Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第774話

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 こちらを当てる為に最適の位置に居るのだ。 利用しない手はないだろう。 
 グロウモスの位置が割れている以上はドローンが制止したタイミングを狙えばそこまで難しくない。
 一先ずは片付いた。 敵はまだ残っているのだ。
 
 戦況を確認。 タカミムスビはヨシナリ、ベリアルの合体機体と交戦中。
 ホワイト・ノイズの影響範囲外に出ているのはわざとだろう。 
 タカミムスビの好奇心にも困ったものだが、負けはしないといった確信もあったので無視。

 ヨシナリ達がまだ撃墜されていない事は驚きだが、あの様子では時間の問題だろう。

 マルメル、ケイロンは篠突と派手に撃ち合いながら移動中。
 キュムラスはシグナルがロスト。 やられてしまったようだ。
 フェーンはいつの間にかユウヤに撃墜されてしまっており、雪華せっかは谷底で何かを追跡中。

 恐らく最後の一人を見つけたのだろう。 ニニギはユウヤと交戦中。
 対する敵の残りだが、グロウモスとシニフィエは撃破済み。 他は健在。
 二機撃破に対してこちらはもう四機もやられているのは情けない限りだが、ここから巻き返せばいい。 

 戦況の整理は思考を明瞭にしてくれる。 ここから自分がどう動くかを判断。
 やるべき事は決まっていた。 雪華を援護して不明機の処理だ。  
 いつまでもアンノウンのままは怖い。 最低限、正体だけでも割っておきたい。

 「――ふぅ」

 小さく息を吐く。 目の前の敵を撃破し、次の行動も決まった。
 それによって少しだけ気が緩んだのだ。 さぁ、動こうとした瞬間だった。
 ズンと重たい衝撃が機体を揺るがす。 

 「え?」

 思わずそんな間抜けな声が漏れた。 
 背後から至近距離で何かを喰らった事は分かったが、誰がそれをやったかが問題だ。
 敵味方の位置は不明機を含めて把握している。 後ろから襲えるはずがないのだ。

 ――まずは反撃を――

 動揺はあるがまずはこの危機を脱しなければならない。 
 霧ヶ峰はそう考えたのだが、無数のエラーメッセージがポップアップ。
 内容は内部機構の損傷。 喰らった銃弾は恐らく腐食弾だ。 

 腐食液が凄まじい勢いで内部を侵食していく。 
 喰らった場所が悪く、既にもうどうしようもない状態にされていた。
 背後でガシャリといった金属音。 恐らくは手動で排莢している音だ。

 せめて正体だけでもと振り返ろうとしたが、メインカメラが敵の正体を捉える前に頭部に二発目の腐食弾が命中。 霧ヶ峰は訳も分からずに脱落となった。


 ユウヤは走りながら散弾砲を二連射。 敵機は慣れた挙動で躱し、掌を向ける。
 次の瞬間、真っ赤な光が真っすぐに飛び、射線上の全てを焼き払う。
 電磁鞭で牽制しながらユウヤは敵機を観察する。 

 ニニギ。 機体名は「テンジンコウ」
 両肩にシールド、背面に特殊な推進装置を兼ねたバックパック。
 形状は和風な鎧といったイメージだが、意匠は洋風というやや風変わりなデザインだ。
 
 「思金神」の中ではトップクラスに強いプレイヤーで、タカミムスビと同様にSに近いと言われている。 ランク戦でそれなりの回数戦ったが、勝率は高いとはいえなかった。
 ニニギの背面の推進装置が駆動。 一瞬、光の輪が出現し、爆発音のような物が発生して加速。

 距離を取っていたにも関わらず即座に間合いを詰められる。 
 彼の機体、テンジンコウの厄介な機能の一つだ。 爆発的な加速は一瞬消えたと錯覚するほどに速い。
 拳を固めて殴りに来る。 

 単純な打撃であったなら怖くはないのだが、ニニギの肘から下が赤熱により真っ赤に染まり、高熱を撒き散らす。 咄嗟に大剣オディウム=イラで受け止める。
 しっかりと踏ん張っているが衝撃を殺しきれずに足が地面に沈む。

 オディウム=イラは破壊されないが、ニニギが撒き散らす熱が厄介だ。
 機体の表面温度が急上昇。 センサー系にダメージとエラーメッセージがポップアップ。
 押し返そうとは考えない。 過去にそれをやって何度も負けたからだ。

 ニニギに対して正面からの殴り合いは分が悪い。 
 特に突破力に関してはラーガストを除けば他の追随を許さないほどだ。
 最適解はいなす事。 受けた大剣を使って相手の力の切っ先を強引に捻じ曲げる。

 ニニギはそのまま地面に突っ込まずに体勢を変えて蹴りを放つ。 
 こちらも真っ赤に赤熱している。 蹴りの軌跡が炎の帯となっているように見える独特のそれはまとも喰らえば瞬く間に焼き尽くされ、下手に受けても熱でダメージを負うという厄介な攻撃だ。

 ユウヤは跳躍して空中で受ける。 大剣越しに衝撃を感じつつも吹き飛ばされて強引に距離を取った。
 密着され続けるのは不味い。 ユウヤとしても殴り合いは望む所ではあるが、正面からでは当たり負けしてしまう。 屈辱的ではあるがそこから目を逸らしては勝ちはない。

 元々、決して相性のいい相手ではなく、ぶつけるのであればベリアルの方がまだ勝率が高かったのだが、ヨシナリとタカミムスビの抑えに回っている以上、ニニギの相手をできるのがユウヤしかいないのだ。
 
 ケイロンでもいい所までは行けるだろうが、今回はスピード勝負という事もあって遊撃に回した。
 この戦いの肝はどれだけ早くタカミムスビ以外を全滅させるかにかかっている。
 「思金神」の一軍相手に無茶な前提条件だとは思うが、勝つ為の最低条件なのだ。

 やるしかない。 
 サニーもカタトゥンボも結果的に瞬殺だったが、本来ならあんなに簡単に落ちる相手ではない。
 速攻の奇襲が上手く嵌まっただけだ。 その効果もなくなった以上、メンバーの地力が試される。
 
 今回に関してはメンバー全員が試される場となる。 
 グロウモス、シニフィエが落とされた事は知っていた。 
 前者は霧ヶ峰とほぼ相打ち、後者は健闘はしたのだろう。 

 あのチーターがキュムラスを仕留めたようだが、今はどうでもいい。
 ユウヤのやるべきは一刻も早くニニギを仕留めてヨシナリ達の援護に行く事だけだ。
 大きく息を一つ吸って、吐く。 そして真っすぐに目の前の敵を見据える。

 ――気負いは、ない。

 「勝負だ」

 そつ告げて真っすぐに最も頼みとする武器――オディウム=イラを変形させ、ハンマー形態オディウム=スペルビアへと変えて大きく振りかぶる。
 ニニギは無言。 だが、通信の向こうで小さく笑ったような息が漏れた。

 テンジンコウの内部エネルギーが急上昇。 機体の全身が真っ赤に染まる。
 背にリングが三つ出現し、内側に収縮。 
 弾けたと同時に圧倒的な瞬間加速が発生し、真っすぐに突っ込んで来た。
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