28 / 145
中学生と婚約解消
食事にて1…遥
しおりを挟む二人について来た場所は、ホテル内の在るレストランだった。
しかも、個室だ。
夜景が一望できて、周りを気にすることなく食事が出来る。
こういう場所での食事は、亜耶は馴れてないだろうとの配慮であるのがわかる。
亜耶を見れば、目を輝かせて外の夜景に食い付いている。
あ~、もう、そんなキラキラした瞳で見てる亜耶が可愛すぎる。
「亜耶、そんなに食い入るように見てるが、楽しいか?」
ちょっと意地悪が過ぎるかと思いながらも、声を掛けずにはいられなかった。
「そりゃあ、遥さんは見慣れてるでしょうよ」
って、偏見を持った眼で睨み付けてくる。
しかも、頬を膨らませ口許を尖らせている。
いや~もう、抱き締めたいんだけど……。
「あはは……。先輩が振り回されてる」
ふと見れば、沢口が、目尻に涙を浮かべて笑い転げてる。コイツ、こんな笑い方するんだ何て思いながら、笑われてる事に腹が立つ。
「いいだろう、別に。亜耶だけが特別なんだ」
惚れた弱味だ、仕方ないだろう。
「取り敢えず、席に着こうか」
雅斗が落ち着いた声で言うが、目は呆れた様に見ている。普段の俺を知ってるからこその目だな。
「は~い」
亜耶が、間延びする返事をして窓から離れて俺の隣に座る。
「窓を背にしてるがいいのか、亜耶」
あんだけ見入ってたんだ、食べながら見ていたいと思ってそう声を掛けたのだが……。
「うん。食べ終わってからゆっくり見るから、大丈夫だよ」
って、呑気な声が返ってくる。
食べ終わってからねぇ……。それ、寝落ちするんじゃないか?
少々の不安があるものの、亜耶が楽しそうだから何も言わなかった。
「亜耶ちゃん。聞いても言い?」
突然沢口が口を開いた。
「何?」
亜耶が、不思議そうな顔をして沢口を見る。
「先輩のさっきの顔、亜耶ちゃんの前ではするの?」
さっきの顔って何だ?
俺、変な顔してたか?
「何時もではないけど、時々してますね。たまに拗ねた顔も見せますけど……」
どう答えて言いのか分からないって顔をしながら、沢口の質問に答える亜耶。
まぁ確かに亜耶の前では隠す事無く素で居るからな。
「それって、超珍しいことだよ。貴重だよ!!」
興奮する沢口。
言葉使い可笑しいって。
「そうなんですか?私は、普段から見てるので珍しいって思ったこと無いんですが……」
って、小首を傾げながら言う亜耶。
要らんこと言わなくても良いのに……。
亜耶の言葉に興味津々の沢口。
そこに。
「俺も見てるから、それほど珍しいとは思わないが……」
援護射撃の様に雅斗が言う。
そりゃあそうだ。二人には隠してないからな俺。
「二人にはそうかもしれないけど、私にとっては貴重なんです」
って、力説しやがるし……。
もう、俺の事はほっといてくれや。
「お待たせしました」
ボーイが料理を運んできて、話が中断になる。
良いタイミングだ。
「おいしそう」
亜耶の呟きが俺の耳に届く。
横を見れば、ニコニコしてるんだが、どうすれば良いのかわからずに戸惑ってるようだ。
あぁ、マナーが分からなくて戸惑ってるんだな。
「亜耶、フォークとナイフは外側から順に使うんだ。もし、ナイフ、フォーク落としたら、自分で拾うことはしてはならない。それが、マナーだ。後、上手く出来ないようなら言ってくれれば、俺がやってやるからな」
亜耶が、俺の方に視線を寄越し。
「ありがとう……」
って、顔を赤めて小声でお礼を言われた。
もう、いちいち可愛いなぁ。ギュウしたい。
その後も、悪戦苦闘しながら食べる亜耶をニコニコしながら見つめつつ、何時でも手が出せるように準備していた。
7
あなたにおすすめの小説
先生
藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。
町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。
ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。
だけど薫は恋愛初心者。
どうすればいいのかわからなくて……
※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
お嬢様は地味活中につき恋愛はご遠慮します
縁 遊
恋愛
幼い頃から可愛いあまりに知らない人に誘拐されるということを何回も経験してきた主人公。
大人になった今ではいかに地味に目立たず生活するかに命をかけているという変わり者。
だけど、そんな彼女を気にかける男性が出てきて…。
そんなマイペースお嬢様とそのお嬢様に振り回される男性達とのラブコメディーです。
☆最初の方は恋愛要素が少なめです。
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
お嬢様は新婚につき誘惑はご遠慮します
縁 遊
恋愛
初恋の人との恋を実らせて結婚したお嬢様の高宮 菫(たかみや すみれ)。
新婚の菫奥様には悩みがいっぱい。
旦那様には溺愛されてどう対応して良いかも分からないし、結婚してから地味な化粧を止めたらいろんな人から誘われる様になってしまって…こちらも対応に困ってしまう。
天然で憎めないお嬢様(新婚奥様)の何気ない日常のお話です。
溺愛いえ…激甘にする予定です。
苦手な方はご遠慮下さい。
作品は不定期更新になります。
これは『お嬢様は地味活中につき恋愛はご遠慮します』の続編です。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる