ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]

麻沙綺

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中学生と婚約解消

遅れる…遥

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 ヤバイ……。
 定時で終わる予定が、余計な事に時間をとられて間に合わなくなってしまった。
俺は、携帯を取り出して雅斗に連絡を入れる事にした。

 数コールで雅斗が出る。人混みの中なのか、雑音が聞こえてくる。
『どうした、遥?』
 怪訝そうな声で聞いてくる雅斗。
「悪い。仕事が立て込んで、少し遅れるから、先に行っててくれ」
 俺は、どう説明するか悩みながら、それだけを告げる。
『そんなに忙しいのか? だったら無理しなくても……。』
 雅斗の気遣いは嬉しいが、俺は亜耶に会いたいんだ。      だから。
「そうじゃないんだ。途中でお見合いさせられてな、今日の分が未だ終わらないんだよ。」
 正直に言うしかなくなったじゃんか。
『何だそれ。仕事中にお見合いって、聞いた事無いぞ。』
 訝しげな声で言う雅斗に。
「俺も、初めてだ。それで、亜耶には……。」
 俺が言いたいことがわかったのか。
『わかってる。』
 その言葉を聞いて、ホッとする。
「仕事が終わり次第、連絡する。」
『了解。』
「沢口に、余り亜耶で遊ぶなと言っておけ。」
 一番俺が気にする部分だが。
『無理。俺では止められない。』
 と返された。
 アイツ、沢口には弱いからなぁ。
 まぁ、仕方がないか……。 
「なるべく、早く行くから。」
『わかった。』
 電話を切ると、仕事に集中した。
 早く行かないと、亜耶が沢口の玩具にされかねない。
 何時もの倍の早さで仕事を片付け、鞄とマフラー、コートを手に部署を出た。


 待ち合わせ場所の駅の改札口を抜けると、雅斗に連絡を入れた。
 数コールで出る雅斗に。
「雅斗、今何処?」
 そう訪ねれば。
『あぁ。今、店の中だ。今外に出るから待ってろ。』
 俺は、店の周りをキョロキョロと見渡すが、それらしき人物が見つからない。
「遥ー!」
 雅斗の声が聞こえ、そちらを見れば、周りより頭一つ分高い雅斗の顔が見えた。
 俺は、すかさず足をそちらに向けた。
「雅斗、よかった~。」
 ホッとしたのも束の間。
「よくないかもな。」
 と雅斗が苦笑する。
 俺は、訳がわからずに小首を傾げる。
「取り敢えず店の中に……。」
 雅斗に促されて、中に入る。
 目的の人物を見つけ。
「ごめん、遅くなっ……。」
 そこまで言って、言葉を失った。
 今、目の前に居る亜耶に目が釘付けになる。
 今までとは違う雰囲気の亜耶に、どうしたらいいのかわからないのだ。
 なんと言うか大人女子みたいで、まだ中学生の筈なのに……。何のマジックだ?
「高橋先輩。どうしたんですか?」
 俺の横に来て、からかうように沢口が声を掛けてきた。
「えぇ、あぁ。亜耶が何時もと違ったから、つい見とれて。」
 沢口の言葉に馬鹿正直に答えちまったよ。
 そんな俺の横で、目を三日月みたく細目にしニマニマしてこっちを見てくる沢口。
 その顔、微妙に怖いぞ。
 っていうか、自分の発言が恥ずかしく、口に手をやりそっぽを向く。
 年甲斐もなく、顔が火照りだすし……。
 亜耶まで、顔を赤くしてるし……。
 こんな可愛いなんて……。
「亜耶。荷物持つよ。」
 雅斗がスマートに亜耶の手から荷物を奪う。
「ありがとう。」
 亜耶が、笑顔で言ってる。
 出遅れた。
「ほら、次に行くんだろ。」
 雅斗が言えば、沢口が。
「うん。亜耶ちゃん行こう」
 って、亜耶の腕を引っ張っていく。
 亜耶が、何か言いたそうにこっちを向くが、沢口に抗えずにいる。
「ほら、早く追わないと、見失うぞ。」
 雅斗が急かす。
 それは、大変な事になる。
 俺は、慌てて二人の後を追う羽目に為った。










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