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27>> お父様との決別
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「お父様。
わたくしは小さな頃から欠陥品だと蔑まれ、生まれてきた事を非難されてきました。人から愛情を貰った記憶すらないのです。お父様がわたくしに向けるそれは愛情などではありません。自分の所有物を手放したくないだけです。
わたくしが生きる上での衣食住を満たしてくださり、必要な教養を付けさせて下さった事には心から感謝しております。
しかし人は、それだけでは生きてはいけないのです。
心を壊されてまで、自分に悪意しか向けてはくれない場所に居続けたいとは思えません。
わたくしは、この家や貴方に恩など感じたことはありません。ですからもう何を言われてもわたくしが心を変えることはありません。
生まれた時点で家の恥であり、婚約すら解消されて傷物になったわたくしがこの家に籍を置いていてもパーシバル侯爵家が馬鹿にされ続けるだけです。
どうか、お願いです。
わたくしを正式に勘当してください」
2回も最後のお願いを言ってしまいました。
最後の手段をわたくしに使わせないでほしいという気持ちが強くて、心では無駄だろうなと思いながらも言葉は口をついて出てしまいます。
しかしそんなわたくしの言葉はやはりお父様には伝わらない様で、お父様はただただ腹立たしそうにわたくしを睨んできます。
「っ……駄目だ駄目だ。馬鹿なことを言うな!
お前がどう思おうと関係ない!
お前に魔法が使えると分かった今! お前は私の娘として完成したのだ!!
やっとちゃんとした娘となったお前を、私が勘当などする訳がないだろう!
カッシム君なんかより良い男を私が探してやるから機嫌を直しなさい! 少し歳上になるが良い家を知っている! きっとお前を可愛がってくれるぞ!」
そう言って口元をニヤつかせたお父様のそのお顔に、あまりにもゾッとして、わたくしは嫌悪感しか感じませんでした。
「…………もういいです」
自分でも無意識に口から出ていた言葉でした。
「ん?」
お父様が聞き返してきます。
そんなお父様にわたくしはしっかりと目を合わせて覚悟を決めました。
「もういいです、お父様。
わたくしはこの家と絶縁いたします」
「な、何を言う?!
そんな事を許すわけがないだろう!!」
「もうお父様の許可はいりません。
できれば絶縁状を書いてもらい、記録に残していきたかったのですが、お父様と話していても平行線にしかなりませんもの。
もういいですわ。
わたくしは出ていきます」
「駄目だ、っ?!?!」
叫ぶお父様の心臓の血の流れを一瞬止めました。
左手で心臓の辺りを押さえたお父様の体がふらつき、喘ぐように口を開いたと思うと、お父様の体は崩れて床に膝を突かれました。咄嗟に机に腕を突いたお父様が驚愕した目でわたくしを見てきます。
「わたくしはこの家と絶縁して今夜この邸を出ていきます。
お父様なら追いかけてくるでしょうけれど、二度とお会いする気はありません。
お父様も“欠陥品”で“出来損ない”で“無能”だと言い続けてきた者を、追いかけるなんて格好の悪い真似はなさらないでくださいね」
「そ、そんな事は、ゆ、許さん……ぞ……っ!」
立つことさえままならない状態で、まだ高圧的な態度のお父様を少し尊敬します。
「もうお父様、いえ、パーシバル侯爵閣下に許していただくことは何もありません。
いままで、お世話になりました」
わたくしは最後にお父様に向けて貴族の令嬢としての最後のカーテシーをしました。
そしてお父様の首から上の血を意識を失う程度に下げました。
「ロンナっ……っ!、…………」
ガタリッ、と音を立ててお父様は倒れました。机にもたれるように倒れられたのでララーシュの時の様に頭を打たれた事もありません。
「さようなら、お父様……」
流石に殺しはいたしません。
殺人犯での指名手配は嫌ですもの。
わたくしは一度大きく息を吐いて体の緊張を解きました。
やっぱりこうなったかという謎の納得感がわたくしの中にありました。
それでもできれば穏便に、お別れがしたかったです。悲しくはありませんがなんとなく寂しい気持ちになりました。
だけどもそんな気持ちに浸っている時間はありません。一番の問題は片付きましたが、これで終わりではありませんもの。
ここから、わたくし……いえ、私の冒険が始まるのです!
まずは逃げないとっ!
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「お父様。
わたくしは小さな頃から欠陥品だと蔑まれ、生まれてきた事を非難されてきました。人から愛情を貰った記憶すらないのです。お父様がわたくしに向けるそれは愛情などではありません。自分の所有物を手放したくないだけです。
わたくしが生きる上での衣食住を満たしてくださり、必要な教養を付けさせて下さった事には心から感謝しております。
しかし人は、それだけでは生きてはいけないのです。
心を壊されてまで、自分に悪意しか向けてはくれない場所に居続けたいとは思えません。
わたくしは、この家や貴方に恩など感じたことはありません。ですからもう何を言われてもわたくしが心を変えることはありません。
生まれた時点で家の恥であり、婚約すら解消されて傷物になったわたくしがこの家に籍を置いていてもパーシバル侯爵家が馬鹿にされ続けるだけです。
どうか、お願いです。
わたくしを正式に勘当してください」
2回も最後のお願いを言ってしまいました。
最後の手段をわたくしに使わせないでほしいという気持ちが強くて、心では無駄だろうなと思いながらも言葉は口をついて出てしまいます。
しかしそんなわたくしの言葉はやはりお父様には伝わらない様で、お父様はただただ腹立たしそうにわたくしを睨んできます。
「っ……駄目だ駄目だ。馬鹿なことを言うな!
お前がどう思おうと関係ない!
お前に魔法が使えると分かった今! お前は私の娘として完成したのだ!!
やっとちゃんとした娘となったお前を、私が勘当などする訳がないだろう!
カッシム君なんかより良い男を私が探してやるから機嫌を直しなさい! 少し歳上になるが良い家を知っている! きっとお前を可愛がってくれるぞ!」
そう言って口元をニヤつかせたお父様のそのお顔に、あまりにもゾッとして、わたくしは嫌悪感しか感じませんでした。
「…………もういいです」
自分でも無意識に口から出ていた言葉でした。
「ん?」
お父様が聞き返してきます。
そんなお父様にわたくしはしっかりと目を合わせて覚悟を決めました。
「もういいです、お父様。
わたくしはこの家と絶縁いたします」
「な、何を言う?!
そんな事を許すわけがないだろう!!」
「もうお父様の許可はいりません。
できれば絶縁状を書いてもらい、記録に残していきたかったのですが、お父様と話していても平行線にしかなりませんもの。
もういいですわ。
わたくしは出ていきます」
「駄目だ、っ?!?!」
叫ぶお父様の心臓の血の流れを一瞬止めました。
左手で心臓の辺りを押さえたお父様の体がふらつき、喘ぐように口を開いたと思うと、お父様の体は崩れて床に膝を突かれました。咄嗟に机に腕を突いたお父様が驚愕した目でわたくしを見てきます。
「わたくしはこの家と絶縁して今夜この邸を出ていきます。
お父様なら追いかけてくるでしょうけれど、二度とお会いする気はありません。
お父様も“欠陥品”で“出来損ない”で“無能”だと言い続けてきた者を、追いかけるなんて格好の悪い真似はなさらないでくださいね」
「そ、そんな事は、ゆ、許さん……ぞ……っ!」
立つことさえままならない状態で、まだ高圧的な態度のお父様を少し尊敬します。
「もうお父様、いえ、パーシバル侯爵閣下に許していただくことは何もありません。
いままで、お世話になりました」
わたくしは最後にお父様に向けて貴族の令嬢としての最後のカーテシーをしました。
そしてお父様の首から上の血を意識を失う程度に下げました。
「ロンナっ……っ!、…………」
ガタリッ、と音を立ててお父様は倒れました。机にもたれるように倒れられたのでララーシュの時の様に頭を打たれた事もありません。
「さようなら、お父様……」
流石に殺しはいたしません。
殺人犯での指名手配は嫌ですもの。
わたくしは一度大きく息を吐いて体の緊張を解きました。
やっぱりこうなったかという謎の納得感がわたくしの中にありました。
それでもできれば穏便に、お別れがしたかったです。悲しくはありませんがなんとなく寂しい気持ちになりました。
だけどもそんな気持ちに浸っている時間はありません。一番の問題は片付きましたが、これで終わりではありませんもの。
ここから、わたくし……いえ、私の冒険が始まるのです!
まずは逃げないとっ!
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