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知っている人
しおりを挟む「打ってもらうなんて無理…読まないでください。恥ずかしいから」
高遠さんは、いやいやをするように首を振る。首を振るたびにアタシの髪も揺れて首筋があらわになる。
ふうっと笑いを含んだ息をつき、首筋にキスを落とした。
アタシは、なんの罰ゲームかという程心臓が早く打ち、身動きすらできない。動いたならさらに触れてしまいそうで体を固くするだけだ。
「読まないなんて無理だよ。今度は逃げられないように、どんなことでも知っておきたい。それにこれは放送される台本だよ。制作に関わるテレビ局の人の目にも触れるし、放送されれば視聴する人もいるんだ」
「それはわかってます。でも知っている人と、知らない人とじゃ違うから……」
ふいに背中からギュッと抱きしめられる。背中に引き締まった筋肉を感じて、男性の筋ばった腕がアタシを閉じ込める。
「訂正して。俺は『知っている人』なんかじゃない。あなたを好きで、付き合って彼氏になりたいただの男なんだよ」
見えないけれど、切ない声から高遠さんが必死に言い募っているのがわかる。
すぐに答えられずにいると、さらにギュッと腕に力がこもる。高遠さんも不安になることがある。芸能人だからって、何も変わることなんてない…
「高遠さんのことをずっと好きでした。自分に自信が持てなくて逃げ出したのはアタシのほうです。いつか…高遠さんと同じ物を見たくて、この一年頑張ってきました」
「OKだと思っていい?」
「もちろんです」
頷いて、抱きしめてくれる高遠さんの腕に、自分の手を重ねた。
「生まれてきて、今が一番幸せ」
その声を聞いたら、涙が溢れてきた。涙は頬を伝い、アタシの手だけでなく、高遠さんの腕まで濡らした。
「泣いてるの」
「嬉しいの。嬉しくても、こんなに涙が出るんだね」
涙を止めたくて目頭に力を入れてみたけれど、ちっとも止まることがなく、腕を解いて向き合った高遠さんがハンカチで拭ってくれた。
せっかく綺麗にしたマスカラやお化粧も落ちてしまっているだろうし、きっと鼻も赤くなっている。
好きな人には、みっともない泣き顔なんて見せたくないのに。
「大丈夫だよ。カワイイ」
高遠さんは、おでこにキスをすると横抱きにするように抱きしめてくれた。
優しい言葉はさらに涙をさそったけれど、高遠さんは髪をなでて抱きしめていてくれた。
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