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2 特別な時間
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「あのマンションの101が俺んち」
話しているうちに俺の住むマンションが見えてきた。そろそろ有馬とお別れだ。
「そうだ、有馬。これ」
俺は買い物袋からチョコエッグを取り出して、有馬の手のひらの上に載せる。
「お前にやるよ。買い物付き合ってくれたお礼」
「なんでチョコエッグ……」
「有馬が熱心に見てたから。このキャラクター好きなんだなってわかっちゃって。でも子どもっぽいから恥ずかしくて買えなかったんだろ?」
俺の観察眼は完璧だ。有馬と結月がお菓子売り場にいたときに、有馬がチョコエッグを手に取っていたのを密かに見てたんだ。有馬はきっとこのゲームのキャラクターが好きに違いない。
「え……?」
有馬が怪訝な顔になる。
「あれ? 違った……?」
やっば、すごい恥ずかしい。サプライズプレゼントするはずが、外したの、か……?
「くっ……あははっ」
有馬が声を出して笑った。
「全然好きじゃない」
「マジっ? うわ、ごめん。しくった」
「油断したこの間抜けな顔が、七沢に似てるなって思ってただけ」
「はぁっ? それひどくねぇ?」
聞き捨てならない俺が突っかかると、有馬はそれをひらりとかわした。
「要らないなら返せ」
俺がチョコエッグに手を伸ばすと有馬はそれも華麗にかわす。
「要らないなんて言ってない」
「いいよ、無理しなくて! さっき全然好きじゃないって言ってたっ」
俺が取り返そうとするのに、有馬はチョコエッグを持った腕を高く上げて取らせてくれない。
「好きじゃなかったけど、好きになった」
「おい、有馬っ」
俺と有馬の身長差は十センチ以上ある。そのせいで、俺が手を伸ばしても届かない。
「返せっ……」
わからずやの有馬を睨みつけてやろうと思ったとき、有馬と目が合った。
すごい至近距離で。
有馬と今にもくっつきそうなくらい、胸がドキドキする距離で。
「……っ!」
俺はそんな距離感に耐え切れずに有馬から離れる。
気まずい。
こんなときどうしたらいいのかわからない。有馬の顔をまともに見られない。
「……あのさ、七沢」
沈黙を破ったのは有馬だ。
「俺さ、駅の改札で別れたあと、お前の後をつけたんだ」
「はぁっ?」
有馬のありえない暴露に俺は驚愕する。
後をつけるとかそんなストーカーみたいなことを有馬がするのかっ? しかも俺にっ?
「七沢のこと、気になって」
「なんで……」
「あんな急いで誰に会いに行くんだろうって思って。俺のこと気になってるっていうのは嘘だったんじゃないかって思って……。で、相手が結月ちゃんてわかって、安心した」
そう言われて俺はハッとする。
有馬は俺の告白の真偽を確かめようとしたんだ。俺が何よりも優先して会いに行く相手は、俺の恋人かなんかじゃないかと思ったのか。
その相手はもちろん妹の結月だったけど。
「電車でさ、七沢が俺に抱きついてきたとき――」
「はぁっ? そんなことしてねぇよ!」
誰が抱きつくか! 抱きつくって腕を回してぎゅってするやつ! 俺はちょっと寄りかかっただけ!
「嫌じゃ、なかった」
……はい?
「その、可愛いと思った」
有馬は視線をそらし、照れた様子をみせる。
どういうことだ……?
だれが可愛いって……。
「七沢」
有馬は俺に真剣な眼差しで迫ってくる。まるで愛おしいものを見つめるような甘い視線で。
「俺も、お前のこと好きになったかもしれない」
透き通るような有馬の声。目を逸らせない有馬の魅惑的な瞳。
誰が、誰が、なんだって……?
俺は、有馬が言っていることに理解が及ばない。
有馬が、あの有馬が、俺のことを好き……?
どういう意味で? 友達じゃなくて、まさか恋愛の意味で……?
俺は、有馬に告白なんてしたつもりはない。あの手紙が原因の勘違い告白は、時間とともになかったことになると思っていたのに。
「にいにー! 早くおうち入ろ!」
結月に腕を引っ張られ、俺は我に返る。有馬が運んできてくれた買い物袋を「ありがとっ」と奪い取り、有馬と離れる。
「じゃ、じゃあ、また。学校で」
俺は有馬とろくに目も合わせることもできずに、逃げるようにマンションのエントランスへ向かう。その間も顔が熱くて仕方がない。
なんだこれ。
なんだこれ。
俺、これからどんな顔して有馬と話したらいいんだよ!
話しているうちに俺の住むマンションが見えてきた。そろそろ有馬とお別れだ。
「そうだ、有馬。これ」
俺は買い物袋からチョコエッグを取り出して、有馬の手のひらの上に載せる。
「お前にやるよ。買い物付き合ってくれたお礼」
「なんでチョコエッグ……」
「有馬が熱心に見てたから。このキャラクター好きなんだなってわかっちゃって。でも子どもっぽいから恥ずかしくて買えなかったんだろ?」
俺の観察眼は完璧だ。有馬と結月がお菓子売り場にいたときに、有馬がチョコエッグを手に取っていたのを密かに見てたんだ。有馬はきっとこのゲームのキャラクターが好きに違いない。
「え……?」
有馬が怪訝な顔になる。
「あれ? 違った……?」
やっば、すごい恥ずかしい。サプライズプレゼントするはずが、外したの、か……?
「くっ……あははっ」
有馬が声を出して笑った。
「全然好きじゃない」
「マジっ? うわ、ごめん。しくった」
「油断したこの間抜けな顔が、七沢に似てるなって思ってただけ」
「はぁっ? それひどくねぇ?」
聞き捨てならない俺が突っかかると、有馬はそれをひらりとかわした。
「要らないなら返せ」
俺がチョコエッグに手を伸ばすと有馬はそれも華麗にかわす。
「要らないなんて言ってない」
「いいよ、無理しなくて! さっき全然好きじゃないって言ってたっ」
俺が取り返そうとするのに、有馬はチョコエッグを持った腕を高く上げて取らせてくれない。
「好きじゃなかったけど、好きになった」
「おい、有馬っ」
俺と有馬の身長差は十センチ以上ある。そのせいで、俺が手を伸ばしても届かない。
「返せっ……」
わからずやの有馬を睨みつけてやろうと思ったとき、有馬と目が合った。
すごい至近距離で。
有馬と今にもくっつきそうなくらい、胸がドキドキする距離で。
「……っ!」
俺はそんな距離感に耐え切れずに有馬から離れる。
気まずい。
こんなときどうしたらいいのかわからない。有馬の顔をまともに見られない。
「……あのさ、七沢」
沈黙を破ったのは有馬だ。
「俺さ、駅の改札で別れたあと、お前の後をつけたんだ」
「はぁっ?」
有馬のありえない暴露に俺は驚愕する。
後をつけるとかそんなストーカーみたいなことを有馬がするのかっ? しかも俺にっ?
「七沢のこと、気になって」
「なんで……」
「あんな急いで誰に会いに行くんだろうって思って。俺のこと気になってるっていうのは嘘だったんじゃないかって思って……。で、相手が結月ちゃんてわかって、安心した」
そう言われて俺はハッとする。
有馬は俺の告白の真偽を確かめようとしたんだ。俺が何よりも優先して会いに行く相手は、俺の恋人かなんかじゃないかと思ったのか。
その相手はもちろん妹の結月だったけど。
「電車でさ、七沢が俺に抱きついてきたとき――」
「はぁっ? そんなことしてねぇよ!」
誰が抱きつくか! 抱きつくって腕を回してぎゅってするやつ! 俺はちょっと寄りかかっただけ!
「嫌じゃ、なかった」
……はい?
「その、可愛いと思った」
有馬は視線をそらし、照れた様子をみせる。
どういうことだ……?
だれが可愛いって……。
「七沢」
有馬は俺に真剣な眼差しで迫ってくる。まるで愛おしいものを見つめるような甘い視線で。
「俺も、お前のこと好きになったかもしれない」
透き通るような有馬の声。目を逸らせない有馬の魅惑的な瞳。
誰が、誰が、なんだって……?
俺は、有馬が言っていることに理解が及ばない。
有馬が、あの有馬が、俺のことを好き……?
どういう意味で? 友達じゃなくて、まさか恋愛の意味で……?
俺は、有馬に告白なんてしたつもりはない。あの手紙が原因の勘違い告白は、時間とともになかったことになると思っていたのに。
「にいにー! 早くおうち入ろ!」
結月に腕を引っ張られ、俺は我に返る。有馬が運んできてくれた買い物袋を「ありがとっ」と奪い取り、有馬と離れる。
「じゃ、じゃあ、また。学校で」
俺は有馬とろくに目も合わせることもできずに、逃げるようにマンションのエントランスへ向かう。その間も顔が熱くて仕方がない。
なんだこれ。
なんだこれ。
俺、これからどんな顔して有馬と話したらいいんだよ!
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