”。
 工房で言われた言葉と、重なる。

 リーナは、ぎゅっとエプロンの端を握りしめた。
 布地は薄くて、頼りない。
 でも、今はそれが自分の居場所の証明みたいで、手放すのが怖い。

「そんな顔するんじゃないよ」

 マルタが、ふいにリーナの額を指でこつんと突いた。

「ここに来る奴はみんな、最初はそんな顔する。  “なんで自分がこんな場所に”って。  でも、一ヶ月もすれば分かるさ。上の連中だけが城ってわけじゃないってね」

「……どういう意味ですか」

「自分の足と目で確かめな。掃除ってのは、城の“裏側全部”を見られる仕事なんだ」

 そう言って、マルタは木箱の脇からモップを二本引っ張り出した。
 一つは長く、一つは少し短い。

「ほれ、新入り。まずは足元の泥からだ。上ばっかり見てると、転ぶよ」

 一本を放り投げてくる。
 リーナは慌てて受け止めた。
 柄が思ったより重くて、腕がぐらりと揺れる。

「き、今日から、お世話になります。よろしくお願いします」

「よろしくされてやるよ。給金ぶんは働いてもらうけどね」

 マルタはにやりと笑い、自分もモップを肩に担いだ。

「まずはざっくり全体の通路を確保する。荷車が通れなきゃ話にならない。  危ないもんがあったら手を挙げて呼べ。刃物とか、変な魔導器具とかな。  “見るからに変なもん”は、素手で触るんじゃないよ。分厚い手袋は伊達じゃないんだ」

 指先で自分の手袋をひらひらさせて見せる。

「分かりました」

 リーナは、深呼吸をひとつしてから、ゴミ山の縁に近づいた。

 足元には割れた陶器の破片や釘が散らばっている。
 慎重に歩幅を決めないと、すぐに靴底を貫かれそうだ。

 ――そのときだった。

 視界の端で、ふっと、何かが瞬いた。

(……え?)

 リーナは思わず足を止め、見直す。

 ゴミの山。
 さっきまでと何も変わらない、はずの光景。

 でも、その中に――

 ちいさな光があった。

 金属片と布切れの隙間。
 誰も気に留めないような、隅っこ。
 そこから、淡い灯りが、ほそくほそく、漏れている。

 工房で誰にも理解されなかった、あの“異質な波長の光”。

 冷たいはずの空気の中で、その一点だけが、かすかなぬくもりを持って揺れていた。

(……やっぱり)

 胸の奥が、きゅっと掴まれたような感覚になる。

 違う。
 ここは工房の廊下でも、管理された魔導管の中でもない。
 「異常なし」と書類で片付けられる場所じゃない。

 もっと、乱雑で。
 もっと、見捨てられていて。
 だからこそ、隠しようのない“異物”がそのまま顔を出している。

「何やってんだい、新入り。手を止めるとすぐサボり扱いだよ?」

 マルタの声が飛んでくる。
 リーナはびくりと肩を跳ねさせ、慌ててモップを動かし始めた。

「す、すみません!」

 水を含んだモップが、地面の泥をぬるりとなぞる。
 こびりついた汚れが、少しずつ剥がれていく感触。
 その単純な作業に、意外なほど集中力を持っていかれる。

 頭の中で、さっき見た光がちらちらと瞬き続ける。

(ここでも、視えるんだ)

 工房で笑われ続けてきた“感覚”が、今も変わらず、彼女の世界を彩っている。
 むしろ、ここではさらに鮮明だ。

 金属片の山のあちこちから、弱々しい光が立ち上っている。
 割れた魔導器具の欠片。
 誰かに捨てられた装飾品。
 使い物にならないと判断されて放り込まれた機械の部品。

 それぞれが、かすかな波長を発している。

 寂しそうに。
 悔しそうに。
 誰かに、まだここにいるよって伝えたいみたいに。

(――こんなに、あったんだ)

 工房で見えていたものなんて、氷山の一角だったのかもしれない。
 “要らないもの”が集まる場所にこそ、彼女の視える世界は広がっている。

「難しい顔してモップかけるんじゃないよ。床が余計に曇って見える」

 気づけば、すぐ横にマルタがいた。
 いつのまにか距離を詰めてきている。さすが、裏側全部を歩き回ってきた女だ。

「い、いや、その、ちょっと考え事を……」

「工房に置いてきたもののことかい?」

 図星を刺されて、リーナは言葉に詰まる。

「その顔はだいたい、上の世界に未練たらたらの顔さ。  “もう一度認められたい”“いつか戻れるかも”ってね」

「……そんな、単純じゃないです」

「単純じゃないから、余計にしんどいんだよ」

 マルタは鼻を鳴らしながら、ゴミ山の一角をざっと見渡した。

「城の中には三つの場所がある。  “見せるための場所”と、“仕事のための場所”と、“押し込められる場所”。  あんたが居た王立工房は、そのうち“見せるため”と“仕事”の境目くらい。栄誉もあれば、理不尽もある」

「じゃあ、ここは?」

「ここは、“押し込められる場所”のど真ん中さ」

 マルタは肩をすくめる。

「見せたくないもの。見たくないもの。忘れたいもの。  その全部がここに来る。人間の記憶と一緒にね」

「……あんまり、いいところってわけじゃないですよね」

「表向きはね」

 マルタの目が、ふっと細く笑う。

「でも、忘れられた場所には、忘れられた“本音”が顔を出す。  あんたみたいに、“見えすぎる奴”には、案外悪くない場所かもしれないよ」

 その言葉に、リーナの胸がちくりとした。

「……“見えすぎる奴”、ですか」

「工房の連中があんたの話聞くときの顔、よく知ってるよ。  城の裏側にいるとね、噂は早いんだ。“計器に出ないものが見える、厄介な見習いがいる”って」

 うんざりしたように言うのに、その声にはどこか庇うような優しさも混じっていた。

「で、ここではどうなんです?」

 リーナは、思い切って聞いてみる。

「私が“変なものが見える”って言っても、やっぱり笑われるんですか?」

「さぁね」

 マルタはモップを振り上げ、ぴしゃりと泥の上に叩きつけた。

「“見るからに危なそうなもん”が見えたら言いな。  笑ってる余裕があるかどうかは、その時の状況次第だよ」

 それは、返事のようでいて、返事じゃない。

 でも少なくとも、“最初から信じないと決めつけている目”ではなかった。

(……ここでは、誰も笑わない)

 工房では、あの話を出すだけで、場が凍った。
 呆れた溜息。皮肉な笑い。あきらめた視線。

 ここでは、誰も驚きもしない。
 ただ、「危なそうなら言え」とだけ言われる。

 その違いが、胸の奥にじんわりと広がる。

 ――息が、少しだけ楽になった気がした。

 最底辺に落とされたはずなのに。
 城の誰もが敬遠する場所にいるはずなのに。

 工房の白い廊下を歩いていたときより、肺に入る空気がずっと軽い。

(情けない)

 そう思う一方で、その“軽さ”を拒めない自分がいた。

 モップを握る手に、自然と力がこもる。

 床を磨くたびに、泥の下から本来の石の色が顔を出す。
 ゴミの山の足元が、ほんの少しだけ歩きやすくなる。

 その単純な変化が、今のリーナにはやけにまぶしく感じられた。

「いいよ、その調子」

 マルタが、いつの間にか背後から声をかける。

「上に戻る気があるなら止めない。  でも、戻れなくても生きていける場所を、自分で作っとくのも大事だよ」

「自分で、作る……」

「そうさ。あんたの足で。あんたの手で。  誰かに“ここがお前の居場所だ”って決めつけられるんじゃない。  “ここを居場所にしてやる”って、自分で決めるのさ」

 ぼろ靴の女は、ゴミ山を背に、王城の裏側全部を知っている目で笑った。

 リーナは、モップを握り直す。
 手のひらにできかけた小さな水ぶくれが、じんと痛んだ。

 その痛みが、妙にリアルで、妙に心地よかった。

 ――ここは、墓場。
 誰かが捨てたものの、終わりの場所。

 でも同時に、ここから何かが始まるのかもしれない。

 山の中で、またひとつ、小さな光が瞬いた。

 それに気づいたのは、この日、この場所で――
 リーナただ一人だけだった。
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