Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第775話

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 ニニギによる全開加速は間合いを一息でゼロへと変える。
 だから仕掛けるのはその前。 ユウヤはアケディアを起動。
 エネルギーの無効化フィールドを展開する。 

 ニニギが足を踏み入れた瞬間、影響下に置かれるが加速までは止められない。
 ユウヤの狙いはそこだった。 アケディアの影響により、細かな制御ができなくなるからだ。
 そうなるとニニギは真っ直ぐに突っ込んで来るしかできない。 

 彼の最大加速による攻撃は何度も見て来た。 基本的に拳を真っすぐに突き出した一撃。
 それを超加速で行うというシンプルな物だ。 つまり何が来るのか分かる。
 ユウヤは大剣を手放し、拳を握ると硬質なグローブのような物に覆われた。

 それを迷わずに一閃。 コンマ数秒の世界で両者の拳が交差する。
 衝撃。 ニニギの拳はプルガトリオの頭部を完全に吹き飛ばし、ユウヤの拳はテンジンコウの胸部に深々と突き刺さった。

 「悪いな。 付き合わせて」
 「…………気にするな。 乗ったのは俺だ。 いい勝負だった。 また戦ろう」

 返事はないと思っていたが意外な事に寡黙なニニギが口を開いたのだ。
 ユウヤの挑発に敢えて乗ったニニギに感謝しつつ、トリガーオン。
 食い込んだ拳から指向性を持った爆発が発生し、ニニギの機体を完全に破壊。 撃破となった。

 インウィディア。 これがプルガトリオが新たに手に入れた武装の名称だった。
 拳を覆うナックルダスターのような印象を受けるが、大罪の名を冠するだけあって非常に強力な武装だ。 

 影響範囲内のエネルギーを吸収して破壊力に変換する装置を内蔵しており、拳を叩きこむ事で敵機のジェネレーターから直接エネルギーを吸い上げた後、破壊力に変換して撃ち出すといった使い方ができる。
 当然ながら至近距離でそんな威力を喰らえば大抵の相手は跡形もなく消し飛ぶ事だろう。

 元々、散弾砲、電磁鞭で中距離、大剣、長柄のハンマーで近距離を担っていたのだが、それよりも更に内側――至近距離での攻撃手段に乏しいと考えたユウヤがメーカーに打診して作らせた代物だ。
 コンセプトは当たれば必ず敵機を仕留められる一撃を放てる武器。

 特にアケディアとのシナジーが凄まじく、相手に接近戦を強いた所で使用すれば絶大な効果が見込める。
 カカラやタカミムスビのような大型機や重装甲の大型エネミー相手に即死とまではいかなくても一定のダメージを与えられる武器が欲しいと思っていたユウヤには最適な装備と言えた。
 
 ――ただ、素直に勝ったとは言い難かった。

 明らかにニニギはユウヤの事情を察しており、勝負を焦る彼の誘いに乗って勝負に来てくれた。
 ユウヤとしては粘られたら不味かった以上、ニニギの取るべき行動は時間稼ぎだ。
 そこまで考えて小さく首を振る。 今は他にやるべき事があるからだ。

 コックピットハッチを解放。 頭部を失い、センサー系の大半が熱で死んだ事で前が見えなくなったのだ。 その為、アバターによる目視で行くしかなかった。
 センサー系も大部分が死んでいるがまだ戦える。 ユウヤは機体を操って駆け出した。
 今も戦っているヨシナリ達の下へと。


 ――いやぁ、俺達ってなんで生きてるんだろう?

 そんな疑問を抱きたくなるほどに目の前に広がる光景は凄まじい物だった。
 視界を埋め尽くさんばかりの情報の洪水にヨシナリは現実逃避気味にそう考えた。 
 余計な思考にリソースを割くのは良くないと分かってはいたのだが、レーダー表示には無数のロックオン警告、センサー系には無数のエネルギー反応、動体センサーには馬鹿じゃないのかと言いたくなるほどのミサイルや実体弾の飛来を告げるアラート。

 『頑張るじゃないか! そろそろ何かを見せてくれないと私が飽きてしまうだろぉ?』

 タカミムスビは心の底から楽しいと言わんばかりに様々な攻撃をばら撒く。
 機動での回避が不可能になると転移で躱す。 とにかく時間を稼ぐのだ。
 タカミムスビの機体――アマノイワトはもはやトルーパーという枠組みに収められる存在ではない。
 
 つまり、まともにやって撃破するのは非常に困難だ。 
 こんな奴が一機分の枠で参戦する事に理不尽しか感じないが、敵である以上は絶対に始末してやろうと思っていた。 

 さて、カカラも大概だが、タカミムスビのコレは桁が違う以上、人数をかけて仕留める必要がある。
 ホロスコープ=プセウドテイなら逃げに徹すればしばらくは保たせる事は出来るはずだ。
 ヨシナリの見立てでは10分以内。 速攻をかけてタカミムスビ以外を全滅させれば勝ち目はある。

 全員がAランクでも上位のプレイヤーで固められており、格で言うのならベリアルとユウヤと同等だ。
 そんな相手にそんな真似が可能なのか? 
 できると断言したい所ではあったが、最大限上手くいっても成功率は五分を僅かに上回るぐらいだろう。

 可能な限り対策は練った。 後は仲間を信じるしかない。
 10分と定めたのはそれ以上、長引くと逃げ切れない、またはタカミムスビが飽きると判断した。
 タヂカラオから彼の人となりは多少ではあるが伝え聞いている。

 合理を重んじるように見えて実は自己の欲求を優先する傾向にあると。
 つまり、誘えば高い確率で乗って来る。 実際、こうして楽し気に弾をばら撒いているのだ。
 狙いは正しかったと言えるだろう。 

 なるほど、こうして見るとタカミムスビは歪な人間であると言える。
 これだけの人数を率いているにも関わらず、己の欲求が最優先。 
 それで数十万人のユニオンメンバーの頂点に立っているのだ。 並ではない。

 ちらりと戦況を確認。 そろそろ開始から10分が経過しようとしている。 
 敵の反応は――タカミムスビを除いて二機。 
 ふわわと戦っている奴と谷底でアイロニーが引き付けている奴だけだ。
 完璧ではないが条件はほぼクリアした。 ここからだ。

 「ベリアル。 そろそろ反撃開始だ」
 「ふ、待ちくたびれたぞ」
 『はっはっは、やるじゃないか。 雪華と凍露以外は全滅か。 さてはニニギめ、遊んだな』

 困った奴だと付け加えたが、焦りの感情が一切伝わってこない点から何の問題もないと判断しているのだろう。
 味方が全滅したにも関わらず、タカミムスビは欠片も意に介していないのは分かっていてヨシナリ達の挑発に乗った事に他ならない。
   
 アマノイワトの表面で無数の爆発と銃弾が弾ける。
 視線を下に落とすとマルメルとケイロンが重機関銃と対物ライフルを連射しながらこちらに向かって来ていた。 

 「待たせたなぁ! 文字通りの騎兵隊の登場だぜ!」
 
 マルメルはケイロンの背でそう叫んだ。
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