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魔法
しおりを挟む金と聞いてリドリーさんが悲鳴のような声をあげた。
確か金は東の国の特産品で、世界に出回るまでに税金などで高騰する。
でも、一律の料金でないと混乱が起きるからちゃんと規約がある。
なので、たまに金山が発見されると大騒ぎ。高値なものは高値なのだ。
もしも、抽出できれば国益として利用できるかも知れない。
「でも、どの質量でどのくらい出るかは分からないし、毒だし。」
加熱したり、その物質の化学式が狂うだけで毒ガスが発生する。金を抽出することで化学式が変わり毒ガスが排出するかも知れないのだ。その毒ガスは僅かでも致死量だと聞いた気がする。
「それは、ちょっと不味いわね。」
「取り敢えず、金のことは言わないで兄貴に言っておく。もう、体調不良の奴がいたら調べないと。」
「それが良いわ。」
数日見ていて分かったが、こういう時、イェシルの対応は迅速だ。
普段はこちらがどうにかしないといけない程に気力の無さそうな人なのに、懐にいれた人が何かあるとめんどそうでは有るが守る様な人なのかなと観察していれば分かる。
陰口を叩く人はそれを知らないなんて勿体ない。
「魔法と言えば、お前はどうなんだ?」
「私ですか?」
「ああ。」
「使った事も、何の属性があるかも分からないです。」
調べる儀式の前に人質として扱われてたから、結局知らないのよね。
嫌がらせかやらされていた掃除とかも、周りの魔法を使う侍女とは違って自力でやれって言われてたし。監視がいたから下手に優しくしてくれた人にはこんな状況は言えなかったからな。
「イェシル、確か鑑定できたはずよね。」
「プロには劣るがな。」
「やってあげたら?信頼はもうされてるだろうし。」
やって頂けるならやって欲しい。
リドリーさんの話では人を鑑定するには契約して鑑定するのと信頼して鑑定するのがあるらしい。
契約して鑑定する方法はよく一定の年齢で行う調べる儀式の時に用いられ、契約書が必要で契約書の一ページにステータスが浮かび上がる。信頼して鑑定するのは、契約書は要らずお互いの頭の中にステータスが浮かび上がるらしい。
「初めてだし、何かしらアドバイスもできるでしょ。」
「はい。イェシル殿下なら何をされても平気です。アドバイスを貰えるなら嬉しいです。」
何なら、この事変が終わったら何かの生け贄にでもなります。
そう言えば、頭を抱え込むイェシル殿下と可愛そうな者を見るようなリドリーさん。
この話は後で詳しくしようと肩を捕まれて熱弁された後、イェシル殿下と両手を握り、鑑定をして貰うことになった。
ゆっくりと呼吸を大きく深くする。
イェシル殿下の熱がこちらに浸透してくるかのように身体がポカポカとしてくる。
「『鑑定』」
ヒィスナ・クロエラ(18)
転生者
魔力100/100
HP 50/100
魔法:属性 火 水 風 無
生活魔法LEVEL1 解体LEVEL1 分析LEVELMax
頭に浮かんできたのは、以上の事だった。
攻撃手段の魔法が無いのは、その様な生活をしてこなかったからだと後から聞いた。
本当かどうかは分からないが、イェシル殿下の今の鑑定レベルだとこれぐらいが限度だという。
でも、この世界で初めて魔法らしい魔法に触れた気がして嬉しい。
「これで、目標が決まったわね。この2ヶ月で美貌を磨きつつ、魔法も磨くわよ。勿論マナーもね。」
私が協力するわ。
と、自信満々なリドリーさん。
その言葉に、部屋の主以上にくつろいでいたフィシゴが待ってましたとばかりに、何かのリストを持ってくる。
「どうせなら、精霊族のあいつらにも協力させろ。」
「了解っす。」
「なら、私はあの根暗にでも協力して貰おうかしら。」
「あの男ならもう手土産持参で城にいるぞ。」
「あら、じゃあ、東の国と海の国のあの子にも手紙を送りましょ。」
あの、当事者である私が追い付いてないのですが。
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