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中学生と婚約解消
亜耶の体質…遥
しおりを挟むあぁ~。
毎年の事だがこの時期、一番忙しいんだよね。
連日の残業に休日出勤、プラス接待。
亜耶不足が否めない。
最近会ったのって、二週間前だ。
あれ以来会ってない。
ヤバイな、亜耶に会ったら腕に閉じ込めて暫く放してやれないだろうな。
そう思っていたからだろうか、目の前に会いたくて仕方ない人が此方に歩いてくる。
えっ、幻じゃないだろうなぁ。
俺は、自分の目を擦り改めて見ればそこに存在していて、友達と楽しそうに笑いながら俺の側を通る。
まだ、俺の存在には気付いていなさそうだ。
「亜耶! 何してるんだ!」
と俺は声をかけてた。
今は、午後六時三十分。
空は暗くなってるし、早く家に帰って欲しいと思う。
だって、亜耶に何かあったら俺自分が保てなく自信ある。
亜耶が、俺の方に向き驚いた顔をする。
「こんな時間に何してるんだ?」
改めて聞けば。
「何って、これからパーティーを皆でしようと……。」
返ってきた言葉に俺は、動揺した。
パーティーだと……。
そんな事、雅斗から聞いてない。
俺は、動揺を隠せずに居ると。
「大丈夫、終わったら直ぐ帰るから……。」
亜耶はそれだけしまった。
ちょっと待て。
それは、何時に終わるんだ?
は~。
これから、俺は接待なのに亜耶が気がかりなりそうだ。
だけど、何で前持って言ってくれないんだ。
同世代の友達との関係も大切なことだと充分に知ってるから、 前持って言ってくれれば認めるし、連絡さえくれれば迎えにだって行くんだよ。
何も知らないのは、悔しいんだよ。
亜耶は、俺がフィアンセで恥ずかしいのか?
俺は、亜耶だけなんだよ。早く気付けよ。
立ち去った亜耶の背中を見てることしか出来ない自分が、もどかしい。
「高橋。どうした? 早く来いよ。時間に間に合わなくなる。」
同僚に言われ。
「あぁ、直ぐに行く。」
俺は、亜耶の事を頭の片隅に置き接待場所に向かった。
こじんまりとした小料理屋。
今日はここで上得意の顧客上司の接待だ。そこには、上司の令嬢まで参加していた。
やっかい事はごめんなんだが……。
「高橋さん。結婚未だですよね。私なんかどうですか?」
って、自己アピールしてくる。
綺麗なんだがな、惹かれないんだよなぁ。
「ごめんね。結婚はしてないですが、婚約者は居るんですよ。」
嘘はついてない。発表も控えられてるし、秘密の婚約者は者は、未だ中学生だしな
結婚なんて、何時になることやら……。
けど、俺は待つと決めてるからな。彼女しか要らないから。
「嘘。高橋さんって、浮いた話し一つもないですよね。」
そんなの当たり前じゃんか。
亜耶を悲しませたくないんだからな。
「ねぇ……。」
尚も言い寄ってくる彼女を無視して、腕時計を見る。
午後九時三十分か……。
って、ヤバイじゃねぇか。
アイツら(特に悠磨ってやつ)に亜耶の寝顔見せたくねぇ。
「ちょっと、失礼します。」
俺は、同僚の田中と自分の荷物を手にして、席を離れた。
「何だよ。」
田中が嫌そうな顔をして、俺を見てくる。
「悪い、田中。俺用があるから抜ける。後は頼む。」
俺はそれだけ言って、通路を歩き出した。
「ちょ、高橋……。」
田中が慌てて名前を呼ぶが、敢えて無視をした。
今は、亜耶だ。
亜耶の事が心配なんだよ。
確か、友達の家とか言ってたな。
亜耶が帰ってきてるなら、いいんだが……。
俺の不安をよそに雅斗に電話を掛ける。
『おっ、久し振りだな遥。』
って、雅斗の陽気な声。
「あのさぁ、亜耶帰ってきてる?」
挨拶もそこそこにそう聞けば。
『未だだけど……。もうそんな時間か。って、何で居ないって知ってるんだよ?』
雅斗は慌てることなく口にする。何で、慌てないんだよ。
「雅斗。今日、亜耶と道で会ってパーティーするって言ってた。何処でしてるかわかるか?」
焦りながら俺がそう言えば。
『あぁ、亜耶が自分で言ったんだ。ちょっと待てろ。』
って、お前知ってて言わなかったのかよ。
俺にも知らせろよ!
内心で悪態つく。
バタン、ドタドタと階段を駆け降りる音まで聞こえてきた。
っていうか、家に居たんだな。
折角のクリスマスなのに沢口とのデートはいいのかよ。
人の心配してる余裕が、自分にあるのには驚いたが。
『母さん。今日、亜耶何処でパーティーするって言ってた?』
電話口の向こうから漏れ聞こえてくる声。
『えっ、もうそんな時間なの? 確か、三丁目の相馬くんの家……。その電話、遥くん?』
おばさんの焦ったような声まで筒抜けになってる。
『そうだよ。遥が亜耶の心配して、電話してきたんだ。』
あっ、もう説明は後にしてくれ、急がないと亜耶が……。
「雅斗。」
俺が呼び掛ければ。
『悪い。聞こえてたと思うが、三丁目の相馬家でやってるようだ。迎え宜しく。』
それだけ言って、切りやがった。
ったく。
実の妹なのに心配じゃないのかよ。
って、こうしては居られねぇ、急がねぇと……。
俺は、走り出した。
相馬……相馬……。
三丁目に着き、一軒一軒表札を確認していく。
あ、あったここか。
そこは、ごく普通の一軒屋だった。
俺は躊躇うこと無く呼び鈴を押す。
『はい。』
直ぐに家主の応答があり。
「高橋だが、亜耶を迎えに来た。」
そう言えば。
『少しお待ちください。』
暫く待って、玄関ドアが開いた。
「えっと、どうぞ上がってください。」
現れたのは、青年だった。
「邪魔するな。」
俺はそう断りを入れて、上がらせてもらった。
廊下を突き進んだ場所が騒がしいから、そこでやってるんだろうと察しはついた。
ドアを開ければ、此方に注目する面々。
やはりアイツも居たんだな。
亜耶を見れば、瞼が引っ付きそうになってる。
ヤバイ、直ぐに連れ出さないと……。
「亜耶。ほら、迎えに来たぞ、準備して。」
俺が声を掛ければ、眠そうな顔をして。
「遥……さん。何で……居るの? ……ん、帰る……。ありが、とう。」
トロンとした目で、亜耶が準備し出す。
亜耶の周りを見渡し。
コートを着せて、荷物を手に持つ。
「亜耶。荷物は、これだけか?」
そう聞けば、コクリと頷く亜耶。
「じゃあ、帰るぞ。皆に挨拶して。」
俺の言葉に。
「ごめんね、先に帰るね。お休み。」
亜耶が、俺の腕にすがりながら(本人は無自覚だろうが)挨拶の言葉を口にする。
そんな亜耶の背に手を回して、歩くように促し。
「邪魔して悪かったな。」
その場の全員に声を掛けて、玄関に向かう。
亜耶が、靴を履くのを待って玄関を出た。
「亜耶、もう限界だろ? 背負ってやるから……。」
俺はそう言って、亜耶の前にしゃがみこんだ。
「遥……さん。ごめんね。……あり……がとう。」
亜耶が俺の首に腕を回してきた。
背中に重みが増す。
ゆっくりと立ち上がって、歩き出す。
「遥さん……。」
突然耳元で亜耶が喋り出す。
ゾクリと背中が震える。
「ん?」
思わず聞き返せば。
「メリークリスマス。」
呟くように言う亜耶。
「メリークリスマス。」
俺も、そう言葉を返し。
「お休み、亜耶。」
背中で寝息をたててる亜耶にそう告げた。
俺の大事な姫。
知らず内に俺は、頼りにされてるんだなと、思った。
だってそうだろ、安心して俺の背中で寝るのだからな。
ちょっと迎えに行くのが遅くなったが、その分背中の温もりが愛しいと感じる事ができた。
俺にとっての幸せの時間だった。
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