Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
480 / 865

第480話

 痺れを切らしたのかふわわが一歩踏み込んで太刀を一閃。 
 速い。 迷いもなく、一直線に首を狩りに来る一太刀だ。
 尋常ではない踏み込みではあるが、太刀筋そのものは綺麗なものだった。

 一歩分、僅かに下がって間合いを外す。 紙一重の所で切っ先が通り過ぎる。
 返しの刺突。 ふわわは小太刀を抜いて受けようとしていたが、切っ先を小さく回す。
 接触の直前に小太刀の刃を巻き込み、そのまま跳ね上げる。

 小さな金属音と共にふわわの手から小太刀が抜けて宙を舞う。
 踏み込み、反応、足運び、どれをとっても非常に優れていると言えるが、剣士としては思っていたほどではない。 

 ――が、厄介な事には変わりなかった。

 ふわわは小太刀をわざと巻き取らせたのだ。 
 その証拠にさっきまで小太刀を握っていた手は太刀に添えられており、姿勢は異様に低い。
 腰部のスラスターを噴かして下がる。 切っ先が装甲の表面に僅かに触れた。

 返しの一撃を見舞おうと上段に構えた所でふわわの腕――僅かに膨らんだ部分から銃口のような物が開く。 飛び道具。
 モタシラは咄嗟に上半身を傾けて回避。 液体が放物線を描いて飛ぶ。

 液体。 強酸の類か? 触れるのは不味い。
 体捌きだけで躱すのは難しいので倒れ込み、機体を大きく傾けた姿勢をスラスターを噴かす事で維持。 その状態で足元の雪を思いっきり蹴り上げる。

 掬い上げるようにした事で雪がヴェールのように広がった。 
 謎の液体は雪に触れるとパキパキと嫌な音を立てて凝固。 酸ではなく、接着剤の類のようだ。
 トルーパーは人体と違い、スラスターを用いる事で無理な姿勢でも斬撃を繰り出す事も可能。

 鋭く息を吐いて下からの刺突。 
 ふわわはエネルギーウイングの旋回で躱そうとしていたが、それを追いかけるように機体の上半身を捻って追いかける。 この機体はシンプルな構成に見えるが、最大の特徴としては関節などの可動域が広く、上半身に関しては360°回転する事も可能だ。

 基本的にはリアルで培った剣術を用いるのだが、相手がそれに合わせてくれる訳もないので最終的にこういった形に落ち着いた。 
 元々、彼は旧日本の江戸時代から続く、剣術の流れを汲む道場の跡継ぎとして育てられたのだが、このご時世に道場一本で食っていくのは非常に難しい。 

 なら他の仕事をすればいいのではないかと思うが、青春の全てを剣に捧げた事もあってそれ以外に得意な事がなかったのだ。 
 門下生は居るにはいるが、片手で数えられるほど。 
 現道場主である父親は他所へ出稼ぎに行って糊口を凌ぐ毎日だ。 
 
 将来は自分があぁなるのかと考えると嫌だなと思ってしまった。
 そんな時に見つけたのがVRゲームだ。 プロゲーマーなんて職業が存在する昨今で、当時は胡散臭くとさえ思っていたが、実際に触って見ると思った以上に性に合っていた。

 特に剣術を競うゲームの大会ではかなりいい所まで行き、賞金まで貰った事もあってその確信を深めたのだ。 
 以降、自分のスキルを活かして稼げるゲームはないかと探した結果、このICpwに行きついた。
 ロボットアクションゲームと言う事で不安はあったが、ゲーム内通貨の換金レートが異様に高かった事もあって物は試しにと飛び込んだのだ。

 最初は銃相手に成す術もなく敗北を重ねたが機体構成を機動性に振り、回避スキルを学んでいる内に気が付けばAランクまで上り詰めていた。 
 自分の剣はこの機械の巨人の戦う世界にも通用する。 
 そんな事を考えると少しだけ苦労して剣を振り続けた日々が報われると思えるのだ。

 両親は遊んでばかりと認識していたが、Pを換金した札束を叩きつけて黙らせた。
 これまでも剣を使う敵とは何度も戦ってきたが、剣術を自分と同等以上に収めた相手はほとんどいない。 だからと言って物足りない、相手が弱いという事はなかった。

 このゲームの頂を目指す者達はスタイルが違うだけで文字通りの修羅だ。
 金の為、最強への渇望、理由こそ様々だが、彼等は常に自己を更新し続ける求道者。
 気が付けば金が主目的だったはずのモタシラもこのゲームでどこまで行けるのかを試したくなっていた。 

 有り体に言えばこのゲームが楽しくて仕方がないのだ。
 だが、偶には純粋な剣技で試合いたい。 まだ見ぬ剣士と剣で競ってみたいと思っていたのだ。
 そんな理由でふわわにはかなり期待していたのだが、どうにもモタシラの思う剣士とは違うようだ。

 上手くは言えないが違和感があった。 確かに剣の冴えは素晴らしい。
 姿勢一つとってもしっかりと修練を積んだ事は明らかで、何よりセンスがある。
 才能は努力を凌駕するとは思わないが、どんな物にも向き不向きは存在するのだ。

 それが自分は剣だっただけの話。 袈裟の一撃が飛んでくる。
 相手の力の流れに沿っていなし、巻き込む。 今回は跳ね上げずに打ち落とす。
 ふわわの剣が流された後に峰を叩かれて僅かに全体の姿勢が崩れる。

 そこを刺突。 入ると思ったが、モタシラの一撃は空を切る。
 
 「そう来たか」

 エネルギーウイングを噴かして地面に突っ込んだのだ。 
 躱す為とは言え思い切った事をする。 だが、崩れた姿勢はどうしようもないだろう。
 次の一撃はどう躱す? 刀を振り上げた所で蹴りが飛んでくる。

 振り上げたタイミングに合わせて来たという事は狙いは柄頭か。
 摺り足で下がる。 小さい的を狙って来る場合の動きは最小でいい。
 後ろに半歩。 それで躱せる。 足が空を切り、ふわわが再度エネルギーウイングを噴かす。

 足が伸びきった状態で何をする気だと警戒すると彼女は肩にマウントされた野太刀を鞘ごと外して振り回してきた。 
 抜かないのかと少し意外に思ったが、下から掬い上げるような一撃は引き付けてから躱せなくもないが少し嫌な予感がしたので大きく後ろに跳んで距離を取る。

 『うーん、流石やわぁ。 ここまで剣で圧倒されたのは久しぶりかもしれへんなぁ』

 ふわわは野太刀を投げ捨て、残ったもう一本も外して足元に落とす。
 
 「野太刀は使わないのか?」
 『どうせ当たらんし邪魔にしかならへんからねー』

 ふわわは蹴り上げられた小太刀を拾うとだらりとした姿勢で構える。
 切っ先は前ではなく、手にぶら下げるような持ち方だ。
 さっきまでは示現を思わせる剛剣だったが、今は明らかに気配が違う。

 二刀を使っている点からも手数を重視した? 
 今の所はしっかりと視えている事もあって手強いが勝てない相手ではないといった認識だが――
感想 0

あなたにおすすめの小説

ホスト異世界へ行く

REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」 え?勇者? 「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」 ☆★☆★☆ 同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ! 国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!? しかも元の世界へは帰れないと来た。 よし、分かった。 じゃあ俺はおっさんのヒモになる! 銀髪銀目の異世界ホスト。 勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。 この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。 人誑しで情緒不安定。 モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。 そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ! ※注意※ パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。 可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。