授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ

文字の大きさ
4 / 6

4>>子供を捨てた両親は

しおりを挟む


 グランは不満顔のままただ馬車に揺られていた。
 街に着いてもグランには何もする事がなく。だたボーッと荷台に座っているかウィルの仕事姿を見ているしかなかった。時々心の中に黒い気持ちが溢れて、それを目を閉じてやり過ごす。ギュッと手を握って目を閉じて、頭に浮かんだ嫌な事を全部スキルにぶつけるとなんだか不思議と楽になれた。グランはその事に気付いて気持ちが不安になった時や寝る前には必ずその気持ちを心の中でスキルにぶつける様になった。
 その度に王都では謎の笑い声が響き渡っていたが、どんどん王都から離れて行っていたグランの耳には王都で起こっている事の話など入っては来なかった。
 
 ウィルは手伝いとしてグランを引き取ったはずなのにグランを無理に手伝わせる事はしなかった。
 それどころか10歳で親に捨てられた元貴族の令息に平民としての生き方を教えようと常に気にかけてくれた。
 グランは最初こそ家族への復讐を考えるほどだったが恨みをスキルにぶつけている内になんだかその気持ちも薄れて、今ではもう家族の元へ帰りたいとは思わなかった。
 しかしやはり元貴族の子供が突然平民になった事での不満は毎日感じていて、その都度グランは目を瞑って自分のスキルへと気持ちをぶつけた。

 王都では突然響き渡る笑い声に慣れる者も出てきていた。
 あぁまたか……、と思える者は良かったが笑い声が感じる者は心を病んだ。
 リファージ男爵家の夫人、グランの母ミラルダは誰よりもそれが酷かった。ミラルダには笑い声が『5歳くらいの時のグランの笑い声』に聴こえていたのだ。小さな小さなグランがに。自分の捨てた子供が泣きながら笑っている。その顔がありありと想像出来てしまったミラルダは自分が選んでしまった『子を捨てる』という行為に後悔し、押し寄せた強烈な罪悪感に苛まれて、ある日突然大声で謝りながら泣き叫んで倒れた。

 その日からただグランの名を呼びながら謝罪を口にする母に、グランの兄たち2人もショックを受けた。
 自分たちが母を呼んでも自分たちを見てくれない。それどころか自分たちをドランやディランだと認識せずに「グラン」と弟の名を呼びながら抱きしめ様としてくる。それを「違う」「俺はグランじゃない」と言っても母ミラルダは「ごめんなさい」と「母を許して」と言って泣くだけだった。
 そしてが響くと泣き叫んで手がつけられなくなる。グランが居なくなって馬鹿にしていた兄たちもグランが戻ってくれば母も元に戻るんじゃないかと言い出し、父アランは頭を抱えた。

 ただでさえ居なくなった末っ子の事で周りから苦言を言われたりするのだ。「スキルに問題があったから捨てたのか」と、父アランがどれだけ「息子本人が強く希望して家を出た」と周りに伝えても「だとしても10歳の子供を平民に落とすなど」と言われるのだ。
 みんな鳴り響く笑い声にストレスが溜まっていて普段なら言わない事でもついつい言ってしまう様になっていた。王都中の全ての人が常に苛立っていた。
 グランの父アランも全てを投げ出して暴れたいくらいに苛立っていた。執務机を叩き過ぎて手は常に腫れていた。

「何故上手くいかん!?! なぜ幸せになれん!?! あんな屑スキルを持っていた家の恥を片付けて、これから平和な生活が待っているはずだったのに何故こうなった!? なんなんだあの笑い声は!! 全部あれのせいじゃないか!!! 国は何をしているんだ!! あの笑い声を早く止めろ!!! あれのせいで妻が壊れた!! 子供たちが悲しんでいる!!! なぜ神はこんな酷い仕打ちをするんだ!! 俺たちはただ幸せを望んでいるだけじゃないか!! 何も悪い事をしていないのになぜこんな仕打ちをなさるんだ!! 神は我らを見放したのか!?! あの笑い声が!!! あの笑い声さえなければ皆で変わらず平穏でいられたのに!!! あの笑い声が!!!!」

『あははははははははは!!!!』

「っ!! やめろ!!! 笑うな!!!」

『イーヒッヒッヒッヒッヒッ!!』

「笑うなーーー!!!!」

 アランは堪らず窓の外に向かって椅子を投げた。
 ガシャンと酷い音がして窓が割れた。しかし響き渡る笑い声は止まる事はなく、むしろリファージ男爵家の周りをグルグルと回る様に響いて邸の中にいる者たちの恐怖を煽った。

「いやーーーっっ!! やめてーーっっっ!!!」

 ミラルダが堪らず叫んだ。

「グランっっ!! グラン来てっっ!! お母様を抱きしめてっ!! この笑い声からお母様を守ってっっ!!! グランーーーーっっ!!」

 窓を開けて外に叫んだ妻にアランが苛立ちを止められずに叫んだ。

「グランはもういない!!!! お前だって捨てる事に同意しただろうが!! 私の子なのにあんなスキルを持って産まれるなんて呪われているのかしらとお前が言ったんだろうが!!! あんな屑スキルを持った子供を産んだお前が悪いんだ!! お前があんな子供を産むからっっ! あれは本当に俺の子だったんだろうな!? お前が他所から貰った種じゃないのか!!! あんなゴミスキルのガキが俺の子のはずがない!!!」

「なんて事を言うの!?! グランは貴方の子よ!! 貴方が欲しいと言ったから3人も産んだんじゃない!! 私は1人で充分だったのに!! 貴方がグランを望んだ癖にっ!!」

「だから他所から種を貰ってきたのか!? この売女が!!! お前がちゃんとしたスキルの子供を産んでいれば!!!」

「グランは貴方の子よ!!!!」

『アハハハハハハハハハ!!!!』

 窓を開け放ったまま大声で続けられたリファージ男爵夫妻の夫婦喧嘩は笑い声と共に王都中に響き渡った。
 母が言った『1人で充分だった』という言葉に次男ディランはショックを受け、それを慰めようとした長男の手を振り払った。
 男爵の言った『捨てる事に同意した』という言葉に衛兵たちが動き出していた。どんな理由があろうと子供を捨てる事は犯罪だった。それは貴族平民関係なくこの国では禁止されている事だった。
 更に男爵が言った『妻の不倫を疑う言葉』は女性たちの不満を買った。自分の種を棚に上げて全ての責任を産んだ妻の所為にするなど許される事ではない。しかも妻の方は望んで産んだ訳ではないときた。責任を全て妻の所為にするなどあり得ない。
 響き渡る謎の笑い声に気落ちしていた女性たちの怒りに火をつけたその発言は、色んなところに飛び火して王都中の至る所で別の騒ぎを起こした。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

パーティのお荷物と言われて追放されたけど、豪運持ちの俺がいなくなって大丈夫?今更やり直そうと言われても、もふもふ系パーティを作ったから無理!

蒼衣翼
ファンタジー
今年十九歳になった冒険者ラキは、十四歳から既に五年、冒険者として活動している。 ところが、Sランクパーティとなった途端、さほど目立った活躍をしていないお荷物と言われて追放されてしまう。 しかしパーティがSランクに昇格出来たのは、ラキの豪運スキルのおかげだった。 強力なスキルの代償として、口外出来ないというマイナス効果があり、そのせいで、自己弁護の出来ないラキは、裏切られたショックで人間嫌いになってしまう。 そんな彼が出会ったのが、ケモノ族と蔑まれる、狼族の少女ユメだった。 一方、ラキの抜けたパーティはこんなはずでは……という出来事の連続で、崩壊して行くのであった。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。 しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。 絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。 一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。 これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...