Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
749 / 865

第749話

 少し照れながらも意識を映像へと戻す。
 映し出されているのはヨシナリが「豹変」に囲まれている所だ。
 ホーコートが助けに入ろうとしていたが早々にニャーコに引きはがされる。
 
 この時点でツェツィーリエは動いていない。
 間違いなくベリアルを待っているからだろう。

 「ってかあのメンツだと一番、ヨシナリと相性がいいのってツェツィーリエさんだろ? なんでベリアルに行ったんだろ? ヨシナリを袋にしてからでも遅くね?」
 
 マルメルの指摘は尤もだったが、意図に関しては何となく察していた。

 「多分だけどツェツィーリエさんはポンポンさんを指揮官として育てたかったんだと思う」

 これまで見てきた限り、指揮能力に関してはツェツィーリエよりもポンポンの方が上だ。
 だからと言ってツェツィーリエに指揮官としての適性がないかと問われればそれもない。
 彼女は「豹変」のトップとして相当数のメンバーを引っ張ってきたのだ。

 そんな彼女に指揮官としての適性がない訳がない。 
 問題は彼女の得意とするポジションにある。 彼女の得意レンジは近距離。
 相手が格下なら何の問題もないが、同格以上となると指揮を執っている余裕がない。

 これも恐らくになるが、彼女は待っていたのかもしれない。
 自分の代わりに指揮を執ってくれる人材が育つのを。 
 ポンポンがAランクに上がり、ジェネシスフレームを手に入れ、メンバーからの信頼を勝ち取った今こそ彼女は時期だと判断し、彼女に全権を託したのだ。

 「ふ、つまるところ奴は王ではなく戦士だったということだ」
 「貴公の言う通りだろう。 彼女は玉座に座すことを良しとせず、己が能を十全に発揮できる場所に身を置いたのだ」
 
 ベリアルが分かっていると言わんばかりに身をくねらせ、ヨシナリもその指摘が正しいと頷きながら身をくねらせる。

 「要は前に出たいから指示出しをポンポンちゃんに代わって貰った訳やねー」
 「はい『豹変』のスタイル的にもツェツィーリエさんは指揮よりも前に出しつつ機動性を活かした遊撃が最適なポジションです。 裏を返せばチーム戦では真価を発揮できていなかったとも取れますね」

 逆にポンポンは指揮を意識したビルドを行っている点から期待されている事も分かった上での事だろう。 
 まんまる、ニャーコの機体構成的にも個人戦だけでなくチーム戦での動きも視野に入っているはずだ。
 
 ――そんな新体制となった「豹変」の最初の獲物がヨシナリという訳だったようだ。

 ポンポンを筆頭に八機による集中砲火。 ヨシナリは即座に逃げを打つ。
 
 「いや、この体勢に持っていかれた時点で無理だなって思って逃げて時間を稼ぐ方針に切り替えました」
 「まぁ、ジェネシスフレーム二機もいたし、俺に言わせりゃよく生きてたなって感じだよ」
 「実をいうと逃げに徹するだけなら割と何とかなるんだ」
 「そうなのか?」

 あぁと頷きながらヨシナリは映像を止めて「豹変」の方へとフォーカス。
 
 「戦力の内訳はジェネシスフレームを除くとアークエンジェル4、プリンシパリティ2っていう機動性に振った構成になっている。 加えてこれまでの傾向上『豹変』の戦い方――まぁ、ポンポンさんの戦い方は簡単に言うと堅実。 そこまで分かってるなら何をしてくるかは見えてくる」

 恐らくはポンポンにとって重要なタスクは敵の撃破と同等ぐらいのプライオリティを味方の生存に振っている。 つまり、ポンポンは可能な限り、チームの損害を抑えつつヨシナリの撃破を狙うという訳だ。
 そうなると囲んで袋叩きが最も可能性が高い。 

 口にすれば簡単だが、彼女達の連携を以ってすれば、それは単純な包囲という言葉では括れない。
 
 「いや、マジでここはきつかった」

 基本的に攻撃の起点はアークエンジェルタイプのどれか。
 二機がお互いを誤射しないポジションを確保して攻撃を開始。 当然ながらヨシナリとしては素直に食らってやる訳にもいかず少数の利を活かすために逆に誤射を誘発するように立ち回りたい。

 そこで邪魔なのがポンポンだ。 
 彼女は常にヨシナリの攻撃範囲に居座り、敵の頭を押さえようとするのを邪魔してくる。
 
 「まぁ、簡単に言うと攻撃を吸い込んでくるんですよ」
 「ウゼぇな」

 ユウヤが小さくそう呟く。 ヨシナリは苦笑。
 事実としてポンポンの動きは非常に鬱陶しかった。 
 他を狙いたいならまずは自分を仕留めて見せろと言わんばかりの挑発。

 ここで乗って彼女に意識を向けると拘束されるだけでなく、他に付け入る隙を与えてしまうという二重の罠だ。 加えて彼女の機体――マーシュマロウは防御に振っているだけあって簡単には落ちない。
 味方であった時点でわかってはいたが敵として相対するとその硬さは厄介だ。

 わざわざ特注の盾を用意するだけあって時間をかけるか数で圧し潰すかしないと粘られる。
 ポンポンが標的に張り付きタンクをしつつ指揮。 機動性に振った機体が複数で相手の意識を散らしつつ刺しに来る。 それでも生き残るなら砲戦機体の出番だ。

 まんまるの機体へフォーカス。 

 「これもヤバかったなぁ」

 明らかに重装甲の砲戦機体と分かりやすい構成だが、それだけではない怖さがあった。
 まずは両肩の左右で八門の砲。 高出力のレーザーとプラズマグレネードの撃ち分けができる。
 シックスセンスでよくよく見ればエネルギーの充填量でどちらが来るのか見えるのだが、分かるようになるまで少しかかった。 

 「よく見たら砲口がちょこちょこ動いとるなぁ」
 「そうなんですよ。 微妙に動かして軌道を変えてくる所もかなり厄介でした」

 全ての砲口が互い違いに動く事もあって見た目以上に攻撃範囲が広い。
 加えて背面に付いている機構もまた厄介だ。 レーザーを発射するが直進せずに弧を描いている。

 「うへ、曲がってらぁ」
 「動きからしてホーミングレーザーだな。 ただ、誘導性能はあんまり高くないからあんな感じになるけど、退路を塞ぎに来る感じで狙ってくるから撃ってくる前に近くの敵機にへばりついてないとすぐに落とされちまう」
 「こうしてみてるとお前の動きも大概だぞ」
 
 左右からの挟撃を旋回で躱し、逃げた先にいたポンポンが手を出す前にアトルムとクルックスで牽制。
 ポジションを変えた二機の銃撃を変形して直線加速で振り切り、追いかけてきたポンポンに逆に接近する事でまんまるに誤射を意識させる。 即座に移動して他の砲戦機体との間に敵機を挟むポジショニング。

 ――こうしてみると忙しいなぁ。

 そんな感想しか出なかった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

ホスト異世界へ行く

REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」 え?勇者? 「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」 ☆★☆★☆ 同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ! 国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!? しかも元の世界へは帰れないと来た。 よし、分かった。 じゃあ俺はおっさんのヒモになる! 銀髪銀目の異世界ホスト。 勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。 この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。 人誑しで情緒不安定。 モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。 そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ! ※注意※ パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。 可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。