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頭痛の種…理事長
しおりを挟むあいつが承諾してくれて、助かった。
だが、早く代わりの先生を見つけなければ……。
あの事がばれる可能性があるからな。
今日から、あいつが来る。
人気のある先生にはなるだろうが……。
トラブルだけは、避けたいところだ。
頭の痛い問題だ。
コンコン。
ドアがノックされる。
「入れ。」
私は、ドアの向こうに居るであろう甥に声を掛けた。
ガチャッと戸が開き、思った通りの人物が入ってきた。
「遥。悪かったな、急に頼んで。」
私は、そう声をかけながら、ソファーに座るように促した。
「本当ですよ。つい先日、帰ってきたばかりなのに……。」
口を尖らせて言う甥っ子。
そんな事しても可愛くない。
「そう言えば、雅斗くんが、そんな事言ってたな。」
私は、あの時の事を思い出し口にした。
すると、遥が怪訝そうな顔をした。
ヤバイ話しを逸らせねば。
「遥。急な願いだったから、お前の願いを聞いてやる。」
その言葉に遥が少し考え込んだ。
話を逸らす事できたか。
まぁ、奴の願いは、亜耶ちゃんのクラスの副担任にとか言うに決まってる。
「だったら、亜耶の卒業証書を鞠山じゃなくて高橋で。それから、亜耶のクラスの副担任にしてくれ。」
確かに願いを聞くと言ったが、亜耶ちゃんの苗字を鞠山から高橋への変更だと。
どういう事だ?
そんなの、親からも連絡一切もらってないぞ。
もう一つの方は、予想通りだったが……。
「ちょっと待て。なんで鞠山じゃなく高橋なんだ?」
思わず疑問に思った事を口にした。
「えっと、亜耶は、俺の嫁になったから?」
遥が嬉しそうに言うが、こんなに惚気るコイツが、気持ち悪い。
顔面崩壊で言うんだぞ。気持ち悪いしか言えん。
って言うか、今聞き捨てなら無いこと言ってなかったか。
「はっ? 経緯を教えてくれ」
私は、目の前に居る甥っ子に説明を求めた。
話を聞き終えると、溜め息が漏れた。
「はぁ、わかった。そう言う事情なら仕方ない。亜耶ちゃんの生徒登録用紙には、お前の住所を記入しておく。担任には、伝えておくな。」
「あっ、その住所も変更だから、これが今の住所。」
甥っ子は、そう言って住所の書いた紙を渡してくる。
はぁ、ちょっと待て。
引っ越しまでしたのかよ。
って言うか、姉さんから何も聞いてないよ俺。
「よろしく、伯父さん。」
そう言って悪びれる事無く部屋を出て行っく甥っ子。
また、頭の痛い問題を……。
先生方の反感を買いそうだな。
これは……先手を打って教育委員会に相談しておいた方が良さそうだ。
私は、取り敢えず職員室に行き先生方に奴の紹介しないとな……。
職員会議の時に奴の紹介をした。
一部の女性教師の目の色が変わった。
特に奈津先生。
こいつにとっては、ただの女なんだろうなぁ。
私は、横に並ぶ甥っ子に視線をやる。
張り付けた笑顔でいやがるし。
まぁ、結婚指輪してるし、大丈夫だと思うが……。
亜耶ちゃんには、辛いだろうなぁ……。
全校集会で、奴を全校生徒に紹介する。
奴が、前に出て挨拶する前に全校生徒を見渡していた。
亜耶ちゃんを見つけたのか、顔が緩みだした。
はぁー、本当、この甥っ子は……。
「こら、遥。ちゃんと挨拶をしろ。」
私は、そんな甥っ子の耳元に言う。
教育委員会にお伺いを立てたら、学校内で問題がなければ良いと言う。
って事で、亜耶ちゃんを呼び出して、遥達の事を先に知らせておけば良いだろう。
そう思い、廊下を職員室に向かって歩いていれば、遥が亜耶ちゃんを抱き締めている。そして、遥が見ている先には、奈津先生。
やはり、問題勃発。
二人が、言い争ってる。
「そんな事許される筈……。」
「あるんだよ。」
私は、奈津先生の言葉を遮る様に言う。
「伯父さん。」
「理事長!」
三人が、私に目を向けてくる。
奴の腕に大人しく納まっている亜耶ちゃんに。
「亜耶ちゃん、結婚おめでとう。遥の事宜しく頼むよ。」
そう奈津先生にも聞こえるように。
私が祝福している事を伝えるように……。
甥っ子にとったらこの結婚は願ったり叶ったりなんだろうが……。
私たちのやり取りを見た彼女の顔が歪む。「あ、ありがとうございます。」
亜耶ちゃんが照れてるの始めて見るかも。
まぁ、それは置いておくとして。
「次の授業、全校自習としておいたから、奈津先生も一度職員室に戻って頂きたい。」
私は、決定事項を告げた。
「遥も亜耶ちゃんも行くよ。」
私は、二人を伴って職員室に向かった。
職員室に入れば、ピリピリした空気。
全職員が己の席についてる。
はぁー、やりにくいなぁ……。
「全員揃ったところで、会議を始めたい。……っても、ここにいる私の甥っ子の高橋遥と生徒の鞠山亜耶についてだが、ご存知の先生方も多いと思うが、二人は先日結婚したんだが、この二人が居ることで、何か不都合のある奴は居るか?」
私が言い終わると新人の先生方や途中からの先生方の顔が曇る。
古株の先生方は、遥が高校生の時から知ってるからか、やっとかって顔をしてる。
やはり、二手に別れるか……。
「遥くんが、きちんと公私を分けてくれれば、構わないよ。」
古株の先生が言う。
その辺は、大丈夫だと思うが……。
「都合が悪いと言う先生は?」
私の言葉に数人の先生が手を挙げる。
「そんなの教育委員会が黙ってないでしょうが!」
若い先生からの指摘に新人数人が頷く。
「それなぁ。なんとかなるんだよ。遥は、元々会社勤めだった。鞠山さんも普通の女子高生。その時点で籍を入れて婚姻関係になった後、私が無理矢理教師を頼んだんだ。人手が足りないってことで、期間付きでね。次の先生が見つかり次第、遥は元の職場に戻るってことになってるんだ。それを教育委員会にお伺いを立てたら、問題が起こらなければ良いと了承をとった。これでも何か問題があるか?」
そう言って、先生方を見る。
異義無さそうだ。
先手を打っておいて正解だったな。
「無いようだな。亜耶ちゃん、悪かったね。教室戻って良いよ。」
「あっ、はい」
私の言葉に亜耶ちゃんは、素直に頷く。
うちの真由も亜耶ちゃんぐらい素直になって欲しいよ。
私は、亜耶ちゃんの背中を見ながら思った。
「お疲れ様。」
そう言ったのは、妻の優子。
「ああ」
「私、亜耶ちゃんにおめでとう言い忘れた。」
優子が真顔で言う。
「何時でも言えるだろ。私は、仕事に戻る」
それだけ言って、職員室を出た。
取り敢えず、先生方を押さえ込むことができた。
問題が起きるとしたら、生徒間での事。
まぁ、一部の生徒は二人の事情を知ってるだろうが、残りの生徒をどうするかだ。
まだまだ、頭の痛い日々が続きそうだ。
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