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時は遡り②
しおりを挟む「貴女が私を守ったあとは、獣人から命からがら逃げた私達が数ヶ月かけて国に帰り涙ながらに言うの。『殺されそうになって貴女が…。』って。」
姫様がそのあとも何か嬉しそうに喋っていて、その言葉も頭では理解はしている。
しかし、私は姫様の『木偶の坊』という言葉が頭にめぐり動きをとめて固まってしまった。
ツキリと声を発しようとしたら命令無視のため痛みが襲う。だけど、彼の事は聞かないとならない。
「きっと、あの女は責任をとらされるわ。」
「…カインは無事なんですか?」
「あら?辛いでしょうに聞くことはそれ?」
まさか、命令無視のお仕置きを受けながら言葉を発するとは思って居なかったのでしょう、愚かねとクスクスと笑う姫様。それを、じっと見つめていると興が削がれたのか真顔になってため息をついた。
「あの木偶の坊は私が望む物を作らないの。下らないガラクタばかりで。貴女を人質にしたら多少ましなものを作ったけどやっぱり使えないのよね。」
だからと言ったところでおかしそうに口に笑みを張り付ける
「殺しちゃった。」
あの人はもうこの世に居ない?
ウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソ
「う…そ…。」
「うふふ、今の貴女の顔はとても素敵だわ。」
この姫様はどこまで私達を踏みにじるの。
ユルサナイ コロシテヤる ジゴクニミチズレにシテヤル
目の前が真っ赤になる。
今にも飛びかかりたかったが、押さえつけるは体格の良い男。びくともしない。
最低限の食事しか貰えず日々のストレスの捌け口にされた私では太刀打ちできない。
頬に暖かい何かがしたっていた。
私にとってはそれは血の涙。
「ふふ。不細工な顔ね。」
絶対に後悔させてやる。
「安心して。もうすぐ貴女もあの木偶の坊の所に行くのだから。」
そうね。貴女もすぐ追いかけてきてね。姫様。
怒りが最高までくるとかえって冷静になるのね。
怒り、憤りが今も感じでいるけど、脳では冷静にかの姫様へのちっぽけな復讐劇を考え出していた。
私の髪飾りがすべてを記録しているとは知らない姫様が今も色々と語ってくれて助かったわ。
あとはこの髪飾りを獣人の国に渡さなくては。
どうせ危害を加えるためにある程度は近くに行くことなるだろうけど、この姫様の思い通りになるのはいただけない。
どうにかしなくては。
『この手でアイツを…イェシル・レオ・ウインターを刺しなさい。』
そうか。
姫様の言うこの手は私の利き手だけを刺している。
なら、この命令中ならもう片手で止められるはず。いえ、止める。
そして、伝えて姫様に罰を…。
走馬灯で思い出すのがあの女の事なんて最悪。
なんて思っていたら、熱のように疼く利き手の痛みで目が覚めた。目が覚めたなんて表現から分かると思うけど、どうやら生きていたらしい。
ハッとして首に手を当てると首輪がなくなっている。
あたりを見回せば、白いヴェールに囲まれた寝台に私は寝かされているようだ。
身体を起こそうと体勢を変えると出入口らしき所に立っていた淡い蜂蜜色の少年と目があった。
少年の耳は髪の毛からピョコンと生えていて、艶やかで大きめなけも耳だ。
少年は、ヘーゼル色の目を見開き、驚いた様子の後でにっこりと笑って近づいてきた。
「目覚めたっすね。良かった。」
「あ……。」
「今、旦那様連れて来ますんで待ってて下さいっす。」
少年は私の声が掠れているのに気がついて水の入ったコップを押し付けてきて、キシシと笑いながらなんとも聞き逃せない様な用語を発しながら部屋を出て行った。
旦那様ってなんの事?
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