Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第750話

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 ヨシナリはよく凌いではいたが数が違いすぎる。
 早々に追い込まれ始める――具体的にはポジショニングが追い付かなくなってきた。
 
 「あー、やっぱりこの辺から露骨に遅れてきてるなぁ」

 自身の動きを見ながら試合の内容を振り返る。 
 明らかに捌き切れていないからだ。 徐々に追い込まれていたが、マルメルの援護によってわずかにフォーメーションに乱れが生じた隙を突いて変形。 急降下して森へと飛び込む。
 
 「おー、これやられると狙いづらくなるなぁ」
 「俺としては近くで戦闘している所まで行ってちょっとでも擦り付けられたらって思ってたんですけど、割と遠かったんですよね」

 俯瞰に切り替えるとよくわかる。 
 ヨシナリ達「星座盤」のいるエリアから一番近い戦闘区域は1キロ近くも離れているのだ。
 明らかにおかしい。

 「これは多分だけどコンシャス達の仕込みだろうなぁ」
 「そうなのか?」
 「あぁ、そうでもなきゃこんな露骨に隔離されないよ。 大方、声をかける過程で協力が得られなかったユニオンには因縁の相手との決着をつけたいから手を出すなとでも言ったんじゃないか?」

 コンシャスはヨシナリ達を疫病神の類と信じて疑っていないらしく、祓う為ならどんな事でもするだろう。 

 「なんか、あの人の中では俺達はどこまでも付きまとってくる怨霊か何かに見えたのかもしれないな」
 「は、雑魚が負けた時の言い訳に使いそうな文言だな」
 「ふん、どちらにしても数を頼んで嬲るような真似は好かん。 奴らは負けて当然の卑怯者だ」

 ユウヤは小馬鹿にしたように鼻で笑い、ケイロンもそれに同調した。
 
 「タクティカル。 私としてはその勝利への執着は買いたいところだがな!」
 「ふ、戦いとは最終的に勝者がその是非を問うもの。 愚劣な策であろうとも勝てば官軍とでも思ったのだろう。 だが、奴らは負けた。 あれだけの策を弄して負けた以上は無能と言われても文句は言えまい」
 「ルールには抵触していないから勝てば正当化はできたんだろうけど、やるにしてももうちょっと連携を詰めとけばよかったのに」
 
 言いながら割と肯定的なアイロニー以外は全員辛辣だなと思いながらヨシナリは映像を進める。
 ホロスコープは木々を縫うように飛んで距離を取ろうとポンポン達から離れるが、彼女達は上空から銃弾や砲弾をばらまき始めた。 ヨシナリが逃げを打った事で一方的に攻撃できると判断したのか容赦がない。

 「この体勢になるとまんまるさんが滅茶苦茶厄介でさぁ……」

 思い出しながら何度もひやひやしたと付け加える。

 「どうでもいいがなんで直接追わなかったんだ? 一人か二人使い潰す気で行きゃぁヨシナリ潰すぐらいは何とかなったんじゃねぇか?」
 
 ユウヤの指摘は尤もだった。 まんまるが自由に撃てる事で一方的に仕掛けられるのだ。
 ヨシナリを早めに片づけたいなら機動性の高い機体で退路を強引に潰しに行けばいい。
 少なくともそれをやるとヨシナリはさらなる綱渡りをするか森から空に上がらざるを得なかった。

 「それに関しては先を見据えてだろうな。 さっきも少し触れたけどポンポンさんとしては俺を可能な限り無傷で処理したかったんだと思う。 コンシャス達がいるからしばらくは安全だとは思ったんだろうけど、俺達が負けるとも思ってなかっただろうし、後に控えてるふわわさんや、ユウヤにケイロンさんと厄介な相手を処理したいならどうしたって戦力が要る」

 だから可能な限り安全に一機ずつ処理したい。 そんな考えだったのだろう。
 結果が伴わなかった以上は問題があったのだろうが、判断としては決して間違っていないと思っていた。 ポンポンが最終的に見据えていたのは「星座盤」の全滅。

 その目標に向け全力だったというだけの話だ。 

 ――ただ、ヨシナリの冷徹な部分は甘いと断じた。

 逆の立場だったらどうすれば勝てたか? 
 考えれば割とアイデアは出てくる。 敵は1チーム10+1機。
 未知数の機体を加味しても大半は既知だ。 処理はどうにでもなる。

 加えて協力的ではないとはいえ利用できるコンシャス達までいるのだ。
 どうしても勝ちたいのならヨシナリがポンポンの位置なら真っ先にホーコートを狙う。
 理由としては一番落としやすいからだ。 物量差がある以上、敵の数を減らす事はかなり大きい。

 つまりフォーメーションとしては逆にする。 ポンポンでヨシナリを抑え、残りでホーコートを瞬殺。
 次は可能であればグロウモスを狙う。 あれだけ派手に撃ち合っているのだ。
 シックスセンスがあれば補足は難しくない。 後は捉えやすいマルメル、シニフィエと数を減らせばコンシャス達の勢いも強まる事になり、そのまま崩せる。

 ベリアルはツェツィーリエが抑えているのでしばらくは放置し、ふわわ達を一機ずつ処理していけばいい。 少なくともグロウモスを落とす所まで持って行けたなら勝率はかなり上がる。
 単純に勝利だけを追求するのならこれぐらいはやった方がよかったのかもしれない。

 恐らく、ポンポンとしては指揮官としての仲間の安全、勝利の為の道筋、その際に発生するリスク――最後にヨシナリに対しての過大評価。 その全てを加味した上での判断だろう。
 視野が広いといえば聞こえは良いが、今回に限ってはノイズが多かった。

 一つか二つは捨てるべきで、目標が多すぎた所為で勝利への執着が薄まっている。
 少なくともヨシナリの処理に拘ったのは悪手だ。 
 それだけ危険と認識していたのだろうが、ポンポンは身内に甘すぎる。

 安全マージンを取る事と過保護なまでに守ることはイコールではない。 
 彼女はそこを見誤ったといえるだろう。 

 ――だからと言って何も手を打っていなかった訳ではない。

 よくよく見てみるとまんまるが砲撃に紛れて何かを地面に打ち込んでいた。
 
 「あぁ、これかぁ」
 
 思わず呟く。 
 以前の防衛線で似た武器を使われた経験もあって警戒はしていたのが幸いしてどうにか対処はできたが、早々に取り入れてくるとは思わなかった。

 「遠巻きに狙いながら罠を仕掛けてたって訳か。 危ねぇなぁ。 近くにいたら気づかずに踏んずけてたかもなぁ」
 「いや、戦場から剝がしながらだから可能性としては低いと思う」

 爆破。 ヨシナリはパンドラの開放でどうにか突破し、それに紛れてポンポンが勝負を仕掛けに行く。
 
 「無理に仕掛けに行ったのはコンシャス達が全滅したからか」
 「あぁ、これに関しては最初に決めてたんだろうよ。 遠距離から削るだけ削って時間が来たら直接叩きに行くってな」

 いくら森を逃げ回っていたとしてもあれだけの砲火にさらされて無傷とはいかなかったからだ。
 
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