Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第479話

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 次々とエネルギー弾が着弾して積もった雪を地面ごと蒸発させ、プラズマ弾が地形を変える。
 グロウモスは次々と飛んでくるエネルギー系の攻撃を躱しながら内心で焦りを募らせた。
 彼女の相手はアリスというプレイヤーが操る白い機体。 重量系に見えるが動きは軽快だ。

 攻撃の切れ目にスコーピオン・アンタレスで応射。 
 少し離れた位置に居るアルフレッドのお陰で位置関係は問題ない。
 ドローンはこの吹雪ではパフォーマンスを発揮できない上――ちらりと空を見上げると凄まじい爆発が連続して起こり、それを縫うようにヨシナリのホロスコープが飛んでいる。
 
 それを戦闘機と呼ぶには巨大な機体がばら撒けるものはばら撒くと言わんばかりに機銃やミサイルを連射しながら追いかけまわしていた。 少し離れた位置ではタヂカラオがピンクの機体を相手に逃げ回っている。 他のメンバーもそれぞれ接敵しているようで、明らかに援護が必要な状況だ。

 自分がやらなければならない。 そう思ってはいるのだが、敵機がそれを許してくれなかった。
 位置的には湖の外縁を回っているマルメルの相手は比較的、狙い易いのだがアリスが湖の中央に陣取ってこちらに向けて撃ちまくっている状態なので仕事ができない。

 闇雲にばら撒いているだけの性能頼りの相手であるならまだ付け入る隙はあったのだが、明らかに逃げる方向を誘導されている。 
 西――要はフィールドの端へと徐々に押し込まれていた。 
 事前に最低限の情報は貰っていたが、実際に目の当たりにすると想定以上だ。

 まずは武装面。 腕に抱えた携行武装の長物――長射程のエネルギー兵器。
 レーザーとエネルギー弾の両方を吐き出している点からも銃口が二つあって両者を撃ち分けている。
 次にアームガン。 こちらはプラズマの榴弾を撃ち出す榴弾砲だ。

 メイン武装の冷却の間はこちらを使って隙を消してくる。 
 レーザーの威力はフル装備のスコーピオン・アンタレスに比べれば照射時間が短い分、総合的な威力は劣るが回転が速い。
 こちらはエネルギーパック――要はバッテリーとジェネレーター出力の大部分を使うのに対して相手は太い両足に内蔵されている二基のジェネレーターと胴体、バックパックの合計四基も積んでるのでスタミナの差が顕著だ。

 ――というかなんなのあのバカみたいな出力。

 片足だけでもソルジャータイプの動力を余裕で賄えるレベルで、胴体は更に出力が上でバックパックはもう一段高い。 これだけ景気よくばら撒いても息切れしない訳だ。
 当然ながらホバー用の推進装置の維持も全く問題ない。 

 ただ、重量の所為で空中戦は難しいようだ。
 次に防御面。 グロウモスは攻撃の切れ目を狙ってスコーピオン・アンタレスを発射。
 エネルギー弾は吸い込まれるようにアリスの胴体を捉えるが、展開されたエネルギーフィールドに遮られて弾ける。 実弾に切り替えて発射。

 横にスライドして回避。 
 反応からエネルギー系の攻撃には特に強いが実弾だとやや不安があるので躱すといった所だろう。
 射撃精度なら分があるとは思うが、手数が違う。 加えて狙撃戦ではなく砲撃戦の様相を呈しているので、完全に相手の土俵だ。 

 ――身動きが取れない。

 少なくとも今は難しい。 他のメンバーも同じ状況と思われる。
 今は耐えて突破口を探す必要があった。 これはヨシナリからの受け売りだが、無敵の相手は居ないので突破の糸口を探る為にも相手をよく見るべきだ。 

 その通りだと思うのでまずは観察に徹しよう。 
 これまでも『星座盤』は数多くのAランクを葬って来たのだ。
 難しいだけで決して勝てない相手ではない。 

 グロウモスはそう固く信じ、降り注ぐ敵の攻撃から生き残る事に全力を注ぐしかなかった。


 自分は非常に幸運だ。 
 Aランクプレイヤー『モタシラ』は自信の引きの強さに感謝した。
 目の前には刀を帯びた機体。 

 ここ最近、凄まじい挙動で格上を撃破し続ける刀使いの噂は聞いていた。 
 他の面子は次々と有力なランカーを取り込んでいたリーダーのヨシナリに興味があったようだが、彼はこのふわわというプレイヤーが目当てで、その剣の腕が噂通りなのかを確かめたかったのだ。

 位置は湖からやや東側。 少し離れた位置に互いに向かい合う形で対峙していた。
 改めて見ると確かに剣を使うと言わんばかりの見た目だった。
 フレームはソルジャー+。 両肩に異様な長さの野太刀、腰には太刀と小太刀が左右に一組ずつ。

 モタシラの機体『イシクナギ』は黄土色の機体で武装は腰の太刀のみ。 
 すっきりとしたデザインだが、可能な限り人体に近づけた結果なので彼のイメージをほぼ完璧にトレースする事ができる。 彼は剣一本でここまで上がって来た。

 少なくともこのゲームに於いての剣の扱いに関しては最上位に位置していると自負している。
 
 『ウチと剣で勝負したいって事でええの?』
 「あぁ、活躍は聞いていたのでな。 是非ともその剣を見せて貰いたい」

 モタシラはすっと腰の刀を抜く。 対するふわわは腰の太刀にそっと手を添える。
 感じから抜刀術に見えるが、構えと言うよりは全体的に違和感を覚える形だ。
 何処かで正当な修練を積んだというのなら構えから読み取れるものは多い。 

 印象は示現流に近いが、初撃を躱したとしても二の太刀、三の太刀を用意している怖さがあった。
 恐らくは様々な要素を取り込む事で独自の剣術を確立したといった所だろうか?
 
 『えぇなぁ。 ちゃんとウチを殺そうとしているのが分かる』

 軽い調子で言っているが、モタシラもふわわからの圧を感じていた。
 よく冷えた殺気。 怒りなどの感情を排し、命を絶つ事に全霊を傾けた者が身に纏うそれだ。
 だが、それだけではない。 モタシラはふわわの纏う殺気を受けてアバターの向こうで汗を流す。

 声の調子から二十代の前半。 
 あの年齢でこの境地に辿り着くとはどんな人生を送ればああなるのか。
 日常的に殺し殺されの環境に身を置いていたと言われても信じてしまいそうな迫力があった。

 「――ふぅ」
 
 呼吸を整え、太刀の切っ先を向け、切っ先を上下に揺らす。 
 鶺鴒の構えという切っ先を上下に揺らしつつ摺り足で間合いを制する動きだ。
 下ろすタイミングで指を突く素振りを見せつつ上げる事で胴体も狙えるぞと相手の意識を切っ先に集中させてその間に摺り足で間合いを詰めるのだ。

 この動きの肝は切っ先を上下に揺らすのに併せて前に出る事。 
 それにより相手はいつの間にか距離が詰まっている事に気が付かない。
 モタシラはじりじりと距離を詰め、仕掛ける機を窺う。
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