授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ

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3>>怒りwwwww

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 リファージ男爵は領地を持っていないので家は王都にあった。グランは何処に行くのか知らないまま、王都の街中を抜け貧民街を抜け、王都を囲む大きな壁を超えて街の外へと運ばれて行った。
 遠ざかる景色を楽しむ気力のないグランを乗せた馬車が次の街に着く前に日が暮れた事で初日は野宿となった。

「貴族の坊っちゃんだったのに悪いな。まぁこれからはこれが通常だと思ってくれや。早く慣れるとそれだけ楽だぜ」

 馬車を操縦していた男はウィルと名乗った。父は「知り合い」だと言っていたのにウィルからは「突然話を受けた」と言われた。
 子を捨てる為に父は嘘まで吐いたのだと更にグランはショックを受けた。

 ウィルのスキルは【風檻かぜおり】という変わったものだった。風で檻を作れるそのスキルは世界を見て周りたいウィルにはうってつけだったそうだ。檻を自分の周りや守りたいものの周りに作ると風が手を出そうとするものを吹き飛ばしてくれるらしい。だからウィルは護衛を付けていない。
 野宿をするからとウィルは馬車を中心に風檻かぜおりで囲んで安全地帯を作った。
 焚き火と携帯食と簡単なスープ。
 初めて食べるその食事が、グランはもう貴族では無いのだと現実を突きつける。ずっと悲痛な顔をしたままのグランにウィルは早く寝てしまえと馬車の荷台に簡易マットを敷いてくれた。
 グランはすぐにそこに潜り込むと薄い布を頭まで被って丸くなった。
 心の中は悲しみでいっばいだった。
 それと同時に自分を捨てた家族を恨んだ。
 ……その原因となった自分のスキルを恨んだ。

 ──何が草だ! 何が草だ!! 何が草だ!!! 草なんか生やしたって何にもならない!! 雑草だ!! ゴミだ!! 無駄だ!!! いらないんだ!!! 草なんて!! 草なんて!!! 草草草草っ!!!!!──

 自分を包んだ布を握りしめてグランは歯を食いしばって泣いた。
 全ての気持ちをスキルに向けて、脳の血管が切れるんじゃないかと思うぐらいに、どこにも向けられない恨みや苛立ちや悲しみや苦しみを全部全部スキルに向けてグランは泣いた。


 その時、リファージ男爵家のある王都ではおかしな事が起こった。
 全ての人が、始めは空耳かと思った。ある者は耳鳴りかとも。
 それはどんどん大きくなり、遂には王都全体で響き渡った。

『あははははは!! うふふふふふ!!! アハハハハハハ!! イヒヒヒヒヒヒヒ!! フヒヒヒヒヒヒヒ!! あははははは! あーはっはっはっはっ!!!』

 色んな人の、老若男女合わせた笑い声が王都にいる人全ての耳に響いた。

「何?!」「いやっ!?」「怖いっ!!」「何なのよこれ?!」「誰が笑ってるの?!」「どこで笑ってんだよ!?」「うるさい!!」「えーん!こわいよ~!」「止めてよ!」「誰かこれを止めて!!」「嫌っ!!」「笑うな!!」

 王都中の人が突然響き出した笑い声に恐怖した。
 リファージ男爵家でもパニックだった。

「何なんだこの笑い声は!?」
「誰か止めてぇ~!!」
「うるさいうるさいうるさい!!」
「耳を塞いでも聞こえてくるよ?!」

『アヒャヒャヒャヒャヒャ!! はははははははは!! ヒーッヒヒヒヒヒ!! ふふふふふふふ!!!』

 笑い笑い笑い笑い笑い笑い。
 楽しそうな笑い声から人を馬鹿にした笑い声。感情の抜け落ちた様な笑い声と様々な笑い声が自分に向けられているかの様に聞こえてくる。
 王都はパニックになった。

 1時間ほど続いたそれは不意にピタリと止まった。だが全ての人がまた聞こえてくるのではないかと怯えて眠れない夜を過ごした。

 次の日国王はすぐさま笑い声の元凶を探させた。
 まず先に笑いに関するスキルを持った者が取り調べられたが全員が無関係だと立証された。まず王都全体に笑い声を響かせられる事が異常なのだ。そんな特殊な能力であればすぐ分かるはずだった。
 しかしその確認中にも王都に謎の笑い声が響いた。

 グランはスキルを使っている意思はなかったが、恨みや不満が高まると無意識に自分の身を守る様にその気持ちをスキルという形で排出していた。グランの恨みの先が生家リファージ男爵家だったが為にその家がある王都全体に迷惑が掛かっていたのだ。

『はーっはっはっはっは!! フフフフフフフ! アハハハハハハハハハ! ヒヒヒヒヒヒヒ!!』

 楽しい笑い声だけならまだ良かった。
 響いてくる笑い声の大半が人の気持ちを不快にする笑い声で、時には完全に馬鹿にした笑い方のものもあった。
 突然聴こえてくる驚きと不気味さに合わさってその不愉快さに王都中の人々が不安と不快を感じていた。



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